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ニーナの称号2
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気が付くとニーナは石造りの通路の中に居た。
石の壁がところどころ朽ちていて、その割れ目から植物のつるが生えている。周りに灯は無いが、天井が仄かに光っていて暗くはない。
どうやらここはダンジョンの内部のようだ。
何故か分からないが、自分の視線がかなり高い位置から俯瞰している状態になっている。まるで空中に浮かんでいるような感覚だが、恐らく地上から3mほどの位置に自分の目の位置があるのだろう。
第三者目線で見ると言うのはこの事なのか?
不思議に思いながらもニーナは自分の身体が前方に引っ張られていくのを感じた。
勝手に身体が動いていく。
その視線の先に、5人の冒険者の姿があった。
大きなハルバートを持ち、重そうな甲冑を着ている大柄な男性が先頭に立ち、その後ろに杖を持つソーサラーと魔剣を持つ戦士が続く。その後ろに居るメイスを持つクレリックは回復役だろうか。
そしてそのパーティの前後をこまめに動き回っている小柄な黒装束の女性が居る。
ニーナはその女性がニキだと直感的に分かった。
自分の方に向いた時に覗かせた顔は・・・確かに自分に似ているとニーナは感じた。
そのニキが叫んだ。
「前方からスケルトンの小隊が来るわよ!」
ニキはそう言うと、ふっと気配を消した。だが不思議な事にニーナにはその位置が分かる。パーティの前方に出て罠を仕掛けているようだ。
程なくパーティの前方に現れたのは10体のスケルトンウォーリアーとその背後に2体のスケルトンのソーサラー、更にその背後にスケルトンのアーチャーも見える。
「来るぞ! カイル! シールドを張れ!」
リーダーのリックがハルバートを背中に収納し、亜空間収納から黒く大きな盾を取り出した。魔力を纏う黒い大きな盾を前方に向けて対峙する。
その目の前に張られたシールドにスケルトン達の放った矢がカンカンと当たり、その直後にスケルトンソーサラーの放ったファイヤーボールがドンッと音を立ててぶつかり、真っ赤な爆炎をあげた。
シールドが破られ、間髪を入れずにスケルトンウォーリアーが魔剣を持って突撃してきた。だがリックは怯まない。魔力を集中させると盾に魔力を流し、一気に前に駆けだした。
その強烈なバッシュでスケルトンウォーリアーが数体吹き飛ばされ、それを機に戦士のダンが魔剣に魔力を流し、強烈なソニックを放ちながらスケルトン達の中に切り込んでいく。そのダンの死角に回ろうとするスケルトンをソーサラーのカイルが雷撃で倒した。
更にタイミングを見計らってクレリックのキャシーが背後から、仲間の魔力を補充しエリアヒールを掛ける。
彼らの連係の練度は高い。
絶妙のコンビネーションでスケルトン達を倒していく。
背後に居たスケルトンソーサラーやアーチャーは守る者が無くなり、矢や火球を放つ為に前方に出て来た。だがそこがニキの狙い目だ。
敵の魔力に合わせて設定された罠が発動し、通路の床から魔力の蔦が伸びてスケルトンソーサラーやアーチャーに絡みついた。
「今よ!」
ニキの叫びに応じてカイルが強烈な雷撃を放ち、怯んだ敵をダンが魔剣で薙ぎ払った。
それでもしぶとく立ち上がろうとするスケルトンアーチャーに、ニキが魔力で加速した魔金属のスローイングダガーを放ち、その頭部を粉砕して戦闘を終えた。
ダガーを回収して仲間の元に戻ったニキの背中に、キャシーの温かい手が添えられた。その手から放たれるヒールに心地良さを感じながら、ニキは笑顔でキャシーに感謝した。
「ありがとう、キャシー。」
「遠慮は要らないわよ。仲間なんだからね。」
そう言ってキャシーはニキの元を離れると、腕に軽い傷を負ったダンにヒールを掛け始めた。
その様子を見ながらリーダーのリックは盾を亜空間収納に戻し、通路の前方に目を向けた。その視線の先には階下に続く階段がある。だがその階段にはガーディアンが居るはずだ。
このダンジョンを攻略したS級の冒険者から、スケルトンの小隊が駆逐されて数分後に姿を現わすと聞いている。
「準備を整えろ。まもなくガーディアンが出現するぞ!」
リックの言葉にニキ達もその表情を引き締めた。
リックは亜空間収納からハルバートを取り出し、両手で構えて通路前方に対峙した。
パーティのメンバーの見ている中、階段の前に白い霧が出現し、それが薄れていくと黒い大きな塊が見えて来た。その身体は大きな獣のようだ。
ライオンのように見えるがその頭に一対の触覚がある。更にその額には角があり、尻尾が蛇になっている。
キメラだ!
