JK-JUDGE and KILL-

加糖玄舞(かとうげんまい)

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JK-人生と恐怖-

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前回までのあらすじ!

主人公、ヨシカズ50才独身はおよそ30年勤めた会社にクビを切られてしまう!絶望した彼は翌日勢いのまま自殺!しかし、死後の彼を待っていたのは可愛い可愛い天使風マスコット、てんしくんと、彼(?)から告げられた衝撃の事実!ヨシカズは天国にも地獄にも行けないくらい善人悪人がハッキリしていない、故に、天国に行くためには同じように曖昧な人間たちと殺し合い、勝ち残らなければならないというのだ!JKは人の世で最強の生き物、という世の理をもって、もう一度、現世で女子高生として殺し合うことになってしまったヨシカズの運命とは!






ーーーーーーーーーー

「死にたく…ない」

ヨシカズは苦痛から逃げる手段として自殺を選んだ。なるほど、その時の彼は目の前の障害から逃げることで幸福を得ようとしたのだろう。しかし、結果的に得られたものは死の恐怖へのトラウマ、だけであった。
自殺を図る人間は誰しも直前に考える。幼い頃から聞かされてきた、天国と地獄とは本当にあるのかと。そしてさらに思考を深める。もし今死んで、地獄に堕ちてしまったなら、最悪の場合、今以上の苦しみが、永久に逃れられない形となって降り注ぐのでは無いかと。あの世にはきっと、生死の概念などなく、もう二度と、死んで逃れることなど出来ないだろうから。
ヨシカズは今、その最悪の淵に立たされている。最も、彼の自殺は突発的で、そこまで思案したかどうかは不明だが。
「てん?黙っちゃってどうしたのてん?お腹でも空いたのてん?」
本当に心配しているような表情で、てんしくんは覗いてくる。
「い、いや…」
かろうじて返事はしたものの、続く言葉はない。先刻のおぞましい体験がフラッシュバックするようだった。
「問題ないなら続けるてん!面倒なルールはなし!期間はちょうど明日から1年!1年が過ぎると生き残ってようが、殺した数に応じたランキングによって上下半分を決めるから、急いだ方がいいてんよ!勿論上位に行くのは、我々の仕事に、より協力した人間、つまり殺せば殺すほど、天国への道は近くなるってことてーん!…ってやっぱり聞いてないてんねー!?困るのはあなたてん!」
い、嫌だ…!二度と死にたくない!
「***********てん!*******てん!」
聞こえない…聞こえない!
いや、嫌だッ
「さ、参加しません…出来ません……私はもう、死にたくない…!」
掠れた声で訴える。
と、てんしくんは表情をピクリとも変えずに
「?そんなことは通らないてん?参加しなければ地獄に行くだけてん。あなた方には参加するかではなく戦い方に意識を向けた方がよっぽどいいてん?」
「なっ!?」
「まっ、しばらく過ごせば気も変わるてーん。少なくとも、1年の期間は保証があるんだから問題ないてん?では僕もほかの仕事で忙しいてん。細かいことはこれを読むてん。では、ばいばいてーん。」
「ま、待ってくだ…!」
てんしくんは消えていた。可愛い可愛いてんしくんが残したのは『JKガイドブック』と書かれた分厚い本と、力の入ったカプセルのみだった。


力なく項垂れるヨシカズ。死への恐怖は変わらない。しかしそれよりも、状況の変化に頭がついて行かず、ただただ呆然とするだけだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



日も落ち、辺りは暗くなっている。ヨシカズは相変わらず動かない。目には未だ恐怖を抱いているが、それでも幾分かは落ち着いたようだ。
「JUDGEとKILL…か」
なんて芸のない名前だろうか。明らかにJK(女子高生)から先に考えているだろう。人の生き死にがかかっている儀式の中でふざけるなんていかがなものだろうか。というか、
「何が儀式だよ…全く」
明日から1年間、てんしくん曰く『殺し合う』日々が始まる、と考えても実感は当然湧かない。あるのは漠然とした恐怖だけ。一応、てんしくんが残したガイドブックとやらを読んでみよう。
ふむふむ。なるほど。JKは世界各地にいるだとか日本全国に散らばっている、という訳ではなく、一定の地区毎で皆同じ高校に通っているのか。私立天智女子高等学校。
「しかし、生徒全員が"JK"という訳では無いのか…」
『天智高校は全校生徒600人、内50人が"JK"なんだてん。去年1年間で死んだ曖昧な人間を同じ高校に入れて戦わせるんだてん』
「語尾のオンオフ出来るなら書かずとも良いものを…」
しかし、600人のうち50人なら12人に1人は"JK"がいることになる。少ないようで以外に多い。体が震える。こんなもの12人に1人が、常にお前の命を狙っている、と言われているようなものだ。
「ふぅ…」
昼はあまりの展開の速さに混乱してしまったが、怯えてもどうしようもない。とはいえいつ襲われるか分からないので、気は引きしめて。 
ヨシカズはいつもと変わらない薄っぺらい布団に体を埋めるのであった。
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