Game of the KILLER QUEEN

南蛮 義卿

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序章

王国憲兵団の威信

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王都、中央部に堂々とそびえ立つ王国憲兵団総司令部は、ラウリュアレ赤上級騎士殺害の犯人の殺害に憲兵団の全勢力をかけていた。
憲兵団は王都、及び王族、重臣の護衛、戦闘を任とするエリート集団である。
赤兵団と青兵団の2つに分かれている。
赤兵団は戦闘のスペシャリストである。
魔道具や自身の魔法を用い、数多の難敵を葬ってきた。
逆に青兵団は情報のスペシャリストである。戦況を把握し、敵の行動を読み、有利に事を運ばせる。
また拷問や暗殺計画なども練るという。
赤騎士が殺されたということは相手は相当な手練れであろう。
さらに手口は凶悪極まりなかった。
ラウリュアレはバラバラにされていた。
表皮は剥がされ、ブランケットのように肩にかけられ、
腹からは臓器を抜き取られ、大腸はベルトのように巻かれ、胃はクッションのように尻の下に置かれていた。
それはまるで彼を着飾らせているようであった。
現場には1枚の紙とこのような走り書きがあった。
貴婦人の休日holiday of the lady 」
遊びなのだ。ラウリュアレに対して恨みを持つわけでもなく、嫌っているわけでもない。
紙には被害者ラウリュアレの名前と人物画。おそらくは作品のだろう。
芸術家気取りの殺人鬼。
最高司令官であるドワイト・D・アイゼンハウワーは思う。
遺体で遊ぶ。
死後すら弄ぶ邪悪なる者。
この世界ではこのような事件はかつて起こったことは無かった。
恨みや貧困などで事件を起こす者はいても愉快犯はいなかった。
どのように調するべきか。
部下の手綱をうまく握る必要があると。
彼は事件を新聞らに公表した後、
こう宣言した。

「我々王国憲兵団は全力を持ってこの犯罪者「芸術家」を特定しましょう。
それがこの狂気極まる事件の被害者であるラウリュアレ・リモンへの鎮魂歌レクイエムとなりうるでしょう。」

その日の夜にはこの事件は大々的に報道された。
誰も彼もが義憤に燃え、悪魔退治を決意した。
皆が石畳を砕く勢いで足踏みを行い、
怒りの声が渦巻く。
証拠に残ったものは1つだ。
走り書きである。
その走り書きはこの国の公用語でなく、英語で書かれていることから犯人は転生者である可能性が高かった。

そうして誰もが怒りに唇を噛み締める中、
1人笑う者がいた。
悪魔、狂人、芸術家。
ラウリュアレ殺しを行った張本人。
彼女は上機嫌に机の上のタイプライターを叩いていた。




柱野 亮介はしらの りょうすけは上級騎士、高位狩人である。
彼は転生者であり、
後に「Days of the Killer Queen 」と呼ばれる殺害及び犯罪群に運命を狂わせられた青年である。
転生前、彼はラノベが好きな普通の日本人であった。
彼は魔法や超科学技術に心を躍らせる青年であった。
よもや自らが魔法や化学による無差別的な発展をとげた世界に来てしまうとは夢にも思わなかったのである。
当初彼はこれを夢であるとし、
ラノベ主人公の如く奔放に振る舞った、
が一ヶ月も経てば流石におかしいと思い始めた。
結局彼がこの世界が彼の幻想世界妄想でないと渋々認めざるを得なくなるのには半年が掛かった。
彼の脳内がこの異常事態を理解する事を拒んだからである。
つぎに理解すると彼は不安と恐怖に駆られた。
彼は赤騎士狩人班。 
要は異形の化物を殺す所謂掃除屋である。
それまで彼が化物を殺すことができたのはあくまで夢であるからだ。
ゲームで人を殺す事はできても、
それはゲームであり現実でない。
そのようなある意味無責任な考えを持って行っているからである。
血の温かさや弾ける内臓焦げた死体。
気持ち悪い程度で済んでいたものが、
全て現実であったとき、彼は自分に対する嫌悪に溺れた。
何故自分はこんなにも嬉々として殺しているのだろう。
続いていつ死ぬかも分からない恐怖が暗雲の如く彼の頭に立ち込め、
彼はいつしか部屋から出る事は無くなった。
彼が部屋から出てきたのはそれから1年後である。
その間にも色々とあったのだが長くなるのでまたいつか語るとしよう。
ともかく同僚らの必死の説得により今再びやってみようと思えたのだ。
その先に絶望が巣食っているとも知らずに。
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