その身体から妖気が放たれ、瘴気も漂ってきた。
パーティのメンバーは全員耐性を持っているが、それでも頭が痛くなってくる。
これでは戦闘に時間を掛けるのは拙い。
「カイル! とりあえず魔法で攻撃してみてくれ。」
リックの言葉に即座に反応して、カイルは目の前のキメラにサンダーボルトを放った。
バリバリバリッと雷鳴を上げて放たれた雷撃はキメラに直撃した。だがキメラには何の変化も起こらない。
カイルはすかさずファイヤーボールを放ったが、それでもキメラには変化がない。
「奴は魔法を無効化出来るのか? それにしても反撃してこないのは何故だ?」
カイルの言葉にリックは振り向きもせず、
「奴はあの階段のガーディアンだ。あの階段から半径3mが奴の行動範囲なんだよ。」
「その範囲内に入ってくるものには容赦なく攻撃してくるそうだ。」
そう言いながらリックはニキに、スローイングダガーで攻撃するように促した。
ニキはそれに応じてスローイングダガーを取り出し、強毒を塗布してキメラに投げつけた。投擲スキルが発動し、魔力による加速もついて、スローイングダガーは回転しながらキーンと金切り音を立てて飛び、キメラの胴体に直撃した。
だがそれでもキメラは何もなかったかのように平然としている。
「これならどうだ!」
カイルはそう言うと闇魔法の黒炎を放った。黒い不気味な球体が時折赤い光をその内部に点滅させながら、滑るようにキメラに向かい、着弾してその身体に纏わりついた。普通の魔物ならそのまま静かに消し炭になっていくはずだが、キメラは若干苦しそうにしていたものの、その頭部の触手を発光させ、纏わりつく黒炎を無効化してしまった。
「あれでも効かないのか?」
カイルが呆然として口を開いた。3属性の魔法に長けたカイルでもなす術がない。そのカイルに振り向きリックはその表情でカイルを慰めた。
「このダンジョンを攻略したS級の冒険者から聞いた通りだ。通常の攻撃が通用しないのは明らかだな。」
「奴はあの頭部の触手が急所だ。あれを一本でも切り取れば、魔法攻撃や物理攻撃の耐性も失われるそうだ。」
リックはそう言いながらニキを呼び寄せた。
「ニキ。ここはお前の出番だ。あのキメラの頭部の触手を切り取ってくれ。一本で良いからな。」
「そんなに簡単に言わないでよ、リック。」
そう答えながらもニキは渋々その準備をし始めた。魔力を集中させ、身体強化を強度に掛け、更に魔道具を使ってブーストを掛ける。
リックの期待しているのはニキの隠形だ。
その偽装に特化した隠形のスキルによって、ニキは空中に漂う風の気配に紛れ込み、素早くキメラの近くの天井に飛びついた。魔道具によってまるでヤモリのように天井に張り付きながら、音もなくキメラの傍に近付いて行く。
キメラもその攻撃範囲に入ってきたニキを探知していない。ここまでは上出来だ。
だが、いざ攻撃するとなると僅かに気配を現わしてしまう。それを感じ取った敵からの攻撃を回避するために、ニキは攻撃と同時に自分の魔力を僅かに纏わらせた小さな使い魔を、自分から離れた場所に放つようにしている。
ニキの斜め下方にキメラの触手が見える。切り取るまでもなく、潰してしまえば良い。
ニキはスローイングダガーを懐から取り出し、キメラの片方の触手に投げつけた。投擲スキルが発動し、スローイングダガーは一気にキメラに向かい、その片方の触手を根元からえぐり取ってしまった。
勿論キメラもその気配をふと感じ取って天井に顔を上げようとしたのだが、既に高速で放たれたスローイングダガーを回避出来ず、直撃されてしまったのだ。グアッと悲鳴を上げて気配を察知した上方に敵を探そうとしたキメラだが、攻撃と同時にニキが放った昆虫のような使い魔が、ニキの気配を僅かに纏いながらキメラの後方の階段の方向に向かっている。
