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ティータイム

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 それから3日後。私は中庭へ来ていた。殿下の護衛チームの人数が増えてしまった結果、どうしても休憩時間が多くなってしまい、暇を持て余していた。

 あれから殿下とは何もない‥‥‥殿下が忙しすぎるのだ。朝早くから夜中まで仕事をしている。今まで殿下の仕事ぶりは、あまり見ていなかったが、書類を捌く姿は何だかカッコよくて、さっきも思わず見とれてしまっていた。

 このままでは警備に支障が出ると思い、自分で自分の頬を叩き気合いを入れていると、後ろから笑う声が聞こえた。

「何してるの?」

 振り返ると、そこには殿下がいた。

「いやっ、これは、その‥‥‥」

「よかったら、付き合ってくれない?」

「‥‥‥え?」

 殿下の手にはバスケットが、ぶら下がっており、中にはサンドイッチが入っているのが見えた。

「ぐーきゅるるる」

 食べ物を見たら、私のお腹が鳴っていた。

「いやっ、これは、その‥‥‥」

「ちょうどお腹も空いてるみたいだしね。良かった」

 私達は2人で、中庭にある四阿へと向かった。


*****


「殿下、お忙しいんじゃないんですか?」

 昼下がりの午後、私達はピクニックに来たかのようにサンドイッチやお菓子、飲み物を広げていた。

「さっきまではね。ようやく、ひと区切りついたんだ‥‥‥今まで寂しい思いをさせてごめんね」

「寂しいだなんて、そんな‥‥‥」

「寂しくなんてなかった?」

「えーと、そのう‥‥‥」

 私が視線を逸らすと、殿下は苦笑していた。

「ごめん。からかうつもりはなかったんだけど‥‥‥明日は、休みだから一緒に居られるよ」

「え?!」

「明日は、何か予定があるの?」

「いえ、私もちょうど休みでして‥‥‥」

「じゃあ、一緒に居られるね」

「‥‥‥はい」

 私は『謀られた』と思ったが、何も文句は言えなかった。


*****


 部屋へ戻りシャワーを浴びて出てくると、そこには何故かブランデーを抱えた殿下が立っていた。

「殿下‥‥‥どうしてここに?」

「どうしてって、普通に扉から入ってきたよ」

 殿下が指し示した先は、部屋の奥にある本棚横の扉だった。

「あれ、開いたんですか? 開かないと思ったら、隣と繋がってたんですか?!」

「あれ? 知らなかったの? 護衛チームに入ったから、てっきり知ってるのかと思ってたけど‥‥‥」

 知らなかったよ‥‥‥わざと教えなかったのか? あとで隊長と団長を問い詰めよう‥‥‥いや、まてよ。墓穴を掘るだけか?!

「ジョゼフは飲めるの?」

「嗜む程度になら‥‥‥」

「なら、付き合ってよ」

 殿下はソファーへ座ると、何処からか持ってきたグラス2つにお酒を注いでいた。

「では、2人の休日に~」

「「乾杯!!」」


*****


 2時間くらい経つと殿下はベロベロになっていた。この2時間で分かったことは、『王族って大変なんだな』ということだった。

 ただ、私は結婚しても普通に仕事を続けても構わないし、王族の仕事はしなくていいと何度も言っていた。「どうしても、出て貰わなければならない公務には、出てもらうかもしれないけど」とは言っていたが‥‥‥。

 私は殿下のはだけた夜着を直すとソファーに寝かせ、タオルケットを掛けた。本当はベッドへ移動させようとしたのだが、私より頭ひとつ分大きい殿下の身体は私には運べなかった。

 殿下は暑いのか、タオルケットを放るとまた夜着をはだけさせていた。お腹の部分の腹筋が割れていて羨ましいと思いつつも、また夜着の前を合わせようとすると、殿下に手を掴まれた。

「あれ? ジョゼフがいる‥‥‥ユメ? 夢ならいいか」

 夢なら何がいいのだろうと思っていると、唇に暖かいものが触れた。

「なっ?!」

 離れようとしたが、手を掴まれていて動けない。キスは次第に深くなり、舌を吸われると背中がゾクゾクしてきて、慌てて手を振り払った。

「ん‥‥‥あれ? ジョゼフ? どうしてここに?」

 殿下は辺りを見回すと納得したのか、自分でベッドへ向かっていた‥‥‥いや、それは私のベッドだよ。

「ジョゼフ、おいで」

 ベッドに寝っ転がった殿下は、自分の横の空いている部分をポンポンと叩いていた。

「何もしないから」

 私はため息をつくと、殿下の隣に寝転がった。その途端、後ろから抱きつかれる。

「殿下、今、何もしないって‥‥‥」

「抱きしめるだけだよ‥‥‥すごい筋肉だね」

「それほどでもありません。殿下の筋肉の方が凄かったです」

「‥‥‥見たの?」

「見えたんです。見ようとして見た訳じゃありません」

「いいよ、ジョゼフなら見ても。ねぇ、ジョーって呼んでいい?」

「‥‥‥2人だけのときならば」

「なら、私のことはギルって呼んで」

「‥‥‥ギル様」



「‥‥‥‥‥‥ギル」

「ありがとう」

 殿下は再び後ろから抱きついてきた。夜着がはだけて、ほとんど裸で抱きついていたが、もう気にしない事にした。


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