216 / 317
久し振りのダンジョンチャレンジ1
しおりを挟む
魔法学院の新年度。
リリス達は進級し、新たに新入生が入学してきた。
この時期の一連の行事にはリリスも既に慣れてしまっている。
だがそれでもアクシデントはあるもので、幾つかの小さなアクシデントはあった。
それを何とか処理して行事を進めたのは生徒会の尽力の賜物である。
特に新しい生徒会長になったルイーズがテキパキと処理を進め、大事に至らなかったのは僥倖であった。
ルイーズ先輩って、意外に処理能力が高いわね。
そう思ったのはリリスだけではなかったようだ。
数日間のオリエンテーションの後、新入生達の通常の授業が始まる。
それに対応していた教師達も普段の授業の態勢に入っていった。
そして迎えた生徒会の新年度の顔合わせの日。
新たに生徒会に加わった新入生のクラス委員を見て、リリスはアッと声をあげてしまった。
怪訝そうにリリスを見るルイーズ達に照れ笑いをして誤魔化したものの、リリスの驚きは止まらない。
新入生のクラス委員が、ウィンディによく似た明るい少女だったからだ。
しかも彼女は、
「新入生のクラスのクラス委員になりました、ウィンディ・ミア・エルブライトです。よろしくお願いします。」
そう言って笑顔で席に着いた。
名前までウィンディだなんて・・・・・。
そんな事ってあるの?
驚きを心の中に秘めつつ、リリスはその後の会話に加わった。
「ウィンディは魔法は得意なの?」
興味津々に尋ねるエリスに、ウィンディは小さく頷いた。
「それなりに出来ると思います。私の魔法の属性は風と水ですが、主に得意なのは風魔法ですね。」
はきはきと答えるウィンディにエリスも好感を持った様子だ。
「そう言えばエルブライト領って何処でしたっけ?」
リリスの言葉にルイーズが口を開いた。
「確か・・・北の山岳地帯だったわよね。たくさんの風車が立ち並んだ風の谷が有名だったと覚えているわ。」
風の谷?
アニメを思い出しちゃうわね。
リリスの思いを知る由もなく、ウィンディは嬉しそうな表情を見せた。
「そうなんですよぉ。エルブライト領は美しい山並みとたくさんの風車が有名なんです。」
ウィンディはそう答えると、その場にいた全員に小さな箱を配った。
「これもエルブライト領の特産物です。」
そう言われて箱を開くとガラス製の小さな風鈴が入っていた。
それを取り出すと風鈴はチリンチリンと涼し気な音を奏でた。
その音色と共に僅かながら爽やかな波動が伝わってくる。
どうやら風鈴の頂点の部分に小さな魔石が組み込まれているようだ。
それが癒しの波動を付与しているのだろう。
ヒールに似た波動にリリスも心地良く感じ、ゆったりとした気分になった。
でも気になるわね。
礼を言いながら試しにウィンディを鑑定してみた。
**************
ウィンディ・ミア・エルブライト
種族:人族 レベル13
年齢:13
体力:800
魔力:1500
属性:風・水
魔法:エアカッター レベル3++(高度補正有)
エアストーム レベル2+ (高度補正有)
ウォーターカッター レベル1
ウォータースプラッシュ レベル1
スキル:探知 レベル1
毒耐性 レベル1
風神の加護1(機能制限有)
風神の加護2(鑑定不能)(機能停止中)
風神の加護3(鑑定不能)(機能停止中)
**************
う~ん。
やはり謎の多い少女ね。
この風神の加護って何なの?
でも自分から言っていたように、風魔法はかなり得意のようだわ。
「そう言えばもう直ぐダンジョンチャレンジがあるけど、新入生は心構えが出来ているの?」
嬉しそうに風鈴を振り回しているエリスの言葉に、ウィンディはう~んと唸って口を開いた。
「私は大丈夫なんですけど、私のクラスメイトは魔法に長けている子があまり居なくて・・・・・」
「でも剣術に長けた男子が数人いるので頼りにはなりますね。それにシトのダンジョンの様子が最近変わってきて、出没する魔物も低レベルの魔物に限られているそうです。しかも出没する魔物の個体数まで少なくなったと先生が言っていましたね。」
ふうん。
そうなの?
リリスはウィンディの言葉に疑問を持った。
シトのダンジョンはタミアがダンジョンマスターだったはずだ。
あまり力を入れなくなってしまったのだろうか?
もしかして飽きた?