キメラはその方向に顔を向け、首を横に向けながら幾つものファイヤーボールを放った。
階段の周囲がその炎熱で激しく燃え上がり、眩しくてその様子が見えないほどだ。
あの炎熱に巻き込まれなくて良かったわ。
ニキはそう思いながら即座に天井を伝い、リック達の傍に戻った。隠形を解除して姿を現わしたニキが叫ぶ。
「今よ! カイル!」
カイルが即座に反応してサンダーボルトを放った。後方に向かってファイヤーボールを放っていたキメラの無防備な身体に雷撃が突き刺さり、その身体を激しく打ちのめした。
「攻撃が通るぞ!」
カイルの声にリックがハルバートを振り上げてキメラに向かい、そのすぐ後ろにはダンが魔剣を構えながら走り込んだ。身体強化したリックのハルバートがキメラの身体を袈裟掛けにし、その背後からダンがスラッシュで真横に一閃する。
ギエエエエエッと悲鳴を上げて倒れるキメラに、カイルが更に雷撃を放ち、とどめに巨大な黒炎を放った。キメラの身体に黒炎が纏わりつき、静かに、だが確実に消し炭になっていく。
「さあ、階段に向かうぞ!」
意気揚々とリックがハルバートを突き上げ、ダンとカイルと共に士気を上げた。
その様子を眺めながら、ニキは魔道具を収納し、キャシーと共に階段に向かうリック達の後を追って行った。
ニーナの視界が暗転する。
気が付くとニーナの斜め下方にニキが居た。ニーナの目に入ってきたのは、広くて煌びやかなバンケットルームだ。
天井には豪華なシャンデリアが飾られ、大きな丸いテーブルが30以上並んでいる。
バンケットの招待客は200人ほども居そうだ。
そのテーブルの上には料理やワインが並べられ、テーブルの間をメイド達が機敏に生き来し、招待客に丁寧に給仕していた。
ニキは華やかなピンクのドレスを身に纏い、初老の男性の傍で会話を楽しんでいる様子だ。その男性はニキに目鼻が似ているので、恐らく父親なのだろう。ニキはうっすらとメイクをしているが、その顔立ちが整っているので上品にも見える。
ニキはテーブルにあったシャンパングラスのドリンクを少し飲んで喉を潤し、傍にいた父親のヴィヨルブに笑顔で話し掛けた。
「お父様。これだけの規模の晩餐会が行われるのは、国内外に向けて、ミラ王国の内乱が収まったと言う事のアピールでしょうね。」
ニキの言葉にヴィヨルブはその口ひげを軽く撫でた。その口元が緩んでいる。
「その通りだよ、ニキ。ここには内乱平定の為に武勲を立てた貴族や王族達が呼ばれている。私はそのついでに呼ばれただけだ。」
「謙遜しなくても良いですよ。お父様の尽力が無ければ、守旧派は兵站で破綻していたかも知れませんからね。戦は前線の兵士だけで行なうものではありませんから。」
そう言って笑顔を見せるニキの言葉にヴィヨルブは嬉しそうに頷いた。
「ニキにそう言って貰えると本当に嬉しいよ。お前やお前の母親には苦労を掛けたからなあ。」
ヴィヨルブはニキとその母親を、屋敷から追い出さざるを得なかった過去を心底悔いていた。ニキの母親が正妻ではなかったからである。
だが内乱で屋敷と共に本妻と子供を失ってしまった事で、ニキ達を呼び戻す事にした。それはハーネスト家の跡継ぎを立てなければならないと言う事が一番の要因だ。だがそれに対して時期尚早ではないかと陰口を叩かれる事も多い。それはヴィヨルブも覚悟していた事でもある。
「お父様には本当に感謝しているんですよ。病弱な母を養う為に心ならずも冒険者になり、闇の稼業にも手を染めていたのですから。王族から圧力を掛けて下さって、ドルキアの貴族の元から抜け出せたのは奇跡的でした。」
