騎士団長である侯爵令息は年下の公爵令息に辺境の地で溺愛される

Matcha45

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別棟

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 身に差し迫った危険なども特に無いということだったので、護衛や稽古は明日からとなり、私達は別棟にある寮へ下がった。

 屋敷の客室を普段遣いするよう勧められたが、それは流石に悪いと思い断った。

「ユリウス、すまない。客室の方が良かったか?」

 私が聞くとユリウスは首を横に振っていた。

「そんなことないッスよ‥‥‥。俺は団長と一緒に居られれば、どこでも構わないッス」

「‥‥‥ありがとう」

 私達は寮へ着くと、それぞれの部屋で休んだのだった。


*****


 湯浴みをして着替えると、部屋へ備え付けられていた寝間着に着替え、ベッドに入った。

 まだ冬の名残りがあるせいか、部屋の外から吹いてくる隙間風は冷たい。私が布団にくるまって眠ろうとした時、部屋の外からノック音が聞こえた。

「団長? 起きてますか?」

「あ、ああ‥‥‥」

 ユリウスは扉を開けて中へ入って来た。既に寝巻きに着替えており、風呂上がりなのか金色の髪は少し濡れていた。

「どうしたんだ?」

「サムいんすよ、団長‥‥‥。昼間、お願いを一つ聞いてくれるって、言ってたじゃないっすか‥‥‥。あれ、いま使ってもいいッスか?」

 私は嫌な予感がしつつも頷いた。

「俺と寝てくれませんか?」

「‥‥‥は?」

「さむいんスよ、俺の部屋。隙間風がすごくて‥‥‥」

「何だ、添い寝か‥‥‥。そんなんでいいのか? 私も寒かったんだ。ちょうどいいのかもしれない」

「ほんとっスか‥‥‥。なら、お願い事はまた今度にして、今日は一緒に寝てください」

「ああ」

 ユリウスは、素早く私のベッドの中へ滑り込むと、寝間着の上から私に抱きついた。

「あたたかいっスね‥‥‥」

「冷たいなユリウス‥‥‥」

 ユリウスの身体は冷えきっており、つま先はかなり冷えていた。私はユリウスを抱きしめ返すと眠りについた。

「おやすみ、ユリウス」

「おやすみなさい」

 小さな寝息をたてて、ふたりともいつの間にか眠りに落ちていたのだった。


*****


 翌朝。ハリス様に稽古をつけるために本館へと向かった。昨日の様子からして、護衛と言うよりもレッスンをしてくれる先生を探していたのではないか‥‥‥。何となく、そんな気がしていた。

 1人がダンスの相手をし、1人は護衛に回る‥‥‥。まずは鏡の前で、簡単なステップを教えていた。小休憩に入った時、メイドが持ってきた飲み物を飲んでいると、ハリス様に話し掛けられた。

「おふたりの関係を知らずに、別々のお部屋を用意してしまって申し訳ありません。新しいお部屋をご用意させていただきましたので、今日からは、そちらをご利用ください。」

「‥‥‥え?」

「‥‥‥恋人同士なんですよね?!」

「いえ、そんな事は‥‥‥。上司と部下です」

「私の前で遠慮は必要ありませんよ。大丈夫です。主人に許可は取ってありますから」

 嬉しそうに微笑むハリス様に、私は何も言えなくなっていた。

「さあ、稽古を続けましょう。お願いします」

「‥‥‥はい」


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