リリスはそう思いながらしばらく談笑していた。
数日後。
リリスは新入生の担任になったロイドから職員室に呼ばれた。
何だろうと思って職員室に行くと、その場には非常勤講師のジークも同席していた。
リリスの顔を見てニヤニヤしている。
ジーク先生が居る!
嫌な予感がするわね。
勿論その感情を顔には出さず、リリスは笑顔で会釈をしてロイドに用件を尋ねた。
「実はリリス君に頼みがあるんだけどね。」
「新入生のクラス委員のウィンディと一緒に、ダンジョンチャレンジに同行して貰いたいんだよ。」
ダンジョンチャレンジに?
「ウィンディと二人でですか?」
「いや、もう一人、新入生が同行するんだが、この子が魔法や剣術が全く駄目なんだ。でも上級貴族の子女だからダンジョンチャレンジには参加するのが原則でね。念のために君に同行して貰おうと言うジーク先生の提案で・・・・・」
そこまで聞いてリリスは勘付いた。
これはジークの画策だ。
シトのダンジョンの様子を探らせようとしているに違いない。
ダンジョンメイトの自分を利用して、シトのダンジョンに刺激を与えるつもりなのだろう。
「分かりました。」
リリスはそう言うと、ジークの顔をちらっと見た。
「でも、ジーク先生の願われるような結果が出るか否かは分かりませんけどね。」
リリスの言葉にジークはピクッと眉を動かしたが、真顔に戻ってうんうんと頷いた。
どうやら図星のようね。
リリスはそう思いながらも平静を保ちつつ職員室を出た。
その日の昼休み。
学舎の傍の公園スペースでベンチに座ってくつろいでいると、そのベンチの縁に小さな小鳥が飛んで来た。
青い身体に白いストライプの入ったその姿は、紛れもなくレイチェルの使い魔だ。
だが亜神としての気配を消しているようで、リリスですら僅かにしかその気配を感じない。
これはレイチェルの気配りなのだろうか?
(お邪魔だったかしら?)
リリスの脳裏にレイチェルからの念話が届いて来た。
(邪魔じゃ無いわよ。それにしても亜神の気配を感じさせないわね。)
リリスの言葉に小鳥はチチチッと鳴いた。
(こんなところで正体を現わしたら大騒動になるわよね。)
(そうね。それでどうしたの? 私に用件でもあるの?)
(ええ。リリスに話をしておいて欲しいって、タミアから頼まれたのよ。シトのダンジョンの件でね。)
レイチェルの念話にリリスはえっ!と驚いて小鳥の顔を見た。
2時間ほど前にシトのダンジョンの事が職員室で話題になっていたからだ。
(それでどう言う話なの?)
(まあ、簡単に言うとタミアがダンジョンマスターに飽きたって事なのよ。)
う~ん。
思った通りだわ。
あの過激な性格のタミアからすれば、単調なダンジョンマスターなどすぐに飽きても不思議じゃ無いけどねえ。
むしろ今まで継続していた事が不思議なくらいよ。
(それでね。私にダンジョンマスターを代わってくれって言うのよね。)
ここまで聞いてリリスは、最近のシトのダンジョンの魔物が少なくなった理由を理解した。
タミアがダンジョンマスターを放棄して、その上あの怠け者のダンジョンコアだけで運営しているとなれば、ダンジョンとして機能していなくても不思議ではない。
リリスはここぞとばかりにシトのダンジョンのあるべき状態を説明した。
それを聞いてウィンディも了解したようだ。
(要するに、学生用の初歩のダンジョンだから、難易度を上げないでくれって事ね。)
(そう。そう言う事なのよ。)
小鳥はふんふんと頷く動作をした。
(でも、タミアから聞いたけど、リリスってトップクラスのダンジョンメイトなんでしょ?)