「あのドルキアの貴族にミラ王国の内乱増長の嫌疑をかけて、処刑寸前まで追い込んだと聞きましたよ。」
ニキの言葉にヴィヨルブはニヤッと笑い、
「そんな事もあったかね?」
惚けながら給仕されたワインを飲み干すと、ヴィヨルブの背後から声を掛けて来た貴族がニキの目に入ってきた。
背も高く恰幅の良い40代の男性で、その名をグレナドと言う。南方の戦いで激戦に勝利し、それが守旧派の勝利のターニングポイントになった事は既に広く知れ渡っている。
グレナドはヴィヨルブとニキに挨拶を交わし、ニキの傍にスッと近付いて来た。
「ニキ殿。このバンケットルームに怪しい気配は無いか?」
小声で話し掛けたグレナドは、ニキの素性を知る数少ない人物の一人でもある。
「はい、特には有りませんが・・・・・。少し気になる事があって・・・。」
ニキの表情に僅かに陰りが見えたのをグレナドは気にした。
「随分歯切れが悪いな。何が気になるのか教えてくれないか?」
優しく語り掛けるグレナドの口調は、ニキを気遣っての事と思われる。
ニキはバンケットルームの片隅の天井に視線を向けた。
「あの辺りに体長2cmほどの小さな昆虫が居るのですが、その気配に僅かに人の気配が混ざっているように感じられるんです。おそらくは偵察用の使い魔かと思われます。今のところ害はなさそうですが。」
ニキの言葉にグレナドは無言で驚いた。
「そんな小さなものまで探知出来るのかね。流石はニキ殿だな。それで害はないと言い切れるのか?」
「はい。魔力の纏い方から見て、気配を隠す事に精一杯のように感じられますので。」
グレナドは少し忌々しそうな表情を、その昆虫の居そうな天井に向けた。
「王家に反逆した連中の残滓を探索中だから、その様子を探ろうとする者も居るのかも知れん。何か変化があったらまた教えてくれ。」
グレナドの言葉にニキは笑顔を見せ、
「私は有事には父を全力で守りますので。この場に居るのも表向きは母の代理ですが、実際には父のボディガードですからね。」
そう言うとヴィヨルブの顔をちらっと見た。その視線にヴィヨルブは少し困ったような表情を見せた。
「娘に守ってもらうと言うのも父親として情けないように思うんだがね。」
「ヴィヨルブ殿。そんなに自分を卑下するしなくても良いと思いますぞ。貴殿がミラ王国にとって重要な人物である事は間違いないのですから。」
「それにこんなに愛らしい娘に守ってもらうなんて、有難い事ではありませんか。」
グレナドはそう言って近くに居たメイドを呼び寄せ、ヴィヨルブにワインを給仕させた。
「ニキ殿。そなたの父上が大陸中に広げた人脈と流通網は、守旧派の兵糧や武器の調達に多大な貢献をしてくれた。今後もミラ王国にとって欠く事の出来ない人物だと思っている者は、王族をはじめとして多数に及ぶ。父上の事をよろしく頼みますぞ。」
グレナドの言葉にニキは強く頷いた。
「はい。父に害をなす者は私が全力で潰します。」
ニキの言葉に迷いはない。その目の輝きにグレナドはニキの本気を感じ取った。
ニキ達の様子を俯瞰して眺めていたニーナの意識が次第に薄れていく。
その視界が暗転し、ニーナは深い眠りに落ちて行った。
石の壁がところどころ朽ちていて、その割れ目から植物のつるが生えている。周りに灯は無いが、天井が仄かに光っていて暗くはない。
どうやらここはダンジョンの内部のようだ。
何故か分からないが、自分の視線がかなり高い位置から俯瞰している状態になっている。まるで空中に浮かんでいるような感覚だが、恐らく地上から3mほどの位置に自分の目の位置があるのだろう。
第三者目線で見ると言うのはこの事なのか?
