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辺境の地

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 私達は王命で辺境の地へと来ていた。


 『サクフォン辺境伯』


 それが、私達が新しく仕えることになった主の名だった。私達と言ったのは、部下のユリウスがいたからで‥‥‥。騎士団副団長のユリウスは何故か私をすごく慕ってくれていて、今回も団長である私について来てくれていた。

 そもそも私がヘマをしなければ、私達が辺境の地へ来ることはなかっただろう。私はつい先日、第5王子からの求婚を断ってしまっていた。

 第5王子の専属護衛を務めていた私は、彼の好意に気づいていたものの、まだ12歳だからと、高を括っていた。彼の婚約の申込みにあまりいい顔をしなかっただけで、「もう二度と会いたくない」と言われてしまったのである。もちろん、専属護衛も解任だ。

「団長ぉ、まだ着かないんすかね」

「ああ、もう少しだろう。頑張れ」

「うぃーす」

 まだ雪が少し残る山道を2人で歩いていた‥‥‥。昨年、第3王子であるハリス殿下が辺境伯の息子に婿入していて、そのハリス殿下の護衛の役割を担うと共に『辺境伯領内部調査』という密命を受けていた。

 辺境伯は一筋縄でいかない方らしく、国王が最も警戒している人物の1人である。

 私達は、そんな辺境伯に仕えることになった云わば『スパイ』だ。第3王子は我儘だという噂だし、まだ屋敷に着いていないのに、これからの事を考えると何だか疲れてしまう。

「団長、やっぱり休みましょう。顔色悪いですよ」

「そうだな‥‥‥。少し、休むとするか」

 途中にある宿屋で休みながら来た私達だったが、ユリウスの提案で木陰で休むことになった。木に寄りかかると、ユリウスは自分の膝の上を叩いていた。どうやら膝を貸してくれるらしい。

「いいのか? ありがとう」

 横になった私は、気持ちの良い風に吹かれて、いつの間にか眠ってしまっていた‥‥‥。起きると、だいぶ日が傾いていた。

「ユリウス、起こしてくれたら良かったのに」

「団長が、あんまり気持ちよさそうに眠ってたんで、起こすのが忍びなかったんスよ」

「ありがとう。今度、お詫びとお礼をするからさ‥‥‥。何か考えておいてくれよ」

「マジっすか‥‥‥。やりぃ」

「あまり、高くないので頼むよ」

 私は侯爵家の5男だが、騎士になってから独立したので、今はしがない国の兵士である。ハッキリ言って、給料もそんなに高くはない。

「分かってますって‥‥‥」

 ニヤニヤしながら張り切って歩くユリウスを見て、「大丈夫かなぁ?」と少し心配になったのだった。


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