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第10話 それぞれの路
しおりを挟む翌日の昼休み、僕は隣のクラスの高坂くんを訪ねた。
「高坂くん、ちょっといいかな」
「おう」
高坂くんは気まずそうにしていた。
「本当に野球部辞めちゃうの?」
「ゴメンな。
でもやっぱり俺はあいつらとは一緒にできないよ。
一度しかない高校生活だし、楽しくやりたいしさ」
「そっか・・・」
「お前は続けるのか?」
「うん」
「そっか・・・」
「もうやるって決めたから。最後までやるよ」
「俺が誘ったから、お前のやる気に火を点けちゃったか」
「うん。まぁね」
「なんかゴメンな」
「全然。むしろ感謝してるよ。
僕はやっぱり野球やりたいから」
「そう言ってくれると、まだ救われるよ」
高坂くんが少し笑った。
「俺さぁ、昨日、ハンドボール部の見学に行ったんだ。
結構、楽しいぜ。先輩からもセンスあるって言われたし」
「そうなんだ。
高坂くん運動神経良いから、
どんなスポーツでもできそうだもんね」
「そんなことはないけどさ」
少しの沈黙の後、高坂くんが口を開いた。
「もし辛くなったら、お前も無理すんなよ。
好きだけじゃ上手くいかないことだってあるんだからさ。
俺にできることがあれば、何でも言ってくれよな」
「うん。ありがとう」
こうして高坂くんは野球部を辞め、
ハンドボール部に入部した。
お互いに少し気まずさは残ったけど
僕にとっては、いつまでも大事なチームメイトだ。
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