伯爵令息になった第8王子は、魔族の次期領主に溺愛される

Matcha45

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再会※※

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「ああっ‥‥‥」

「ごめんね。今度は、ちゃんとイかせてあげる」

「ファビエルくん、待って‥‥‥」

「待たないよ。一体、何年待ったと思ってるの?」

 ファビエルくんは僕の肩を掴むと、再びベッドへ押し倒していた。


*****


 3週間前。僕は父親である領主の許可を貰って、山奥にある秘境と呼ばれる場所で狩りを行っていた。

 魔族領に近い位置にある山々には、魔物が出ることもあるため、領主の許可を得て、魔術具である『護符』を持参している者しか、狩りに出掛けることは許されていなかった。

 護符は、一度だけ外敵から身を守ってくれる魔術具の御守りである。

 父親であるレイル伯爵は、剣術の才能があって腕は立つのだが、気の弱いところがあり‥‥‥。特に家族には甘かった。

 本来なら、領主の息子である僕は、山に入ることは禁止されている。

 けれど、僕が「狩りに行きたい」と言うと、「いいよ」と言って、護衛を50人付けようとしていた。普通じゃない‥‥‥。僕は護衛を1人に絞ると、軽装で山へ登った。

 けれど、それが不味かった。雨が降ってきたので2人で近くにある山小屋へ避難すると、焚き火を焚いて雨が止むのを待っていた。

 薄暗くなってくると、急に屋根が軋む音がして、屋根が吹き飛ばされていた。屋根の向こうから2メートルくらいの大きさの熊が、こちらの様子を伺っていた。

「逃げろ!!」

 僕が力の限り叫ぶと、一緒に来ていた護衛は、一目散に逃げていった。僕も走ろうとしたが、足をくじいてしまったのか、その場から動けずにいた。

「助けて‥‥‥」

 熊が、こちらへ向かって走ってくるのを見て、僕は首から下がっている護符を握りしめた。それと一緒に、幼い頃に友達から貰った御守りを握りしめて心の中で祈っていた。

『誰か助けて』

 僕の祈りが通じたのか、目を閉じて開けると、目の前には黒いマントにフードを被った青年が立っていた。

「ファイアウォール!!」

 目の前に現れた青年は、熊に向けて手を翳すと、指先から炎を放った。炎に包まれた熊は、のたうち回りながら森の中へ逃げ帰っていった。

「あの‥‥‥。ありがとうございます」

「いや、礼はいい。久しぶりだな、リューン」

 魔術を使ったことから、おそらくは魔族だろうと思って警戒していたが、その顔には見覚えがあった。

「あれ‥‥‥。もしかして、もしかしなくてもファビエルくん?」

 僕はファビエルくんを見て、遠い記憶‥‥‥。12年前、自分が7才だった頃の記憶を思い出していた。


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