不思議に思いながらもニーナは自分の身体が前方に引っ張られていくのを感じた。
勝手に身体が動いていく。
その視線の先に、5人の冒険者の姿があった。
大きなハルバートを持ち、重そうな甲冑を着ている大柄な男性が先頭に立ち、その後ろに杖を持つソーサラーと魔剣を持つ戦士が続く。その後ろに居るメイスを持つクレリックは回復役だろうか。
そしてそのパーティの前後をこまめに動き回っている小柄な黒装束の女性が居る。
ニーナはその女性がニキだと直感的に分かった。
自分の方に向いた時に覗かせた顔は・・・確かに自分に似ているとニーナは感じた。
そのニキが叫んだ。
「前方からスケルトンの小隊が来るわよ!」
ニキはそう言うと、ふっと気配を消した。だが不思議な事にニーナにはその位置が分かる。パーティの前方に出て罠を仕掛けているようだ。
程なくパーティの前方に現れたのは10体のスケルトンウォーリアーとその背後に2体のスケルトンのソーサラー、更にその背後にスケルトンのアーチャーも見える。
「来るぞ! カイル! シールドを張れ!」
リーダーのリックがハルバートを背中に収納し、亜空間収納から黒く大きな盾を取り出した。魔力を纏う黒い大きな盾を前方に向けて対峙する。
その目の前に張られたシールドにスケルトン達の放った矢がカンカンと当たり、その直後にスケルトンソーサラーの放ったファイヤーボールがドンッと音を立ててぶつかり、真っ赤な爆炎をあげた。
シールドが破られ、間髪を入れずにスケルトンウォーリアーが魔剣を持って突撃してきた。だがリックは怯まない。魔力を集中させると盾に魔力を流し、一気に前に駆けだした。
その強烈なバッシュでスケルトンウォーリアーが数体吹き飛ばされ、それを機に戦士のダンが魔剣に魔力を流し、強烈なソニックを放ちながらスケルトン達の中に切り込んでいく。そのダンの死角に回ろうとするスケルトンをソーサラーのカイルが雷撃で倒した。
更にタイミングを見計らってクレリックのキャシーが背後から、仲間の魔力を補充しエリアヒールを掛ける。
彼らの連係の練度は高い。
絶妙のコンビネーションでスケルトン達を倒していく。
背後に居たスケルトンソーサラーやアーチャーは守る者が無くなり、矢や火球を放つ為に前方に出て来た。だがそこがニキの狙い目だ。
敵の魔力に合わせて設定された罠が発動し、通路の床から魔力の蔦が伸びてスケルトンソーサラーやアーチャーに絡みついた。
「今よ!」
ニキの叫びに応じてカイルが強烈な雷撃を放ち、怯んだ敵をダンが魔剣で薙ぎ払った。
それでもしぶとく立ち上がろうとするスケルトンアーチャーに、ニキが魔力で加速した魔金属のスローイングダガーを放ち、その頭部を粉砕して戦闘を終えた。
ダガーを回収して仲間の元に戻ったニキの背中に、キャシーの温かい手が添えられた。その手から放たれるヒールに心地良さを感じながら、ニキは笑顔でキャシーに感謝した。
「ありがとう、キャシー。」
「遠慮は要らないわよ。仲間なんだからね。」
そう言ってキャシーはニキの元を離れると、腕に軽い傷を負ったダンにヒールを掛け始めた。
その様子を見ながらリーダーのリックは盾を亜空間収納に戻し、通路の前方に目を向けた。その視線の先には階下に続く階段がある。だがその階段にはガーディアンが居るはずだ。
このダンジョンを攻略したS級の冒険者から、スケルトンの小隊が駆逐されて数分後に姿を現わすと聞いている。
「準備を整えろ。まもなくガーディアンが出現するぞ!」
リックの言葉にニキ達もその表情を引き締めた。
リックは亜空間収納からハルバートを取り出し、両手で構えて通路前方に対峙した。
パーティのメンバーの見ている中、階段の前に白い霧が出現し、それが薄れていくと黒い大きな塊が見えて来た。その身体は大きな獣のようだ。
ライオンのように見えるがその頭に一対の触覚がある。更にその額には角があり、尻尾が蛇になっている。
キメラだ!
