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第二章 旅立ちの決意
川の異変
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明らかに機嫌を悪くしたマッドに恐る恐る近づくと、ティミーはマッドの顔を覗き込んだ。
眉間に皺を寄せている。
それなりに怒っている証だった。
「ごめん。少し……言い過ぎちゃった」
「……俺の台詞だろ、そりゃ。ちょいとキツくなっちまったな。悪い」
先に謝られてしまい、申し訳無さそうにティミーを見ると、ティミーは小さく苦笑しニアの実が入った籠を持ち直した。
「ううん、私の方が悪いんだし大丈夫。それより……」
「ん?」
「今日の朝ご飯、キノコライスのバター炒めなんだよねー」
「うう……」
「茸の仕分けもしてもらいたいんだけどなー」
「……分かったよ。その籠持ってやるからよこせ」
キノコライスに反応し、マッドのお腹は大胆な音を鳴らした。
その音の大きさにティミーは思いきり笑うと、マッドは顔を赤くし、拳でコツリとティミーの頭を軽く叩いく。
「笑うんじゃねーよ!」
「ごめ……だって、お腹の音……ぷっ」
「お前……笑いすぎだろうが!」
「だってついさっきまでお腹空いてないって言ってたのにキノコライスって聞いた瞬間に……」
「うっせーな! キノコ好きの何処が悪いんだよ!」
尚も顔を赤くし怒鳴るが、ティミーはそれを軽く流すとニアの実を一つかじり、可笑しそうに苦笑した。
「ごめんってば。取り敢えず、村に戻らない? 今日も晴れるだろうから、布団とか干したいし。スーおばあちゃんの洗剤、特注してあるんだ」
「そうだな。今朝スーばあさんが作ってた洗剤、お前の特注品だったのか」
「マッド、スーおばあちゃんに会ったんだ?」
「朝早く、すれ違いにな」
何度か欠伸を交えながら雑談をしつつ、マッドとティミーは村に向かって歩き出した。
いつの間にか太陽は東の空から全て姿を出し、沢山の木漏れ日が森の中を一層幻想的な雰囲気にする。
キラキラと差し込む木漏れ日に目を細めながら歩いて行くと、近くで水の流れる音が聞こえ、ふと足を止めた。
不思議そうにするマッドの顔を、隣を歩いていたティミーは覗き込む。
「マッド? どうしたの?」
「いや、川ってもう少し先にあったよな?」
「確か南側にあったけど……」
「……おかしいな、川から少し距離は有るのに、水の音が聞こえる」
マッドの言葉に、ティミーは自分の呼吸を小さくすると、川のある方角へ耳をすませた。
──確かに、聴こえる。
しかし、川はここからだと村より距離がある場所に流れている。
それなのに、水の流れる音が聴こえるのは不自然だ。
「本当だ……おかしいね。水の音、聞こえるよ」
「山で雪解けが始まるにはまだ早いよな。少し川の様子見に行かね?」
「そうだね。見に行こ」
マッドの言葉にティミーは頷き、南側の森の奥深くへと歩いて行った。
暫く歩いて行くに連れ、水の音は段々と大きくなっていく。
途中何度か魔物が襲いかかって来たが、マッドは剣で、ティミーは弓で退け、難なく奥へと進んで行った。
村の近くと言えど、森の奥まで足を踏み入れれば魔物は生息している。
ここ数年は、より魔物が凶暴化していると以前村長が話してくれたのをマッドは思い出しながら、剣に付着したものを軽く振り落とした。
「ふう。やっぱ奥地には魔物もそれなりにいるよな」
「うん。もう少しで着くから頑張ろ?」
「頑張ろって、お前な……いちいち荷物置いてから前線に出る俺の気持ちを考えろよ」
「だって、私弓しか扱えないし。やっぱり荷物私が持つよ」
「いや……もう良い。さっさと行くぞ」
眉間に皺を寄せている。
それなりに怒っている証だった。
「ごめん。少し……言い過ぎちゃった」
「……俺の台詞だろ、そりゃ。ちょいとキツくなっちまったな。悪い」
先に謝られてしまい、申し訳無さそうにティミーを見ると、ティミーは小さく苦笑しニアの実が入った籠を持ち直した。
「ううん、私の方が悪いんだし大丈夫。それより……」
「ん?」
「今日の朝ご飯、キノコライスのバター炒めなんだよねー」
「うう……」
「茸の仕分けもしてもらいたいんだけどなー」
「……分かったよ。その籠持ってやるからよこせ」
キノコライスに反応し、マッドのお腹は大胆な音を鳴らした。
その音の大きさにティミーは思いきり笑うと、マッドは顔を赤くし、拳でコツリとティミーの頭を軽く叩いく。
「笑うんじゃねーよ!」
「ごめ……だって、お腹の音……ぷっ」
「お前……笑いすぎだろうが!」
「だってついさっきまでお腹空いてないって言ってたのにキノコライスって聞いた瞬間に……」
「うっせーな! キノコ好きの何処が悪いんだよ!」
尚も顔を赤くし怒鳴るが、ティミーはそれを軽く流すとニアの実を一つかじり、可笑しそうに苦笑した。
「ごめんってば。取り敢えず、村に戻らない? 今日も晴れるだろうから、布団とか干したいし。スーおばあちゃんの洗剤、特注してあるんだ」
「そうだな。今朝スーばあさんが作ってた洗剤、お前の特注品だったのか」
「マッド、スーおばあちゃんに会ったんだ?」
「朝早く、すれ違いにな」
何度か欠伸を交えながら雑談をしつつ、マッドとティミーは村に向かって歩き出した。
いつの間にか太陽は東の空から全て姿を出し、沢山の木漏れ日が森の中を一層幻想的な雰囲気にする。
キラキラと差し込む木漏れ日に目を細めながら歩いて行くと、近くで水の流れる音が聞こえ、ふと足を止めた。
不思議そうにするマッドの顔を、隣を歩いていたティミーは覗き込む。
「マッド? どうしたの?」
「いや、川ってもう少し先にあったよな?」
「確か南側にあったけど……」
「……おかしいな、川から少し距離は有るのに、水の音が聞こえる」
マッドの言葉に、ティミーは自分の呼吸を小さくすると、川のある方角へ耳をすませた。
──確かに、聴こえる。
しかし、川はここからだと村より距離がある場所に流れている。
それなのに、水の流れる音が聴こえるのは不自然だ。
「本当だ……おかしいね。水の音、聞こえるよ」
「山で雪解けが始まるにはまだ早いよな。少し川の様子見に行かね?」
「そうだね。見に行こ」
マッドの言葉にティミーは頷き、南側の森の奥深くへと歩いて行った。
暫く歩いて行くに連れ、水の音は段々と大きくなっていく。
途中何度か魔物が襲いかかって来たが、マッドは剣で、ティミーは弓で退け、難なく奥へと進んで行った。
村の近くと言えど、森の奥まで足を踏み入れれば魔物は生息している。
ここ数年は、より魔物が凶暴化していると以前村長が話してくれたのをマッドは思い出しながら、剣に付着したものを軽く振り落とした。
「ふう。やっぱ奥地には魔物もそれなりにいるよな」
「うん。もう少しで着くから頑張ろ?」
「頑張ろって、お前な……いちいち荷物置いてから前線に出る俺の気持ちを考えろよ」
「だって、私弓しか扱えないし。やっぱり荷物私が持つよ」
「いや……もう良い。さっさと行くぞ」
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