へたくそ

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第45話 野球のことしか

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「ま、松島さん!お疲れ様です!」
池崎くんが慌てた様子で言いました。
さっきの「拉致」発言を聞かれていたのではと焦ったようです。

「松島くん」
先輩がそう言うと、松島先輩は
「お前らいつも遅くまで、ここで練習してるだろ?」
「なぜそれを!」
池崎くんが、また焦った様子で言いました。
「暗い中で練習して、怪我でもしたらどうすんだ?
 それより、朝、グラウンドでやれよ」
「でも・・・」
池崎くんがモジモジしていると、松島先輩は全てをわかっているかのように
「俺も付き合ってやるから」
「良いの!?」
先輩は驚きと喜びが入り混じったように言いました。
「ああ」
そう言うと松島先輩は帰って行きました。

大村くんと池崎くんとも分かれて、私は先輩と二人きりになりました。
先輩は何だか嬉しそうにしています。
「これからどうなっちゃうんですかね?」
私がそう言うと、
「大丈夫だって。松島くんがなんとかしてくれるよ。
 それに上山くんも本当に野球が好きなんだと思う」
先輩はやっぱり嬉しそうにしています。

私は思い切って先輩に聞きました。
「先輩、何か嬉しそうですね?」
「いや、明日、松島くんが朝練付き合ってくれるって言うから」
私は思わず笑ってしまいました。
「先輩って本当に野球のことしか考えていないんですね」
「そんなことないよ。チームのことだって考えてるさ」
「それも、野球のことです。」

私はちょっと複雑な気持ちでした。
でも、そんな先輩だから・・・
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