へたくそ

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第19話 こっち?どっち?

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「僕もこっちだから、行こうか」
先輩は私が指したのと同じ方向を指して言いました。
「はい」
私は心の中で、ホッと胸をなで下しました。

「今日はありがとう」
「いえ。
 なんか無理矢理付いて来ちゃって、
 ご迷惑じゃなかったですか?」
「全然、迷惑じゃないよ。
 2人が来てくれたおかげで
 いつもよりたくさんノック受けられたし、
 ほんと感謝してるよ」
「良かった」
先輩が喜んでくれていることが素直に嬉しかったです。

また交差点に差し掛かったところで先輩が
「町村さんって家どっち?」
私は少し戸惑いながら
「えっと・・・こっちです」
先輩は私が指した方に歩き始めました。
「先輩もこっちですか?」
「いや、違うけど、暗いし送って行くよ」
私は少しあたふたして言いました。
「いえ、一人で大丈夫です」
「遠慮しなくて良いよ。
 練習付き合わせたせいで、遅くなっちゃったし」
「いえ、本当に大丈夫です。失礼します」
私はお辞儀をして、思わず走り出してしまいました。

「町村さん!?」
先輩の呼びかけに振り返ると、
先輩はきょとんとして私を見ていました。
「お疲れ様でした!」
私はお辞儀をして、また走り出しました。
「気を付けて!」
先輩の声が嬉しかった・・・。

私は自分の挙動不審さが、物凄く恥ずかしかったです。
きっと他の人から見たら
怪しい子に思われたかもしれないけど
時々、溢れてくる笑みを抑えられませんでした。
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