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第99話 感触
しおりを挟む「金子。お前はもう野球やんねんぇの?」
連れの問いかけに金子は
「俺はもういいや。元々柄じゃねぇし」
金子はそう言うと、また上山の方を見た。
上山も金子を見つめていた。
「じゃあ、俺達行くから」
上山はそう言ってその場を去ろうとした。
「上山!」
金子の呼びかけに上山は足を止めた。
オレは一瞬身構えたが、金子が続けて言った言葉は
「頑張れよ」
上山は振り返らずに軽い笑みを浮かべ、手を振った。
「あいつら意外と良い奴らだな」
「あぁ」
「金子もな」
「あぁ」
オレの問いかけに上山は少し笑みを浮かべながら答えた。
金子も出会った頃のあいつとは違って見えた。
今回の一件で、上山も金子も少し変わったように思えた。
「明日、朝練来いよ」
「あぁ」
「さっきの話、忘れてねぇよな」
上山は黙っていた。
「大丈夫だって。オレを信じろよ。
ずっとお前の球を受けてきたオレが言ってるんだ。
間違いなく、お前は活きた球を投げられる」
上山は相変わらず黙っていた。
オレは上山が戻って来てくれたことが嬉しくて、
少し性急に話を進め過ぎてしまったのかもしれない。
でも、オレはどうしてもあの球を受けた感触を信じてみたかった。
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