落ちこぼれ子女の奮闘記

木島廉

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召喚者の痕跡6

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直径10mほどの半円球のシールド。

ユリアスが造り上げた開口部から慎重に中に入ると、その中央に赤い人影とそれを取り巻く金色の大きなリングが目に入った。
だがそのリングから幾つもの剣がその中心に向けて設置され、その剣先が赤い人影を貫いている。

まるで処刑されているようだ。

その状況を目にして、リリス達も声が出ない。

だがその赤い人影から低い男性の声が聞こえて来た。

「来てくれたのだな、サラ。」

サラは名前を呼ばれてビクッとした。

「私・・・お目に掛るのは初めてだと思うのですが・・・」

サラの言葉に赤い人影はふふふと笑った。

「儂を知らないのも当然だ。生きていた時代が違うからな。」

「だが、儂はお前の直系の先祖だ。お前の魔力の波動や、代々受け継いできたスキルを見れば分かる。」

サラは困惑しながらも聞き返した。

「先祖って・・・マクロード家のご先祖ですか?」

「マクロードか。懐かしい名だ。マクロードはそもそも召喚術に長けた一族の呼び名だったのだよ。」

そう言いながら赤い人影はガーゴイルに話し掛けた。

「そこに居るガーゴイルは何処かのリッチの使い魔だな。気配で分かるぞ。」

「可能であれば、儂の身の周りにまだ薄皮のように纏わりついている亜空間シールドを、今すぐ取り除いてくれ。この重ね掛けされた強固なシールドに穴を開けた貴殿なら出来るはずだ。」

ガーゴイルはうむと頷き、魔力を集中させて赤い人影の周囲に放った。
人影の赤い色が徐々に消え、その実体が姿を現わしていく。

そこに現れたのはローブを纏ったリッチだった。

だがそのリッチを取り巻くリングからの剣先は、その身体を貫いたままの状態だ。
身動きの取れる状態ではない。

「感謝するぞ。儂の名はラダムと言う。元々は人族として召喚術を極め、大陸各地の諸国から招請を受ける事も度々だった。」

そう言う出自の人だったのね。

リリス達はそれぞれの名を名乗り、挨拶を交わした。

「リリス。お前達をここに呼び寄せた魔道具を見せてくれ。」

リリスは言われるがままに小さな鍵をラダムに見せた。
ラダムはその目から魔力を放ち、その鍵を精査し始めた。

「うむ。やはりこれはエイヴィスの用意したもののようだ。それにしても・・・・・」

ラダムは一呼吸、間を置いた。

「それにしてもエイヴィスは得体の知れない奴だ。まあ、ダークアーミンと言う種族そのものが、得体の知れないところがあるからなあ。」

「この魔道具を発動させた途端に、儂の脳裏にリリスとサラの個人情報が浮かび上がったよ。そう言う仕組みなのだろう。それで即座にサラが儂の直系の子孫だと分かったのだ。」

ここまでの話を聞いて、ガーゴイルがう~んと唸った。

「そこまでしてリリスやサラを呼び寄せたのは何故だ?」

「うむ。それはあれのせいだろう。あれにお前達を引き合わせたかったのだろうな。」

そう言いながらラダムは目で自分の斜め後方を示した。

そこには何もなかったのだが、リリス達がそこに意識を向けると、長さ1mほどの金色の楕円形の物体が浮かんでいた。
その金色の物体の中には樹の様なものが見える。

なんだか違和感を感じるわねえ。

ここにあってはならないようなものを見ている気がする。
そう感じてリリスはそれをじっと見つめた。
するとその物体が少しぶるっと震えたように感じた。

「これは・・・・・この世界のものではないな。」

ガーゴイルの言葉にラダムはうんうんと頷いた。

「ユリアス殿の見立ての通りだ。これはこの世界のものではない。間違ってこの世界に呼び寄せてしまったのだよ。」

「事の発端はビストリア公国に招請された際の大規模な召喚だった。勇者を複数召喚して欲しいと願われた儂は、数名の弟子を交えて召喚用の魔方陣を共有しながら、補佐の祭司を30名参加させ、特殊な魔道具を駆使した大規模な召喚を行なったのだ。」

