落ちこぼれ子女の奮闘記

木島廉

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風の女神 後日談2

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風鈴を通して、風の大精霊の傍に仕える精霊を呼び出してしまった日の深夜。

リリスは解析スキルの突然の起動によって起こされた。

『風魔法の加護が具現化しました。ステータスを確認してください。』

こんな深夜に起こさなくても良いのに・・・。

そう思いつつリリスはステータスを開いてみた。


**************

リリス・ベル・クレメンス

種族:人族 レベル24

年齢:14

体力:1500
魔力:4300

属性:土・火・風

魔法:ファイヤーボール  レベル5+++

   ファイヤーボルト  レベル7+++

   アースウォール   レベル7

   加圧        レベル5+

   アースランス    レベル3

   硬化        レベル3

   エアカッター    レベル3

   エアバースト    レベル3




(秘匿領域)

属性:水・聖・闇(制限付き)

魔法:ウォータースプラッシュ レベル1 

   ウォーターカッター レベル1

   ヒール       レベル1+ (親和性による補正有り)

   液状化       レベル15 (制限付き)  

   黒炎        レベル2  (制限付き)

   黒炎錬成      レベル2  (制限付き)

 
スキル:鑑定 レベル3

    投擲 レベル3

    魔力吸引(P・A) レベル3

    魔力誘導 レベル3 (獣性要素による高度補正有り)

    探知 レベル4++ (獣性要素による高度補正有り)

    毒生成 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)

    解毒  レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)

    毒耐性 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)

    火力増幅(加護と連携可能)

    火力凝縮(加護と連携可能)

    亜空間シールド(P・A)(加護と連携可能)

    減圧(重力操作)レベル5+

    調合 レベル2

    魔装(P・A) (妖精化)

    魔金属錬成 レベル1++(高度補正有り)

    属性付与  レベル1++(高度補正有り)

    スキル特性付与 レベル1++(高度補正有り)

    呪詛構築 (データ制限有り)

    瞬間移動(発動に制限有り)

    覇竜の遺志を継ぐ者

    風神集結

    解析 

    最適化

**************


ちょっと待ってよ!
風神集結ってどう考えても加護じゃないわよね。
風属性の精霊を無理矢理呼び出すの?

『いえ。これは間違いなく加護ですよ。今のところは・・・』

今のところってどういう意味よ!

『現状では風属性の魔法を30%ほど増幅させる加護です。』

『ですが不安定要素もあって、独自に他の機能を発動する傾向も残っていますね。』

そんな、呑気な事を言わないでよ。
勝手に発動して精霊を呼び出したりしたら、また騒動になっちゃうわ。

『あくまでも傾向が残っていると言うレベルですので、それほどに心配する事は無いと思います。』

『それと、この加護には制限が掛けられています。』

制限って発動時間や発動要件が限られているって事?

『それもそうですが、覇竜の加護の管理下に置かれているようです。詳細は不明ですが、魔力の流れからそのように推測されますので。』

覇竜の加護の管理下?
まあ、キングドレイクさんが管理してくれるのなら少しは安心出来そうね。

それなら良いわ。
ありがとう。

リリスは解析スキルの発動を解除して再び眠りに就いた。
だが直ぐにまた起こされる事になる。
実際に起きているのか否かは分からないのだが。



気が付くとリリスは真っ白な空間の中に居た。

白いテーブルと椅子が並べてあり、そこにはキングドレイクが座っていた。
その表情は若干不機嫌そうにも見える。

キングドレイクはリリスを手招きし、キングドレイクの対面の椅子に座るように無言で指示をした。

リリスが座るとキングドレイクはふうっと大きくため息をついた。
その目が笑っていない。

「リリス。あまり妙なものを取り込まないでくれ。こいつの処置には苦労したのだからな。」

そう言ってキングドレイクは白い装束の袂をリリスに見せた。
そこにはあの風鈴がひもで結び付けられていた。

「あっ! あの風鈴だわ。」

リリスの言葉にキングドレイクは頷いた。

「こいつは呪具と呼んでも差し支えない代物だ。しかも時空を超えて存在している。」

「この風鈴はおそらくこの世界の物ではないのだろう。異世界から紛れ込んできたとしか思えない代物だ。それ故にこの世界の法則性が全く通じない。どこからこんなものを取り込んだのだ?」

キングドレイクの問い掛けに、リリスは昼の薬草園での出来事を説明した。
キングドレイクはリリスの説明に頷きながら、その風鈴を軽く振った。
チリンチリンと澄んだ音が鳴り響く。
だがそれと同時に、どこからともなく風が吹き、キングドレイクとリリスの居る白い空間全体がぐらぐらと揺れ始めた。
驚いて椅子を強く握ったリリスだが、その揺れはしばらくして収まった。