その身体から妖気が放たれ、瘴気も漂ってきた。
パーティのメンバーは全員耐性を持っているが、それでも頭が痛くなってくる。
これでは戦闘に時間を掛けるのは拙い。
「カイル! とりあえず魔法で攻撃してみてくれ。」
リックの言葉に即座に反応して、カイルは目の前のキメラにサンダーボルトを放った。
バリバリバリッと雷鳴を上げて放たれた雷撃はキメラに直撃した。だがキメラには何の変化も起こらない。
カイルはすかさずファイヤーボールを放ったが、それでもキメラには変化がない。
「奴は魔法を無効化出来るのか? それにしても反撃してこないのは何故だ?」
カイルの言葉にリックは振り向きもせず、
「奴はあの階段のガーディアンだ。あの階段から半径3mが奴の行動範囲なんだよ。」
「その範囲内に入ってくるものには容赦なく攻撃してくるそうだ。」
そう言いながらリックはニキに、スローイングダガーで攻撃するように促した。
ニキはそれに応じてスローイングダガーを取り出し、強毒を塗布してキメラに投げつけた。投擲スキルが発動し、魔力による加速もついて、スローイングダガーは回転しながらキーンと金切り音を立てて飛び、キメラの胴体に直撃した。
だがそれでもキメラは何もなかったかのように平然としている。
「これならどうだ!」
カイルはそう言うと闇魔法の黒炎を放った。黒い不気味な球体が時折赤い光をその内部に点滅させながら、滑るようにキメラに向かい、着弾してその身体に纏わりついた。普通の魔物ならそのまま静かに消し炭になっていくはずだが、キメラは若干苦しそうにしていたものの、その頭部の触手を発光させ、纏わりつく黒炎を無効化してしまった。
「あれでも効かないのか?」
カイルが呆然として口を開いた。3属性の魔法に長けたカイルでもなす術がない。そのカイルに振り向きリックはその表情でカイルを慰めた。
「このダンジョンを攻略したS級の冒険者から聞いた通りだ。通常の攻撃が通用しないのは明らかだな。」
「奴はあの頭部の触手が急所だ。あれを一本でも切り取れば、魔法攻撃や物理攻撃の耐性も失われるそうだ。」
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「ニキ。ここはお前の出番だ。あのキメラの頭部の触手を切り取ってくれ。一本で良いからな。」
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カイルの声にリックがハルバートを振り上げてキメラに向かい、そのすぐ後ろにはダンが魔剣を構えながら走り込んだ。身体強化したリックのハルバートがキメラの身体を袈裟掛けにし、その背後からダンがスラッシュで真横に一閃する。
ギエエエエエッと悲鳴を上げて倒れるキメラに、カイルが更に雷撃を放ち、とどめに巨大な黒炎を放った。キメラの身体に黒炎が纏わりつき、静かに、だが確実に消し炭になっていく。
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「謙遜しなくても良いですよ。お父様の尽力が無ければ、守旧派は兵站で破綻していたかも知れませんからね。戦は前線の兵士だけで行なうものではありませんから。」
そう言って笑顔を見せるニキの言葉にヴィヨルブは嬉しそうに頷いた。
「ニキにそう言って貰えると本当に嬉しいよ。お前やお前の母親には苦労を掛けたからなあ。」
ヴィヨルブはニキとその母親を、屋敷から追い出さざるを得なかった過去を心底悔いていた。ニキの母親が正妻ではなかったからである。
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「お父様には本当に感謝しているんですよ。病弱な母を養う為に心ならずも冒険者になり、闇の稼業にも手を染めていたのですから。王族から圧力を掛けて下さって、ドルキアの貴族の元から抜け出せたのは奇跡的でした。」