(そんな事でトップクラスなんて言われても嬉しくないけどね。)
(そのリリスの影響でダンジョンコアが異常動作をしても、片手間のダンジョンマスターの私には制御出来ないわよ。)
う~ん。
そこまでウィンディに最初から要求するのも無理かも・・・・・。
(まあ、それはそれで良いわよ。それを期待している輩も居るからね。)
そう答えながらリリスはジークを脳裏に浮かべていた。
それにしても意外なのはレイチェルの面倒見の良さだ。
同じ風の亜神の降臨の為の一番目のキーであるウィンディと比べると、その性格が全く違う。
あのウィンディのような風来坊と言った印象が全くない。
まるで風が凪いでいるかのような佇まいのレイチェルである。
「ねえ、レイチェル。タミアの後始末って嫌じゃないの?」
リリスは率直に聞いてみた。
「まあ、タミアはあんなものだからね。仕方が無いのよ。」
レイチェルの大人の対応である。
用件を済ませた小鳥はベンチから飛び立ち、上空に消えていった。
リリスはその様子を見ながら、午後の授業の準備の為に学舎に向かった。
そして迎えたダンジョンチャレンジの日。
リリスは学舎の地下の訓練場に足を運んだ。
レザーアーマーにガントレット、レザーブーツの着用は何時もの通りである。
訓練場の片隅には、同じような装備のウィンディとロイド、その傍に小柄な少女が居た。
「リリス先輩、申し訳ありません。同行させちゃって・・・・・」
そう言いながら頭を下げるウィンディに、リリスは手を横に振り笑顔を向けた。
「良いのよ。気にしないで。」
同行する少女が上級貴族の子女だと聞いていたので、リリスは先ず自分からウィンディの傍に居たその小柄な少女に挨拶をした。
「4年生のリリスです。よろしくね。」
少女ははにかみながら口を開いた。
「新入生のリリアです。今日はよろしくお願いします。」
気弱そうな、物腰の柔らかい少女だ。
それでも一応上級貴族の子女なのだろう。
言葉の端々に気品が感じられる。
とりあえずリリスはリリアを鑑定してみた。
**************
リリア・エル・ウィンドフォース
種族:人族 レベル13
年齢:13
体力:500
魔力:800
属性:風・火
魔法:エアカッター レベル1
ファイヤーボール レベル1
スキル:探知 レベル2
毒耐性 レベル2
投擲 レベル2
(秘匿領域:解析済み)
(火魔法の足枷)
(業火の化身)
**************
うっ!
これって鑑定しちゃダメなパターンなのでは・・・・・。
ステータスに秘匿領域で隠された称号があるのね。
これって私の鑑定スキルではバレちゃっているけど、普通の人には鑑定出来ないだろうなあ。
それにしても業火の化身って何・・・・・。
この子も色々と訳ありな感じねえ。
ステータスに関してはとりあえず黙っておこう。
リリスは作り笑いをしてロイドに挨拶をした。
「ロイド先生。準備は出来ていますよ。さあ、シトのダンジョンに行きましょう。」
リリスの言葉にうんと頷き、ロイドは転移の魔石を発動させたのだった。
リリス達は進級し、新たに新入生が入学してきた。
この時期の一連の行事にはリリスも既に慣れてしまっている。
だがそれでもアクシデントはあるもので、幾つかの小さなアクシデントはあった。
それを何とか処理して行事を進めたのは生徒会の尽力の賜物である。
特に新しい生徒会長になったルイーズがテキパキと処理を進め、大事に至らなかったのは僥倖であった。
ルイーズ先輩って、意外に処理能力が高いわね。
そう思ったのはリリスだけではなかったようだ。
数日間のオリエンテーションの後、新入生達の通常の授業が始まる。
それに対応していた教師達も普段の授業の態勢に入っていった。
そして迎えた生徒会の新年度の顔合わせの日。
新たに生徒会に加わった新入生のクラス委員を見て、リリスはアッと声をあげてしまった。
怪訝そうにリリスを見るルイーズ達に照れ笑いをして誤魔化したものの、リリスの驚きは止まらない。
新入生のクラス委員が、ウィンディによく似た明るい少女だったからだ。
しかも彼女は、
「新入生のクラスのクラス委員になりました、ウィンディ・ミア・エルブライトです。よろしくお願いします。」
そう言って笑顔で席に着いた。
名前までウィンディだなんて・・・・・。
そんな事ってあるの?
驚きを心の中に秘めつつ、リリスはその後の会話に加わった。
「ウィンディは魔法は得意なの?」
興味津々に尋ねるエリスに、ウィンディは小さく頷いた。
「それなりに出来ると思います。私の魔法の属性は風と水ですが、主に得意なのは風魔法ですね。」
はきはきと答えるウィンディにエリスも好感を持った様子だ。
「そう言えばエルブライト領って何処でしたっけ?」
リリスの言葉にルイーズが口を開いた。
「確か・・・北の山岳地帯だったわよね。たくさんの風車が立ち並んだ風の谷が有名だったと覚えているわ。」
風の谷?