「こいつの影響力は時空のはざまをも震撼させる。否、時空のはざまに対する影響の方がはるかに大きいと言えるだろうな。」

「それ故に儂の管理下に置く事にした。かなり制限を掛けたが異論はあるか?」

キングドレイクの言葉にリリスはうんうんと強く頷いた。

「異論などありません。よろしくお願いします。」

「うむ。いずれにしてもこの類の物はこれだけにしておいてくれ。覇竜の加護にも限界があるのでな。」

そう言ってキングドレイクは手を振りながら消えていった。
消え去る間際に「起こしてすまなかったな」とリリスに伝えたのは、キングドレイクの思いやりでもある。

リリスは感謝してそのまま深い眠りに就いた。




翌日の放課後。

生徒会の部屋を訪れたリリスはエリスとニーナ、更に獣人の下級生リンディの出迎えを受けた。
いつも以上に賑やかだ。
その雰囲気にリリスも思わず笑みがこぼれる。

「リリス先輩。ここに来られるのを待っていたんですよ。」

エリスがどや顔でリリスを手招きした。

「どうしたのよ?」

何時に無いエリスの表情に何だろうかと思いながら、リリスは自分の席に座った。
そのリリスを早速、女子3人が取り囲んだ。

「来週、特別補講があるんですよ。勿論選抜メンバーにリリス先輩も入っていますからね。」

エリスが速いテンポで話すのだが、リリスには意味が分からない。
改めて問い尋ねると、ジークが率いるダンジョンチャレンジだと言う。

「シトのダンジョンに潜るの?」

リリスの言葉にニーナがクスっと笑って口を開いた。

「違うよ。今回はギースのダンジョンだからね!」

ギース!
そう言えば私の魔力を発端にして復活したんだったわね。

リリスはギースの街に思いを馳せた。
ダンジョンが荒廃してしまって、まるで無人の街のように廃れたあの街も、元の活気を取り戻したのだろうか?

だがそれにしても話が急だ。

事の次第を聞いてみると、今回のダンジョンチャレンジは2度目だと言う。

「ギースのダンジョンが復活して、その様子を確かめる為に、ジーク先生が男子学生達を数人募って潜ったそうです。でも以前のダンジョンとは様相が全く違っていて、上手く進めなかったので、私達と組んで再度チャレンジしたいと聞きました。」

ジークはリベンジを果たしたいようだ。
だがエリスの説明にリリスは少し疑問を持った。

「男子達で失敗したチャレンジを女子にやらせるの?」

「それなんですが、男子達は剣や弓などの武具がメインで、かなり苦戦したそうですよ。それで魔法主体のグループに切り替えて再度取り組みたいとの事です。」

う~ん。 
それなら最初から魔法を扱える者も交えて取り組めば良かったのに・・・。

明日にはジークから連絡がある筈だと言うので、リリスはその予定で心づもりをした。

「ところでリンディも今回は加わるのね?」

リリスの問い掛けにリンディはハイと嬉しそうに答えた。
その笑顔が小動物っぽくて愛くるしい。
これは獣人の特権のようなものだ。

「私、ギースのダンジョンの事が何時も気になっていたんです。街が廃れてしまってどうなるんだろうかと心配で・・・」

「でもダンジョンが復活して街も賑わいを取り戻したと聞いて、思わずジーク先生に嘆願して参加させてもらう事になったんです。」

随分乗り気のリンディである。
だが空間魔法を操るリンディが加われば、予想外の突発的な展開があったとしても対処出来る事は確実だ。
リンディに全面的に頼るような事態は避けたいが・・・。

「リンディはギースの街に特別な思い入れがあるの?」

「ええ、レダは獣人の国ですからね。私の親族がレダの王都に住んでいて、ギースの街も幼い頃に良く連れて行ってもらったんです。猥雑だけど活気があって賑やかで、冒険者向けの飲食店も美味しい店がたくさんあるんですよ。」