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ニキの言葉にヴィヨルブはニヤッと笑い、
「そんな事もあったかね?」
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背も高く恰幅の良い40代の男性で、その名をグレナドと言う。南方の戦いで激戦に勝利し、それが守旧派の勝利のターニングポイントになった事は既に広く知れ渡っている。
グレナドはヴィヨルブとニキに挨拶を交わし、ニキの傍にスッと近付いて来た。
「ニキ殿。このバンケットルームに怪しい気配は無いか?」
小声で話し掛けたグレナドは、ニキの素性を知る数少ない人物の一人でもある。
「はい、特には有りませんが・・・・・。少し気になる事があって・・・。」
ニキの表情に僅かに陰りが見えたのをグレナドは気にした。
「随分歯切れが悪いな。何が気になるのか教えてくれないか?」
優しく語り掛けるグレナドの口調は、ニキを気遣っての事と思われる。
ニキはバンケットルームの片隅の天井に視線を向けた。
「あの辺りに体長2cmほどの小さな昆虫が居るのですが、その気配に僅かに人の気配が混ざっているように感じられるんです。おそらくは偵察用の使い魔かと思われます。今のところ害はなさそうですが。」
ニキの言葉にグレナドは無言で驚いた。
「そんな小さなものまで探知出来るのかね。流石はニキ殿だな。それで害はないと言い切れるのか?」
「はい。魔力の纏い方から見て、気配を隠す事に精一杯のように感じられますので。」
グレナドは少し忌々しそうな表情を、その昆虫の居そうな天井に向けた。
「王家に反逆した連中の残滓を探索中だから、その様子を探ろうとする者も居るのかも知れん。何か変化があったらまた教えてくれ。」
グレナドの言葉にニキは笑顔を見せ、
「私は有事には父を全力で守りますので。この場に居るのも表向きは母の代理ですが、実際には父のボディガードですからね。」
そう言うとヴィヨルブの顔をちらっと見た。その視線にヴィヨルブは少し困ったような表情を見せた。
「娘に守ってもらうと言うのも父親として情けないように思うんだがね。」
「ヴィヨルブ殿。そんなに自分を卑下するしなくても良いと思いますぞ。貴殿がミラ王国にとって重要な人物である事は間違いないのですから。」
「それにこんなに愛らしい娘に守ってもらうなんて、有難い事ではありませんか。」
グレナドはそう言って近くに居たメイドを呼び寄せ、ヴィヨルブにワインを給仕させた。
「ニキ殿。そなたの父上が大陸中に広げた人脈と流通網は、守旧派の兵糧や武器の調達に多大な貢献をしてくれた。今後もミラ王国にとって欠く事の出来ない人物だと思っている者は、王族をはじめとして多数に及ぶ。父上の事をよろしく頼みますぞ。」
グレナドの言葉にニキは強く頷いた。
「はい。父に害をなす者は私が全力で潰します。」
ニキの言葉に迷いはない。その目の輝きにグレナドはニキの本気を感じ取った。
ニキ達の様子を俯瞰して眺めていたニーナの意識が次第に薄れていく。
その視界が暗転し、ニーナは深い眠りに落ちて行った。
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「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
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うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
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