「あまりに大規模なものだったので、危険を回避するための措置として、大陸から離れたレイブン諸島で行なう事にしたほどだ。」

うっ!
ビストリア公国って・・・マキちゃんを召喚した国だ。
召喚した勇者を傭兵として他国に売り飛ばすような、悪質な国だったわよね。

「それでもその際に事故が起きてしまった。時空に大きな歪みが生じ、その場にいたほとんどの者が命を失ったほどだ。」

「時空が重なり合ってしまったのか、大勢の人と共に住居や穀物まで転移させてしまった。」

ああ、それがキリルさんのご先祖達なのね。

「レイブン諸島にその転移してきた人達の子孫が、今もそこで暮らしていますよ。王家からの依頼で、その土地の出身の商人と会いましたので。」

リリスの言葉にラダムはほう!と声をあげた。
だが直ぐにその語調が暗くなった。

「それだけならまだ良かったのだ。だが時空の歪みが他の異世界にも同時に繋がってしまった。それもその世界の根幹部に・・・」

ラダムはそう言うと再び、斜め背後の金色の物体に視線を向けた。

「それがあの物体なのだ。ユリアス殿、あの物体を精査して何か感じないか?」

ラダムの言葉を受けて、ガーゴイルがパタパタと羽ばたきながら金色の物体に近付いた。
魔力を放ちながらしばらく精査して、ガーゴイルは首を傾げた。

「何だろうか? 不思議な波動を感じるぞ。」

「まるで細胞に直接働き掛けてくるような波動だ。」

ガーゴイルの言葉にラダムはうんうんと頷いた。

「ユリアス殿の見立ては正しい。そいつは休眠中のようだが、それでもそう言う波動を放っている。」

「伝説の存在とでも言えば良いのか。儂もこれがそうだと断定は出来ないのだが・・・・・」

ラダムは少し間を置いて話を続けた。

「ユリアス殿は世界樹と言うものをご存じか?」

「これが・・・か?」

ガーゴイルは驚いて聞き返した。

「儂らの世界には存在しないと思っていた。伝説か作り話の類の物だと思っておった。だが・・・」

「これを見ると、おそらくはその類の物、その幼体、否、苗と言った方が良いのかも知れん。そう言うものではないかと思うのだ。」

ラダムの言葉を聞きながら、リリスとサラも金色の物体をじっと見つめた。
確かに内部に樹の苗のようなものが見える。

「でもそんなものを異世界から持ってきたら、その元の世界では大事件ですよね。」

サラの言葉にラダムはうむと唸った。

「その通りだよ、サラ。その世界の管理者が混乱しておるかも知れんな。だが返しようが無いのだ。どこの世界から持ち出してきたものか分からない上に、返す方法すら分からないのだからな。」

「それ故に、この場に儂と共に既に1000年間放置されたままだ。」

ラダムはそう言うと少し情けないような表情を見せた。髑髏なのでそう言う風に見えただけなのかも知れないが。

「そう言えばラダム殿はどうしてそんな状態になっているのだ? もしかして処罰・・・なのか?」

ガーゴイルの言葉にラダムはふうと深くため息をついた。

「まあ、その様なものだ。しばらく頭を冷やしておけと言う事なのだろう。エイヴィスとは別の超越者によってこの状態にされてしまったよ。」

「しかもリッチ化まで施されてしまった。永久に囚われていろと言う事なのだろうな。」

う~ん。
それはあまりにも残酷な処罰だわねえ。
事故はあくまでも事故だと思うけどなあ。

リリスはそう思いながら、宙に浮かぶ金色の物体を見つめた。

これが世界樹の苗?
世界の中心にそびえる樹?
しかもその世界の生命の進化に方向性と影響を与えるの?
どう考えても伝説の存在よねえ。

あれこれと思いを巡らすリリスにラダムが話し掛けた。

「リリス。君の魔力をその物体に注いで見てくれ。そいつは私の魔力では活性化しないが、君の特殊な魔力でなら活性化するのではないか?」

「おそらくエイヴィスが画策しているのはそれではないかと、儂は思うのだ。」

ラダムの言葉にリリスは疑問を持った。

「そんな事をして良いのですか? それに何の為に?」

リリスの言葉を聞いてガーゴイルが口を挟んだ。

「それはこの物体の持ち主に気付かせる為ではないかな?」

「人ごみの中で子供が迷子になっても、親ならその子の泣き声でその所在が分かるだろうからな。」

う~ん。
そうなのかなあ?

半信半疑でリリスは宙に浮かぶ金色の物体に近付いた。傍で見ると、確かにその内部に樹木の苗のようなものが見える。
リリスは両手をその苗に向け、自分の魔力を少し注いでみた。

その途端に苗の輪郭がくっきりと浮かび上がり、仄かに光りを放ち始めた。
その様子を覗き込もうとしたその時、苗から数本の糸が伸びて来て、リリスの両手に絡みついてしまった。
驚いて振り払おうとしたが、その糸はまるで蜘蛛の糸のように絡みついて離れない。
しかもその状態でリリスの魔力をグッと吸い上げ始めた。

