上 下
32 / 92

カトリーナと2回目のお祭り 2

しおりを挟む

 屋台のある通りは、教会に人が集まっている今は人が少ない。
 今年もこの隙にゆっくり回ろう!


「なにを食べようかな?肉巻き米串はこのあいだも食べたし今日はいいかなぁ」
「待ってカトリーナ、今日だけ限定のスパイス味だって」


 人通りの少ない中でも賑わう米串屋台を、カトリーナは素通りしようとしたがヒューが食いついた。


「ヒュー、一昨日の夕飯肉巻き米串だったって言ってなかった?あっでもいいにおーい」

「うん、母さんにパンを買ってきてって頼まれたんだけどつい米串を買っちゃったんだ。ね、スパイス味一本買おうよ。半分こしようよ」


 ヒューが繋いだ手をくいくいとひっぱる。
 ヒューは米串に目がないと最近わかってきた。


「そうだね、気になるね。おじさんスパイス味一本くださーい!」

「おっお嬢ちゃんに坊主!まいど! はいよ、本日限定スパイス味だよー」


 カトリーナが肉巻き米串を受け取るとヒューがさっと硬貨を渡す。
 私が、と口を開きかけたが、


「僕が食べたがったんだから、ね? ほら先に食べてみて?」

 ヒューがいたずらっぽく片目を閉じた。
 スマート……。


 はふっと食欲そそる香りの肉巻き米串をかじる。
 においでもしや、と思ったけど、カレーっぽい!
 いつもの肉巻き米串に使うものより脂が多めのお肉にスパイスがよく合う!


「おいしーい!」

 きらきら瞳を輝かせたカトリーナの手ごと米串を引き寄せてヒューも一口かじる。

「これは、おいしいね……!」

 ヒューの瞳もきらきら輝いた。
 肉巻き米串は今日も大ヒットの予感だ。


 カレーライス作れないかなー?
 ヒューもきっと好きだろうな、カレーライス!



 一口ずつ交互に肉巻き米串を食べながら歩くと、昨年から気になっていた屋台を通りかかった。


「ヒュー、伝統菓子っていったいなにでできてるの? おいしい?」

 派手なピンクや黄色で彩られた、棒。
 カトリーナには正体がわからなかった。


「なにでできてるんだろう? 僕は甘すぎて得意じゃないんだ、あれ……」


 屋台のおばあちゃんに話しかけて原材料を聞いてみるが、耳が遠いのか全く要領を得ない。
 1つ買って味見してみることにした。

「カトリーナ、ほんとうに?」

「お試し! なんなのかすごく気になるの!」

 硬貨を渡すと、好きなのを取れと示されたので、ピンクメインの棒を選びとった。


 ぱくっとかぶりつくと、表面ががりっと硬く、中はすかすか。
 そして歯にしみるほど甘い。

「あっっっまいぃぃ! ほ、ほんとなにこれ?!」

 すかすかの中身も甘い。
 ふ菓子みたいだ。中だけならまだいけるけど、この表面はなんなんだ。

 ぺろぺろ味わってみたけど砂糖でもない……果物でもない……カトリーナは知らない甘さだ。
 とにかく甘すぎる。
 とても一本は食べられない。


 ヒューが頬を染めて、舐めるのやめようか、というので、紙に包んで○次元ポケットに収納した。
 パパにあげよう。


 小さなお水のかたまりを出して口に含み、軽くゆすいで飲み込んだ。

「まだ口の中甘いー。なんかお口直ししたい……」
「甘すぎるでしょ。でもあれがすごく好きな人もいるんだ」


 ほら、と屋台を示され振り向くと、高齢のご夫婦が伝統菓子を紙袋いっぱいに買い求めていた。









あとがき

ヒューは、ぺろぺろもされてみたいなと不埒なことを考えていました。

お気に入り登録ありがとうございます!
嬉しいですー!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!

臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。 そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。 ※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています ※表紙はニジジャーニーで生成しました

【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜

茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。 ☆他サイトにも投稿しています

伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】

ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。 「……っ!!?」 気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。 ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

完結 R18 媚薬を飲んだ好きな人に名前も告げずに性的に介抱して処女を捧げて逃げたら、権力使って見つけられ甘やかされて迫ってくる

シェルビビ
恋愛
 ランキング32位ありがとうございます!!!  遠くから王国騎士団を見ていた平民サラは、第3騎士団のユリウス・バルナムに伯爵令息に惚れていた。平民が騎士団に近づくことも近づく機会もないので話したことがない。  ある日帰り道で倒れているユリウスを助けたサラは、ユリウスを彼の屋敷に連れて行くと自室に連れて行かれてセックスをする。  ユリウスが目覚める前に使用人に事情を話して、屋敷の裏口から出て行ってなかったことに彼女はした。  この日で全てが終わるはずなのだが、ユリウスの様子が何故かおかしい。 「やっと見つけた、俺の女神」  隠れながら生活しているのに何故か見つかって迫られる。  サラはどうやらユリウスを幸福にしているらしい

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

処理中です...