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辺境伯領
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辺境伯の屋敷へ着いて早々、辺境伯への挨拶を済ませると、私達は応接間へと案内された。
「辺境伯、普通の方だったな」
「ユリウスもそう思ったか? 腹芸が出来るような方には見えなかったのだが‥‥‥。本当に陛下と仲違いしているのだろうか?」
私達が話をしていると、ノック音がしてから中へ人が入って来た。
「失礼致します」
私達はソファーから立ち上がると、部屋の中に入って来たハリス元殿下に挨拶をした。
「お初にお目にかかります、ユリウス・ベネット殿、アレックス・マクレガー殿。私はハリス・サクフォンと申します。今日から、よろしくお願い致します」
「存じ上げております。ユリウス殿。こちらこそ、よろしくお願い致します」
「よろしくお願い致します」
私達は挨拶を交わすと、ソファーへ座らせてもらった。
「さっそくですが、お2人は仕事の内容を何と聞いてらっしゃいますか?」
私達は顔を見合わせると首を傾げた。
「‥‥‥ハリス様の護衛ですが?」
「実は護衛の他に、していただきたい仕事があるんです」
「「‥‥‥」」
「これから話すことは極秘事項になりますので、まず誰にも話さないという前提で話を進めさせていただきます」
ドアのすぐ側に控えていたメイドがテーブルまで来ると、皮用紙とペンを置いていった。
「義父に用意していただいた紙とペンです。こちらへ記入をお願い致します」
私達は顔を見合わせると頷いた。元王族の護衛で来たのだ。これくらいの事はあるだろう‥‥‥。そう予想はしていた。一体、何をさせられるのだろうか‥‥‥。そう思いながらも、『他言無用』と書かれた用紙に署名をした。ユリウスも署名をすると、紙は自然に丸まって空中へ浮かぶと小さくなって消滅した。
「用紙に魔術式が描かれていたのです。もし約束を破れば、私か夫のレオンハルトに連絡がいくことになるでしょう」
私は急な話に、冷や汗をかきながら尋ねた。
「あの、それで内密の話とは?」
「私に、稽古をつけてもらいたいんです」
「「‥‥‥は?」」
「それで、その稽古とは‥‥‥」
私は剣術の稽古だろうと思いながらも、一応聞くだけ聞いてみた。
「ダンスです‥‥‥。他には、貴族の一般教養なども教えていただけると助かります」
内容が内容なだけに、私達は驚いた。王族として育てられた元殿下に私達が教えられる事は何もないのでは? などと思ってしまう。
「恐れながら、ハリス様‥‥‥。私どもには、お教え出来ることは何もないと思うのですが‥‥‥」
「それが‥‥‥。あるんです」
「「?!」」
「私は公には公表されていない、ハリス殿下の双子の兄になります」
「なるほど‥‥‥。それで、顔のホクロが見当たらないんですね」
私の言葉に驚いたのか、ハリス様は目を瞠っていた。
「はい。実は‥‥‥。何も知らずに昨年まで私は商人として過ごしてきました。事情があって、辺境伯爵令息へ婿入することになりましたが、何も知らなさすぎて、顔つなぎのためのお茶会や社交パーティーにも出れないのです。このままでは、伯爵夫人としての仕事が出来ず‥‥‥。夫にも迷惑がかかってしまいます。レオンハルト様に相談したところ、あなた達を王都から呼び寄せてくれたのです」
確か一昨年の春、レオンハルト様の仕事関係の手伝いで、こちらの領地へ来ていたな‥‥‥。顔見知り程度の付き合いだったが、選ばれて来たのかもしれないと思った。
本当のハリス殿下が、今どうしているのか気になったが、聞ける雰囲気でもなかった。それに、正直に答えてもらえるとも限らない。
「ご事情は、だいたい分かりました。それでは私達2人、交替で稽古をつけさせていただきます。一般教養は教材がありませんから、今すぐにという訳にはいきませんが‥‥‥。それでも構いませんか?」
