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JK-時代錯誤とくじ-
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前回までのあらすじ!
50才独身男性、ヨシカズは会社を解雇された事で自殺、しかし善か悪か曖昧な彼が天国に行くためには似たような曖昧な人と殺し合わなければならないのだ!死の恐怖を実感し二度と死にたくない彼だが、天使風マスコット てんしくんに言われるがままに殺し合いの儀式に参加することになってしまった!期間は1年、殺し合いの相手は皆同じ高校に通う仲間なのである!果たして彼女(彼)は生き残り、天国へ行くことが出来るだろうか?そして彼が最初に引いたガシャポンに入っている力とは何なのか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝日が瞼に刺さる。隣の公園で子供たちの遊ぶ声が聞こえる。生きていた頃と変わらない。ヨシカズは昨日までと同じ覚醒に少し安堵しながらも、起き上がった自らの体をじっと見つめる。
「夢、なわけないか」
ヨシカズは今年で50歳を迎える独身の中年男性、見た目に特別目を引くものなどなかった、のだが、布団からの隙間からは白くきめ細かい肌が覗いており、それは見慣れないセーラー服に包まれていた。
どうやら美女子高生(美女な女子高生)になったのは一時の気の迷いではなく本当に本当らしい。完全に誰かの趣味な気がするが。というか世の中最強が女子高生ってどういう…。
そして不思議な点が1つ、この世界は私が元いた世界に違いないのだが、私は元から 加寿(かず)ヨシカ という名の女性として、この世界に存在していたことになっていた。アルバムの写真は全て女の子になっており、自殺したことも無くなってしまっていた(とはいえ会社はクビになっていたのだが)。ガイドブックによると周りの人間の認識は女子高生であると共に50才の中年である、ということになっているらしい。つまりは、認識2つが矛盾なく並立している、と捉えられているとの事だった。理解し難いが、元来交友関係広いわけではなかったのでそこはほぼ影響ない点ではある。
ガイドブックに一通り目を通し、小休憩を挟んだ。次にやることは分かっているのだが、どうにも気が進まない。そう、例のくじである。てんしくんは戦うための力、というようなことを言っていたが、具体的にどういうものなのか。ええい!怖気付くなヨシカズ!自らを鼓舞し勢いでカプセルをあける!
モクモクモクモク…
…なんと安っぽい玉手箱なのか。
痛みや異変はないが、私は焦りながら姿見を見る。よし!髭は生えてない!
…しかし、何も起こらないとなると、それはそれで違和感がある。力とは何なのだ?そういえば、と。確か開ける前にちらりと見た時には紙が同封されていたような…
煙の中のガシャポンカプセルを拾い上げると、案の定説明書のようなものが折り畳まれて入っていた。
~~~~~~~~~~~~~~~
『固定の力』
おめでとう!
あなたの力は固定する力です。
力を使う為には使いたい!と強く願うだけ!
まずあなたは、空間を5センチ角の立方体に固定することができます。
範囲は目の届く場所。
そしてその期間は一瞬です。
努力で伸ばしましょう!
~~~~~~~~~~~~~~~
詳細なようでぼかして書いてあるなぁ…
固定の力と言われましても、意味がわからない。とはいえ力か。枯れた心に失われた少年が蘇るようだな………
自分の思考が気取り屋であることに寒気が走った。
と、とりあえず使ってみる。
「…ハッ!」
しかし何も起こらない。願いとやらが足りないのか?
私は大人、私は大人…と言い聞かせ、気恥しさを打ち消すことのできるように、より大きな声で、
「デヤァアッ!!」
…………………
何も起きねーじゃねぇか!!!
心の声とはいえこんなに大きな声で叫んだのはマジで小学生の頃以来ではなかろうか。『マジ』…?何だか精神まで若返ったような気がする。
とはいえ、力云々の問題が何も進展していない。
羞恥の念が激しく湧き上がるのを抑えながら、考える。
…胡散臭いとは思ってたけど、そんな訳ねーわな!力とか、ないよね!よくよく考えればあんな3分で思いついたような生物の言うことを鵜呑みにするなんて、どうかしてたわ!ヨシカズってばうっかりさん!(´>ω∂`)
さっきまでのことは忘れて、もう一度寝よう!女の子の体も風邪みたいなもの!もっかい寝ればなおるってば!……
カーン…!!
混濁する思考を強引にとめたのは換気のため開けていた窓からの小気味いい音。元野球部の私が日常的に聞いていた、金属が球を弾く音だった。
何気なく窓の外に目をやる。懐かしいや、軟式の野球ボールだ。小学生時代は見よう見まねで変化球を投げようとしたなぁ…って野球ボール!?
ぼんやりみていた窓の外、気がつけば目の前に軟式ボールが迫っていた。
ヤバいッぶつかる…!!
予測された激痛は、やってこなかった。
ポコム!
「サーセーン、ボール飛んでっちゃったんですけど…って戻ってきた!謝り損だよチッキショー!アホボケクソカス!!」
外ではそんな声が聞こえるが、私はそれどころではなかった。
球が迫り目をつぶる直前、私にはハッキリと見えたのだ。何も無いはずの空中、軟式のボールが虚空にぶつかって歪むのを。
有り得ないが、心当たりがあった。
「『固定』…」
分かりかけてきた。固定とはなにかが。
理解力の鬼、ヨシカたん!
50才独身男性、ヨシカズは会社を解雇された事で自殺、しかし善か悪か曖昧な彼が天国に行くためには似たような曖昧な人と殺し合わなければならないのだ!死の恐怖を実感し二度と死にたくない彼だが、天使風マスコット てんしくんに言われるがままに殺し合いの儀式に参加することになってしまった!期間は1年、殺し合いの相手は皆同じ高校に通う仲間なのである!果たして彼女(彼)は生き残り、天国へ行くことが出来るだろうか?そして彼が最初に引いたガシャポンに入っている力とは何なのか?
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朝日が瞼に刺さる。隣の公園で子供たちの遊ぶ声が聞こえる。生きていた頃と変わらない。ヨシカズは昨日までと同じ覚醒に少し安堵しながらも、起き上がった自らの体をじっと見つめる。
「夢、なわけないか」
ヨシカズは今年で50歳を迎える独身の中年男性、見た目に特別目を引くものなどなかった、のだが、布団からの隙間からは白くきめ細かい肌が覗いており、それは見慣れないセーラー服に包まれていた。
どうやら美女子高生(美女な女子高生)になったのは一時の気の迷いではなく本当に本当らしい。完全に誰かの趣味な気がするが。というか世の中最強が女子高生ってどういう…。
そして不思議な点が1つ、この世界は私が元いた世界に違いないのだが、私は元から 加寿(かず)ヨシカ という名の女性として、この世界に存在していたことになっていた。アルバムの写真は全て女の子になっており、自殺したことも無くなってしまっていた(とはいえ会社はクビになっていたのだが)。ガイドブックによると周りの人間の認識は女子高生であると共に50才の中年である、ということになっているらしい。つまりは、認識2つが矛盾なく並立している、と捉えられているとの事だった。理解し難いが、元来交友関係広いわけではなかったのでそこはほぼ影響ない点ではある。
ガイドブックに一通り目を通し、小休憩を挟んだ。次にやることは分かっているのだが、どうにも気が進まない。そう、例のくじである。てんしくんは戦うための力、というようなことを言っていたが、具体的にどういうものなのか。ええい!怖気付くなヨシカズ!自らを鼓舞し勢いでカプセルをあける!
モクモクモクモク…
…なんと安っぽい玉手箱なのか。
痛みや異変はないが、私は焦りながら姿見を見る。よし!髭は生えてない!
…しかし、何も起こらないとなると、それはそれで違和感がある。力とは何なのだ?そういえば、と。確か開ける前にちらりと見た時には紙が同封されていたような…
煙の中のガシャポンカプセルを拾い上げると、案の定説明書のようなものが折り畳まれて入っていた。
~~~~~~~~~~~~~~~
『固定の力』
おめでとう!
あなたの力は固定する力です。
力を使う為には使いたい!と強く願うだけ!
まずあなたは、空間を5センチ角の立方体に固定することができます。
範囲は目の届く場所。
そしてその期間は一瞬です。
努力で伸ばしましょう!
~~~~~~~~~~~~~~~
詳細なようでぼかして書いてあるなぁ…
固定の力と言われましても、意味がわからない。とはいえ力か。枯れた心に失われた少年が蘇るようだな………
自分の思考が気取り屋であることに寒気が走った。
と、とりあえず使ってみる。
「…ハッ!」
しかし何も起こらない。願いとやらが足りないのか?
私は大人、私は大人…と言い聞かせ、気恥しさを打ち消すことのできるように、より大きな声で、
「デヤァアッ!!」
…………………
何も起きねーじゃねぇか!!!
心の声とはいえこんなに大きな声で叫んだのはマジで小学生の頃以来ではなかろうか。『マジ』…?何だか精神まで若返ったような気がする。
とはいえ、力云々の問題が何も進展していない。
羞恥の念が激しく湧き上がるのを抑えながら、考える。
…胡散臭いとは思ってたけど、そんな訳ねーわな!力とか、ないよね!よくよく考えればあんな3分で思いついたような生物の言うことを鵜呑みにするなんて、どうかしてたわ!ヨシカズってばうっかりさん!(´>ω∂`)
さっきまでのことは忘れて、もう一度寝よう!女の子の体も風邪みたいなもの!もっかい寝ればなおるってば!……
カーン…!!
混濁する思考を強引にとめたのは換気のため開けていた窓からの小気味いい音。元野球部の私が日常的に聞いていた、金属が球を弾く音だった。
何気なく窓の外に目をやる。懐かしいや、軟式の野球ボールだ。小学生時代は見よう見まねで変化球を投げようとしたなぁ…って野球ボール!?
ぼんやりみていた窓の外、気がつけば目の前に軟式ボールが迫っていた。
ヤバいッぶつかる…!!
予測された激痛は、やってこなかった。
ポコム!
「サーセーン、ボール飛んでっちゃったんですけど…って戻ってきた!謝り損だよチッキショー!アホボケクソカス!!」
外ではそんな声が聞こえるが、私はそれどころではなかった。
球が迫り目をつぶる直前、私にはハッキリと見えたのだ。何も無いはずの空中、軟式のボールが虚空にぶつかって歪むのを。
有り得ないが、心当たりがあった。
「『固定』…」
分かりかけてきた。固定とはなにかが。
理解力の鬼、ヨシカたん!
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