81 / 102
第81話 誤解
しおりを挟む私は涙が止まりませんでした。
上山先輩があんなことを言うなんて。
先輩を、チームを助けてくれるなんて。
もしかしたら私達は上山先輩のことを誤解していたのかもしれません。
「上山さん・・・。えぐっ。えぐっ。児玉さん・・・。えぐっ。痛てっ」
池崎くんも隣で嗚咽を上げて泣いていました。
「あれ上山じゃん」
「あいつも来てたんだ」
金子先輩の連れの人たちが言っています。
「なんだよ・・・。あいつ」
金子先輩だけ不満そうです。
先輩は相変わらずグローブを何度も叩いていますが、先程までと違って、
緊張の色は無く、気合いが入っているように見えました。
審判に促され、マウンド上で話し合っていた内野手陣が守備位置に散りました。
まだピンチは続いています。
8回表、1アウトランナー1、3塁。
光南学園は明らかにライトを狙っています。
迎えるバッターは5番。左バッターです。
大村くん、松島先輩のバッテリーはアウトコース中心の配球。
初球アウトローに決まってワンストライク。
2球目少し高めに浮いた球にバッターが手を出しましたが、
打球は真後ろへ飛びファウル。
この時のスイングで明らかに強引に引っ張ろうとしているのがわかりました。
続く3球目は低めに外れてボール。そして迎えた4球目。
大村くんは見事にアウトローに投げ込みましたが、バッターが上手く合わせて、
打球はまたしてもライトへ。
「児玉さん!痛てっ!」
私と池崎くんはベンチから身を乗り出し、祈るように先輩を見つめていました。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる