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ケーキを食べ終わったオリビアたちが店を出ると、ロバートが「このあとどうする?」と二人に問いかけた。オリビアは朝の時点ではもちろん一日中デートを満喫する気持ちでいたけれど、既にそのような気力もなくなり、一刻も早く家に帰りたかった。
「私はもう帰ろうと思います。まだどこかに遊びに行くつもりなら、お二人で楽しんできてください」
にこりと笑う。普段であればオリビアとロバートのデートがカミラとロバートのデートに取って代わるなど許せず阻止しようとしただろうが、ケーキ屋でのあれこれで完全に精神が疲弊し、もうどうにでもなれといった心境になっていた。
しかし、意外なことにロバートは一人で帰ろうとするオリビアを引き止めた。
「いや、送っていくよ。今日は君と二人で出かける約束だったのに君が最初に抜けるなんておかしいだろう」
「えっ? いや、いいですよ。まだ日も落ちてないですし、一人で帰れます」
「そっ、そうだよ! せっかくだし他のとこも寄って行こうよ。オリビアちゃんは疲れてるみたいだし、早めに帰ってもらえば……」
反射的に真顔で断ると、カミラもオリビアに加勢した。主人公の体調への気遣いは言葉の上だけなのが見え見えだが、まあ今はいいだろう。
カミラに言われればロバートも折れるだろうと思ったけれど、これまた意外なことに、彼は食い下がってきた。
「いや、送る。話したいこともあるし。カミラには悪いけど、二人にさせてくれ」
そこまで言われればさすがにカミラも諦めたようで、「わかった、じゃあ一人で買い物して帰るね」と商店街の方に歩いて行ってしまった。
これって、とオリビアは思った。もしかして、自分のことを優先してくれた?
ロバートのほうをちらりと見上げると、目があった。
「じゃあ、行くか」
なんだかそわそわしながらも、しばらく無言のまま二人で歩く。
何か話をした方がいいのだろうかと話題を探していると、ロバートの方から静かに話を切り出してきた。
「……前のデートだけど、本当に悪かった。直前で行けないなんて言い出して、今日も埋め合わせをするって話してたのに、カミラも一緒でデートって感じじゃなかったし」
「いえ、大丈夫ですよ。気にしないでください」
嘘だ。全然大丈夫ではないし、気にしてほしい。でもそのように正直な気持ちを伝えられない自分の立ち位置が憎い。
健気なセリフを吐いて苦笑してみせると、ロバートは首を振った。
「いいや、今日カミラが一緒だって聞いた時、本当は嫌だったんじゃないのか。迷惑かって聞かれた時、何か言いかけてただろ。……我慢させて、悪い」
気づいていたんだ。思わず目を見開く。
それだけで、オリビアの真意はロバートに伝わったようだった。
「今度こそちゃんと埋め合わせをするから。もうすぐ君の誕生日だろ? その日、一緒に出かけないか」
「ええ! いいんですか? その日って勤務日ですよね」
「ああ、既に休みを申請してある」
「うわぁ……嬉しいです!」
思わず口を手で覆った。やばい、泣きそう。まさかオリビアのために休みを申請してまで一緒にいてくれるなんて。というか、オリビアの誕生日自体知っていると思っていなかった。
これは少しでも自分のことを大切に思ってくれていると期待していいのだろうか。
じわじわと胸にこみ上げてくる何かを噛み締めながら並んで歩いていると、やがてオリビアの家が見えてきた。
「じゃあ、ここら辺でいいかな。誕生日、楽しみにしてて」
白い歯を見せた爽やかな笑みを向けられ、顔が熱くなる。
ああ、この笑顔。やっぱり好きだ。なんだかんだと不満を言ったところで、この表情を向けてもらえることが、嬉しくてたまらない。
オリビアは満面の笑みを返した。
「はい、すっごく楽しみです! お仕事頑張ってください!」
それから誕生日までの一週間、オリビアは夢見心地で過ごした。一体どこに行くんだろう、何を話せるだろう。服も髪も、とびっきり可愛くしなきゃ。
なにせ、彼と付き合い始めてから半年が経つけれど、まともなデートは数回しかしていない状況なのである。浮かれない方が嘘だろう。
「恋人がいるんだから無理しなくていいっていつも言ってるんだけど……ごめんね?」
いつの日か謝っているようなふりをして得意げに笑って見せたあの幼馴染の顔が脳裏に浮かぶ。しかし、今度こそはオリビアだけのために時間を使ってもらえるはずだ。恋人らしいやり取りだって存分にするのだ。邪魔はさせない。
「私はもう帰ろうと思います。まだどこかに遊びに行くつもりなら、お二人で楽しんできてください」
にこりと笑う。普段であればオリビアとロバートのデートがカミラとロバートのデートに取って代わるなど許せず阻止しようとしただろうが、ケーキ屋でのあれこれで完全に精神が疲弊し、もうどうにでもなれといった心境になっていた。
しかし、意外なことにロバートは一人で帰ろうとするオリビアを引き止めた。
「いや、送っていくよ。今日は君と二人で出かける約束だったのに君が最初に抜けるなんておかしいだろう」
「えっ? いや、いいですよ。まだ日も落ちてないですし、一人で帰れます」
「そっ、そうだよ! せっかくだし他のとこも寄って行こうよ。オリビアちゃんは疲れてるみたいだし、早めに帰ってもらえば……」
反射的に真顔で断ると、カミラもオリビアに加勢した。主人公の体調への気遣いは言葉の上だけなのが見え見えだが、まあ今はいいだろう。
カミラに言われればロバートも折れるだろうと思ったけれど、これまた意外なことに、彼は食い下がってきた。
「いや、送る。話したいこともあるし。カミラには悪いけど、二人にさせてくれ」
そこまで言われればさすがにカミラも諦めたようで、「わかった、じゃあ一人で買い物して帰るね」と商店街の方に歩いて行ってしまった。
これって、とオリビアは思った。もしかして、自分のことを優先してくれた?
ロバートのほうをちらりと見上げると、目があった。
「じゃあ、行くか」
なんだかそわそわしながらも、しばらく無言のまま二人で歩く。
何か話をした方がいいのだろうかと話題を探していると、ロバートの方から静かに話を切り出してきた。
「……前のデートだけど、本当に悪かった。直前で行けないなんて言い出して、今日も埋め合わせをするって話してたのに、カミラも一緒でデートって感じじゃなかったし」
「いえ、大丈夫ですよ。気にしないでください」
嘘だ。全然大丈夫ではないし、気にしてほしい。でもそのように正直な気持ちを伝えられない自分の立ち位置が憎い。
健気なセリフを吐いて苦笑してみせると、ロバートは首を振った。
「いいや、今日カミラが一緒だって聞いた時、本当は嫌だったんじゃないのか。迷惑かって聞かれた時、何か言いかけてただろ。……我慢させて、悪い」
気づいていたんだ。思わず目を見開く。
それだけで、オリビアの真意はロバートに伝わったようだった。
「今度こそちゃんと埋め合わせをするから。もうすぐ君の誕生日だろ? その日、一緒に出かけないか」
「ええ! いいんですか? その日って勤務日ですよね」
「ああ、既に休みを申請してある」
「うわぁ……嬉しいです!」
思わず口を手で覆った。やばい、泣きそう。まさかオリビアのために休みを申請してまで一緒にいてくれるなんて。というか、オリビアの誕生日自体知っていると思っていなかった。
これは少しでも自分のことを大切に思ってくれていると期待していいのだろうか。
じわじわと胸にこみ上げてくる何かを噛み締めながら並んで歩いていると、やがてオリビアの家が見えてきた。
「じゃあ、ここら辺でいいかな。誕生日、楽しみにしてて」
白い歯を見せた爽やかな笑みを向けられ、顔が熱くなる。
ああ、この笑顔。やっぱり好きだ。なんだかんだと不満を言ったところで、この表情を向けてもらえることが、嬉しくてたまらない。
オリビアは満面の笑みを返した。
「はい、すっごく楽しみです! お仕事頑張ってください!」
それから誕生日までの一週間、オリビアは夢見心地で過ごした。一体どこに行くんだろう、何を話せるだろう。服も髪も、とびっきり可愛くしなきゃ。
なにせ、彼と付き合い始めてから半年が経つけれど、まともなデートは数回しかしていない状況なのである。浮かれない方が嘘だろう。
「恋人がいるんだから無理しなくていいっていつも言ってるんだけど……ごめんね?」
いつの日か謝っているようなふりをして得意げに笑って見せたあの幼馴染の顔が脳裏に浮かぶ。しかし、今度こそはオリビアだけのために時間を使ってもらえるはずだ。恋人らしいやり取りだって存分にするのだ。邪魔はさせない。
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