うんうん。
その感想は同意出来るわね。
以前のギースの街はそうだったのよ。

「それで男子達が苦戦したのはどうしてなの? まさかと思うけど、第1階層からハードなの?」

リリスの問い掛けにエリスは真顔で強く頷いた。

「最初の階層から、索敵し辛い上にそれなりの魔物が出てくるそうです。でも・・・」

そう言ってエリスはニーナの顔を見た。

「先頭にニーナ先輩を立たせておけば、索敵は大丈夫ですよ。」

突然話を振られたニーナは、エリスの言葉に照れ笑いを見せた。

「それは言い過ぎよ。」

ニーナは手を横に振りつつ謙遜しているのだが、ニーナの索敵能力や探知スキルは秀逸だ。そのお世話になる事も大いに考えられる。

このメンバーなら多少難易度が高いダンジョンでも大丈夫だろう。
リリスは3人と談笑しつつ、その日の生徒会の作業に取り掛かった。




翌日の昼休みになって、リリスはジークから正式にダンジョンチャレンジの依頼を受けた。
リリスとしては、勿論快諾である。
だが、リリスは前回の男子学生を中心としたチャレンジの様子が気になっていた。
ジークに問い尋ねると、ジークは失笑しながらもその状況を話し始めた。

「舐めてかかっていたのは事実だね。まさか第1階層から難易度が高いとは思ってもみなかったんだよ。以前のギースのダンジョンは第5階層までは平易なレベルだったからね。剣や弓を主体にしたメンバーでも楽々取り組めるはずだったんだ。」

「それで今回はリベンジと言うわけだ」

話すたびにジークの胸元のチョーカーが揺れて光を反射する。
何時ものチャラい話し方のジークにイラっとしながらも、リリスは続けて尋ねた。

「それで対策は整っているんですか? 一応、特別補講と言う事になっているんですけど、エリス達を危険な目に遭わせる事になりませんか?」

リリスの真剣な眼差しをかわす様に、ジークは懐から真新しい巻物を取り出した。

「その懸念もあって、今回はこれをギースのアイテムショップで手に入れたんだ。最近出来上がった探索マニュアルだよ。とりあえず第10階層までだ。勿論これは魔法学院の経費で購入したんだけどね。」

そんなの自腹で購入しなさいよ!

心の中でそう突っ込みながら、リリスはジークの広げた巻物を眺めた。
階層ごとの構図に色々とチェックが入っていて、随所に詳細な説明もある。
巻物の最初の部分には探索した冒険者の名前が、簡単な自己紹介と共に書かれていた。
それによると探索者は中級クラスの冒険者のようだ。
魔法使いや回復職を含む5人のパーティで取り組んだと記されている。

「でも、ダンジョンって探索のたびに変化する部分もありますよね。すべてがこの通りになっているとは思えないんですけど・・・」

「確かにそう言う事もあるだろう。だが大まかな様子さえ確かめられれば、後は君達の能力で攻略できるはずだ。」

そう言ってジークは巻物を懐に戻した。

結局、私達に丸投げって事なのね。
まあ、それでもギースのダンジョンに行けるのなら良いわ。

リリスは気持ちを切り替えて、ジークに礼を言い、教室に戻っていった。




そして迎えたギースでのダンジョンチャレンジの日。

リリス達は早朝から転移の魔石でギースの街に転移した。
ジークを含む全員がレザーアーマーにガントレットを装着し、念のためにポーション類も多数携帯している。

久し振りに訪れたギースの街は、かつての賑わいを取り戻していた。
冒険者達が身につけた武具の音が、あちらこちらからカチャカチャと鳴り響く。人々の話し声も程よく騒がしい。
土埃にまみれた石畳の街路を、子供達が嬌声を上げながら走り抜けて行く。
街路の両側に立ち並ぶ飲食店の呼び込みの声も随所から聞こえて来た。

更に武具店やアイテムショップには、商品を物色する多数の冒険者達が目に付いた。
どの店もそれなりに繁盛しているようで、以前訪れた時の廃れた様子など微塵も見られない。

乾燥した生暖かい風に吹かれながら、一行はギースのダンジョンの入り口に到着した。
ダンジョン入り口にはその傍に広い待機所があり、門番の衛兵がタイミングを見計らいながら順次冒険者達を誘導している。
ギースのダンジョンの復活と共に、入り口の周辺も改良されたようだ。

リリス達は特例で探索する許可をミラ王国から得ているので、ジークが手続きをして優先的に入らせてもらった。
入り口に入っていく直前、背後から冒険者達の野太い声が聞こえて来た。

「お嬢ちゃん達、今日はピクニックかい? 怖くなったら直ぐに逃げてくるんだよ!」

下品な連中だが、良くある事だ。
剣の柄を手握りゲラゲラと笑っている冒険者の顔を見ながら、ジークはニヤッと笑った。

「気にする事は無いよ。」

「あの連中はあんなことを言っているが、君達の方が実力も能力も上なんだけどねえ。」

そう言って進むジークの後について、リリス達もダンジョンの入り口に入っていったのだった。







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