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第55話 嘘だ!
しおりを挟む「どうしたんだよ!」
僕が上山くんの後を追って部室の扉を開けようとすると、
金子くんの怒鳴り声が聞こえてきた。
「何で辞めるんだよ!意味わかんねぇよ!」
「うるせぇ!」
上山くんと金子くんが言い合いをしている。
僕は扉を開け、部室に入った。
上山くんはこちらを向くことなく、着替えをしている。
金子くんは僕を睨み付けて怒鳴った。
「なんだよ!何しに来たんだよ!」
僕は金子くんを無視して上山くんの前に立った。
「本当に良いの?何も辞めることないだろ?」
上山くんは道具やユニフォームを鞄に片付けながら言った。
「松島から何聞いたかしらねぇけど、俺は辞めたくて辞めるんだ。
どうだ。清々しただろ?」
「嘘だ!野球辞めたい奴が、あんなプレイする訳ないだろ!
今日の上山くんのプレイを見てれば、誰だってわかるよ!」
僕は思わず大声を張りあげた。
「あぁん。何を訳わかんねぇこと言ってんだ!」
「うるせぇ!お前は引っ込んでろ!」
金子くんの言葉を遮るように、上山くんが言った。
「本当は野球やりたいんだろ。謝ればきっと、みんな許してくれるよ」
僕がそう言うと、上山くんはロッカーの整理をしながら、少し笑って言った。
「バーカ。お前、どこまでお人好しなんだよ。
あんなことしておいて、許してもらえる訳ねぇだろ」
「そんなことない!許してくれるよ!」
「もう良いんだよ。俺はもうチームにとって邪魔なだけだ。
一度、やっちまったことは取り消せねぇんだよ。
俺はクズだ。最低のクズ野郎だ。
あとはお前と松島で何とかしてくれ。頼んだぞ」
そう言うと、上山くんはロッカーの扉を閉め、部室を出て行った。
「上山くん・・・」
上山くんとすれ違った時、上山くんの目には涙が浮かんでいた。
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