Game of the KILLER QUEEN

南蛮 義卿

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序章

殺人倶楽部へのご招待

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飽きた。
私は気づいてしまった。あまりに完璧にやり過ぎたのだろう。憲兵団は相変わらず私を特定していないようだし、何より制作意欲が湧かなくなってきた。
ペンを持ったはいいもののどうも手が動かない。

「やめだやめだ。」

私はペンを放り出し、椅子から立ち上がりソファーに寝転ぶ。

「つまらないな。」

意味深な文章を送ってみたりしてみたがどうにも変化が無いと直ぐに飽きてしまう。自分の欠点ではあるが、こればかりは治しようがない。

扉を開け、執事服の男黒羽 一郎クロバネ イチローが入ってくる。白いマスクを付けているのかと思いきや素顔らしく世界は広いのだと思い知らされた。何故私にファンレターを送ったのかは分からないが使えるものは使う。彼の能力は中々面白いからね。

「なあイチロー、憲兵団はどんな感じだい?」

「ほとんど情報は掴めていないようです。貴方様が遭遇した少年の証言のみだそうで。」

「だよなぁ。」

「ところで気になる記事が。」

イチローが今朝の朝刊を差し出す。
イチローから受け取った記事の表紙には
「9人目の犠牲者!芸術家による失敗作か!?」と書かれていた。

「なんだいこれぇ、私はまだ9人はやってないぞ。」

「模倣犯という奴でしょうか。」

さらに記事を読んでみる。
「王都第3地区西通りにて人間の死体が発見された。被害者は不明。死体は関節に刃物による切れ目が多数存在し、片目、右の子指、そして皮膚の一部が剥ぎ取られていた。恐らくバラバラにするはずが予想外に上手くいかず放置されたものだと思われる。現場には
「芸術は止まらない」と王国文字で書かれており、憲兵団は芸術家の模倣犯の可能性も高いとして調査を勧めている。

「流石新聞社ですね、見出しと記事の内容が全く違う。」

「いや、これは面白いぞ。」

私は口元が緩むのを抑えきれなかった。どこの誰かが殺人を行った。恨みやトラブルでなく純粋に殺したいが故に。これを待っていたのだ。諦めかけていたゲームが出来そうだ。熱意が意欲が湧き上がる。イチローは殺人を肯定しているが殺人そのものに意味を見出せてはいない。
そういう意味では殺したいが為に殺す人間は初めてだ。

「是非招待したいものだ。」

ゲームの1つ目の駒が得られそうだ。後は使えるかどうかだがこれは実際に会わなければ分からないだろう。
しかし少なくとも2人目が出る可能性が出てきた。
彼女は勢いをつけ、ソファーから立ち上がる。

「イチロー、模倣犯を見つけてきてくれないかい?私は色々と準備をしなくては。」

浮き浮きと彼女は机に向かう。先ほどの無気力が嘘のように手紙に文字を書き、赤の封蝋に印璽を押すとクロバネに渡した。印璽は馬の首とナイフが書かれている。

黒馬倶楽部Death coach clubへのご招待」
そう書かれた封筒を持つとイチローは小さく溜息を吐き部屋を音もなく出て行った。

「最低でも10人は欲しいなぁ、襲名制にしても面白いかもしれない。何かカッコいい名前がいいなぁ。」

彼女は自分や他の会員の襲名を考え始めた。無論殺人倶楽部こと黒馬倶楽部はまだ誕生さえしていない。側から見れば捕らぬ狸の皮算用だろう。

「うーん。倶楽部って金持ちとかが利用しているイメージあるし、犯罪王とか?いやダサいし恥ずかしいな。」

何ともどうでも良い事を考えるものだ。
それでも彼女はそのどうでもいい時間を楽しむのである。

「拝啓 立春とは名ばかりでまだまだ寒い日が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか。
新聞にて貴方様の記事を拝見させていただきました。
今日お便りを出したのは黒馬倶楽部へのお誘いです。我々は意図的に統一された自我を破棄し、真なる自由を謳歌するべく活動しております。貴方が自由を叫び実践したことに敬意の意を表し、是非にとお誘いした次第です。
お忙しい日々をお過ごしかと思いますがお話ができたらと思っております。
くれぐれも憲兵に気を付けてお過ごし下さい。

敬具

芸術家より」
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