「嫌だ!魔力が吸われる!」

そう叫んだリリスの言葉に、ガーゴイルはハハハと笑いながら口を開いた。

「そんなものは遮断すれば良いではないか。気を遣ってやる必要はないぞ。」

だが、リリスの表情は真剣だ。

「遮断出来ないんです! それに吸い上げられる魔力の量が半端じゃなくって・・・」

リリスの額に脂汗が滲んでいるのを見て、尋常ではないと気付いたガーゴイルは、闇魔法のシールドを発動させてリリスに重ね掛けした。
それによって魔力を吸い上げていた糸が弾き飛ばされ、リリスはようやく解放された。

ハアハアと荒い息遣いをしながら、リリスはその場に座り込んでしまった。
サラが心配してリリスに駆け寄り、心配そうにその背中を擦って寄り添った。

「一気に半分以上の魔力を吸われちゃったわ。」

リリスの言葉にラダムも心配そうな視線を向けた。そのラダムやサラに行き場を失った細い糸が絡みついた。

「キャアッ!」

サラの悲鳴が響き渡る。

だが、苗から伸びる細い糸は直ぐラダムやサラの身体から離れて、苗の中に戻ってしまった。

「どうやら儂らの魔力は不味いと判断したようだな。」

ラダムはそう言いながら忌々しそうに樹の苗を見つめた。
苗は細い糸を全て収納すると仄かに発光し始め、それを覆う金色の容器ごと、縦横に大きく伸び始めた。
リリスの魔力を養分にしたのだろうか。
程なく金色の物体は縦3mほどに伸び、横も1mほどに広がった。
勿論内部の樹もそれにつれて大きくなっている。

更にその樹から得体の知れない超音波が放たれ始めた。

リリスは魔装を発動させているのでそれに直ぐ気が付いた。
ユリアスやラダムも気が付いたのだが、サラは気が付いていないようだ。
普通の人族には感知出来ないものなのだろう。

「ラダム殿の予想通りだな。樹が救難信号を放ち始めたように感じるぞ。」

ガーゴイルの言葉にラダムもうむと頷き、その様子を見続けた。
樹はその超音波を放ち続けると共に、その枝の先に小さな実が一つ現われた。
その小さな実が枝から弾け飛ぶように落ち、金色の容器の外に飛び出した。

「離れろ!」

ラダムの警告に伴って、リリス達も数歩後退した。

小さな実は地面に落ちると形を変え、徐々に人の形に成っていく。
程なくリリス達の目の前に、小さな幼女が現われた。
その背丈は50cmほどだろうか。
肌は緑色でその髪は細かい木の葉のようにも見える。

この外形は・・・・・ドライアド?

幼女はリリスを見つけると、その傍に近付き始めた。
その行動にリリスも警戒して更に数歩引き下がった。

「ごめんなさい。もう少し魔力を分けて・・・」

小さな声で懇願する幼女。
その仕草や表情に敵意は感じないのだが・・・。

「あなたは何者なの?」

リリスの問い掛けに幼女は立ち止まった。

「私はこの樹のお世話をするドライアド。あなたの魔力でようやく生み出されたの。」

「でも樹が自分の居場所を伝える為には、もう少し成長しないと無理なんです。」

「勿論あなた達に危害は及びません。」

う~ん。
信用して良いのかしら?

思い惑うリリスにラダムが声を掛けた。

「ここまで来たら、やってみるしかないと思うぞ。」

何となく無責任ね。
そう思いながらもリリスは渋々樹の前に進み、両手から魔力を放ち始めた。
それに応じて樹は更に成長し、更に50cmほど大きく伸びた。

「ありがとう。それで充分です。樹の傍から離れてください。」

ドライアドの言葉に応じてリリスが樹の傍から離れると、ドライアドは樹の傍に近付き、金色の容器の内部に消えていった。

それと同時に得体の知れない超音波が複数放たれ始めた。
それは以前よりも強く、様々な波長に変化しながら放たれているようだ。

しばらくすると、樹の周囲の空間が数か所歪み始めた。
背後の輪郭が歪み、陽炎のようにゆらゆらと蠢いている。

「何事だ! 時空を歪めておるのか!」

ラダムの叫び声が響き渡った。

「どうやら異世界にまで救難信号を送っているようだな。」

ガーゴイルの言葉にリリスは唖然とした。

「そんな事が出来るんですか?」

「儂の憶測だが、多分そうだと思うぞ。」

ガーゴイルがそう言った矢先、地面がゴゴゴゴゴッと音を立てて揺れ始め、ピリピリと空気も振動し始めた。

「時空の歪みが大きくなっておる! その向こうから何か来るぞ!」

膨大な魔力の気配が近付いてくる。
それはリリスが知る亜神達とはまた異質な気配だ。

何が来るの?

不安そうな表情のサラの手を握りながら、リリスは最大限の警戒態勢を取っていたのだった。






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