アニメを思い出しちゃうわね。
リリスの思いを知る由もなく、ウィンディは嬉しそうな表情を見せた。
「そうなんですよぉ。エルブライト領は美しい山並みとたくさんの風車が有名なんです。」
ウィンディはそう答えると、その場にいた全員に小さな箱を配った。
「これもエルブライト領の特産物です。」
そう言われて箱を開くとガラス製の小さな風鈴が入っていた。
それを取り出すと風鈴はチリンチリンと涼し気な音を奏でた。
その音色と共に僅かながら爽やかな波動が伝わってくる。
どうやら風鈴の頂点の部分に小さな魔石が組み込まれているようだ。
それが癒しの波動を付与しているのだろう。
ヒールに似た波動にリリスも心地良く感じ、ゆったりとした気分になった。
でも気になるわね。
礼を言いながら試しにウィンディを鑑定してみた。
**************
ウィンディ・ミア・エルブライト
種族:人族 レベル13
年齢:13
体力:800
魔力:1500
属性:風・水
魔法:エアカッター レベル3++(高度補正有)
エアストーム レベル2+ (高度補正有)
ウォーターカッター レベル1
ウォータースプラッシュ レベル1
スキル:探知 レベル1
毒耐性 レベル1
風神の加護1(機能制限有)
風神の加護2(鑑定不能)(機能停止中)
風神の加護3(鑑定不能)(機能停止中)
**************
う~ん。
やはり謎の多い少女ね。
この風神の加護って何なの?
でも自分から言っていたように、風魔法はかなり得意のようだわ。
「そう言えばもう直ぐダンジョンチャレンジがあるけど、新入生は心構えが出来ているの?」
嬉しそうに風鈴を振り回しているエリスの言葉に、ウィンディはう~んと唸って口を開いた。
「私は大丈夫なんですけど、私のクラスメイトは魔法に長けている子があまり居なくて・・・・・」
「でも剣術に長けた男子が数人いるので頼りにはなりますね。それにシトのダンジョンの様子が最近変わってきて、出没する魔物も低レベルの魔物に限られているそうです。しかも出没する魔物の個体数まで少なくなったと先生が言っていましたね。」
ふうん。
そうなの?
リリスはウィンディの言葉に疑問を持った。
シトのダンジョンはタミアがダンジョンマスターだったはずだ。
あまり力を入れなくなってしまったのだろうか?
もしかして飽きた?
リリスはそう思いながらしばらく談笑していた。
数日後。
リリスは新入生の担任になったロイドから職員室に呼ばれた。
何だろうと思って職員室に行くと、その場には非常勤講師のジークも同席していた。
リリスの顔を見てニヤニヤしている。
ジーク先生が居る!
嫌な予感がするわね。
勿論その感情を顔には出さず、リリスは笑顔で会釈をしてロイドに用件を尋ねた。
「実はリリス君に頼みがあるんだけどね。」
「新入生のクラス委員のウィンディと一緒に、ダンジョンチャレンジに同行して貰いたいんだよ。」
ダンジョンチャレンジに?
「ウィンディと二人でですか?」
「いや、もう一人、新入生が同行するんだが、この子が魔法や剣術が全く駄目なんだ。でも上級貴族の子女だからダンジョンチャレンジには参加するのが原則でね。念のために君に同行して貰おうと言うジーク先生の提案で・・・・・」
そこまで聞いてリリスは勘付いた。
これはジークの画策だ。
シトのダンジョンの様子を探らせようとしているに違いない。
ダンジョンメイトの自分を利用して、シトのダンジョンに刺激を与えるつもりなのだろう。
「分かりました。」
リリスはそう言うと、ジークの顔をちらっと見た。
「でも、ジーク先生の願われるような結果が出るか否かは分かりませんけどね。」
リリスの言葉にジークはピクッと眉を動かしたが、真顔に戻ってうんうんと頷いた。
どうやら図星のようね。
リリスはそう思いながらも平静を保ちつつ職員室を出た。
その日の昼休み。
学舎の傍の公園スペースでベンチに座ってくつろいでいると、そのベンチの縁に小さな小鳥が飛んで来た。
青い身体に白いストライプの入ったその姿は、紛れもなくレイチェルの使い魔だ。
だが亜神としての気配を消しているようで、リリスですら僅かにしかその気配を感じない。
これはレイチェルの気配りなのだろうか?
(お邪魔だったかしら?)
リリスの脳裏にレイチェルからの念話が届いて来た。
(邪魔じゃ無いわよ。それにしても亜神の気配を感じさせないわね。)
リリスの言葉に小鳥はチチチッと鳴いた。
(こんなところで正体を現わしたら大騒動になるわよね。)
(そうね。それでどうしたの? 私に用件でもあるの?)