「はい。よろしくお願い致します」
彼は立ち上がると私達を交互に見つめ、頭を下げたのだった。
「辺境伯、普通の方だったな」
「ユリウスもそう思ったか? 腹芸が出来るような方には見えなかったのだが‥‥‥。本当に陛下と仲違いしているのだろうか?」
私達が話をしていると、ノック音がしてから中へ人が入って来た。
「失礼致します」
私達はソファーから立ち上がると、部屋の中に入って来たハリス元殿下に挨拶をした。
「お初にお目にかかります、ユリウス・ベネット殿、アレックス・マクレガー殿。私はハリス・サクフォンと申します。今日から、よろしくお願い致します」
「存じ上げております。ユリウス殿。こちらこそ、よろしくお願い致します」
「よろしくお願い致します」
私達は挨拶を交わすと、ソファーへ座らせてもらった。
「さっそくですが、お2人は仕事の内容を何と聞いてらっしゃいますか?」
私達は顔を見合わせると首を傾げた。
「‥‥‥ハリス様の護衛ですが?」
「実は護衛の他に、していただきたい仕事があるんです」
「「‥‥‥」」
「これから話すことは極秘事項になりますので、まず誰にも話さないという前提で話を進めさせていただきます」
ドアのすぐ側に控えていたメイドがテーブルまで来ると、皮用紙とペンを置いていった。
「義父に用意していただいた紙とペンです。こちらへ記入をお願い致します」
私達は顔を見合わせると頷いた。元王族の護衛で来たのだ。これくらいの事はあるだろう‥‥‥。そう予想はしていた。一体、何をさせられるのだろうか‥‥‥。そう思いながらも、『他言無用』と書かれた用紙に署名をした。ユリウスも署名をすると、紙は自然に丸まって空中へ浮かぶと小さくなって消滅した。
「用紙に魔術式が描かれていたのです。もし約束を破れば、私か夫のレオンハルトに連絡がいくことになるでしょう」
私は急な話に、冷や汗をかきながら尋ねた。
「あの、それで内密の話とは?」
「私に、稽古をつけてもらいたいんです」
「「‥‥‥は?」」
「それで、その稽古とは‥‥‥」
私は剣術の稽古だろうと思いながらも、一応聞くだけ聞いてみた。
「ダンスです‥‥‥。他には、貴族の一般教養なども教えていただけると助かります」
内容が内容なだけに、私達は驚いた。王族として育てられた元殿下に私達が教えられる事は何もないのでは? などと思ってしまう。
「恐れながら、ハリス様‥‥‥。私どもには、お教え出来ることは何もないと思うのですが‥‥‥」
「それが‥‥‥。あるんです」
「「?!」」
「私は公には公表されていない、ハリス殿下の双子の兄になります」
「なるほど‥‥‥。それで、顔のホクロが見当たらないんですね」
私の言葉に驚いたのか、ハリス様は目を瞠っていた。
「はい。実は‥‥‥。何も知らずに昨年まで私は商人として過ごしてきました。事情があって、辺境伯爵令息へ婿入することになりましたが、何も知らなさすぎて、顔つなぎのためのお茶会や社交パーティーにも出れないのです。このままでは、伯爵夫人としての仕事が出来ず‥‥‥。夫にも迷惑がかかってしまいます。レオンハルト様に相談したところ、あなた達を王都から呼び寄せてくれたのです」
確か一昨年の春、レオンハルト様の仕事関係の手伝いで、こちらの領地へ来ていたな‥‥‥。顔見知り程度の付き合いだったが、選ばれて来たのかもしれないと思った。
本当のハリス殿下が、今どうしているのか気になったが、聞ける雰囲気でもなかった。それに、正直に答えてもらえるとも限らない。
「ご事情は、だいたい分かりました。それでは私達2人、交替で稽古をつけさせていただきます。一般教養は教材がありませんから、今すぐにという訳にはいきませんが‥‥‥。それでも構いませんか?」
「はい。よろしくお願い致します」
彼は立ち上がると私達を交互に見つめ、頭を下げたのだった。
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