(ええ。リリスに話をしておいて欲しいって、タミアから頼まれたのよ。シトのダンジョンの件でね。)
レイチェルの念話にリリスはえっ!と驚いて小鳥の顔を見た。
2時間ほど前にシトのダンジョンの事が職員室で話題になっていたからだ。
(それでどう言う話なの?)
(まあ、簡単に言うとタミアがダンジョンマスターに飽きたって事なのよ。)
う~ん。
思った通りだわ。
あの過激な性格のタミアからすれば、単調なダンジョンマスターなどすぐに飽きても不思議じゃ無いけどねえ。
むしろ今まで継続していた事が不思議なくらいよ。
(それでね。私にダンジョンマスターを代わってくれって言うのよね。)
ここまで聞いてリリスは、最近のシトのダンジョンの魔物が少なくなった理由を理解した。
タミアがダンジョンマスターを放棄して、その上あの怠け者のダンジョンコアだけで運営しているとなれば、ダンジョンとして機能していなくても不思議ではない。
リリスはここぞとばかりにシトのダンジョンのあるべき状態を説明した。
それを聞いてウィンディも了解したようだ。
(要するに、学生用の初歩のダンジョンだから、難易度を上げないでくれって事ね。)
(そう。そう言う事なのよ。)
小鳥はふんふんと頷く動作をした。
(でも、タミアから聞いたけど、リリスってトップクラスのダンジョンメイトなんでしょ?)
(そんな事でトップクラスなんて言われても嬉しくないけどね。)
(そのリリスの影響でダンジョンコアが異常動作をしても、片手間のダンジョンマスターの私には制御出来ないわよ。)
う~ん。
そこまでウィンディに最初から要求するのも無理かも・・・・・。
(まあ、それはそれで良いわよ。それを期待している輩も居るからね。)
そう答えながらリリスはジークを脳裏に浮かべていた。
それにしても意外なのはレイチェルの面倒見の良さだ。
同じ風の亜神の降臨の為の一番目のキーであるウィンディと比べると、その性格が全く違う。
あのウィンディのような風来坊と言った印象が全くない。
まるで風が凪いでいるかのような佇まいのレイチェルである。
「ねえ、レイチェル。タミアの後始末って嫌じゃないの?」
リリスは率直に聞いてみた。
「まあ、タミアはあんなものだからね。仕方が無いのよ。」
レイチェルの大人の対応である。
用件を済ませた小鳥はベンチから飛び立ち、上空に消えていった。
リリスはその様子を見ながら、午後の授業の準備の為に学舎に向かった。
そして迎えたダンジョンチャレンジの日。
リリスは学舎の地下の訓練場に足を運んだ。
レザーアーマーにガントレット、レザーブーツの着用は何時もの通りである。
訓練場の片隅には、同じような装備のウィンディとロイド、その傍に小柄な少女が居た。
「リリス先輩、申し訳ありません。同行させちゃって・・・・・」
そう言いながら頭を下げるウィンディに、リリスは手を横に振り笑顔を向けた。
「良いのよ。気にしないで。」
同行する少女が上級貴族の子女だと聞いていたので、リリスは先ず自分からウィンディの傍に居たその小柄な少女に挨拶をした。
「4年生のリリスです。よろしくね。」
少女ははにかみながら口を開いた。
「新入生のリリアです。今日はよろしくお願いします。」
気弱そうな、物腰の柔らかい少女だ。
それでも一応上級貴族の子女なのだろう。
言葉の端々に気品が感じられる。
とりあえずリリスはリリアを鑑定してみた。
**************
リリア・エル・ウィンドフォース
種族:人族 レベル13
年齢:13
体力:500
魔力:800
属性:風・火
魔法:エアカッター レベル1
ファイヤーボール レベル1
スキル:探知 レベル2
毒耐性 レベル2
投擲 レベル2
(秘匿領域:解析済み)
(火魔法の足枷)
(業火の化身)
**************
うっ!
これって鑑定しちゃダメなパターンなのでは・・・・・。
ステータスに秘匿領域で隠された称号があるのね。
これって私の鑑定スキルではバレちゃっているけど、普通の人には鑑定出来ないだろうなあ。
それにしても業火の化身って何・・・・・。
この子も色々と訳ありな感じねえ。
ステータスに関してはとりあえず黙っておこう。
リリスは作り笑いをしてロイドに挨拶をした。
「ロイド先生。準備は出来ていますよ。さあ、シトのダンジョンに行きましょう。」
リリスの言葉にうんと頷き、ロイドは転移の魔石を発動させたのだった。
10
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる