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古都の神殿3
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古都の神殿のゲストルーム。
突然意識を失ったリリスの意識が戻ると、そこは真っ白な空間でロスティアとマルタが立っていた。
「リリス。こちらに来なさい。」
ロスティアに促されるままにリリスは二人に近付いた。
「ここはコピースキルで構築した亜空間だ。ここにお前を招き入れたのは、マルタの今後の生活を考えた場合に、お前から幾つかスキルや属性魔法をコピーしておいた方が良いと考えたからだ。」
うんうん。
それは必要かもね。
「マルタの身体は儂の魔力を用いて全快した。だが1年後になっても元気なマルタを見て、あと1年ほどで死んでしまうと判断した上で、この神殿に大祭司として送り込んだ連中が不審に思う事は間違いない。口封じに刺客を送り込む事も考えられる。そう考えると早めに神殿を去った方が良いかも知れんからな。」
ロスティアの言葉にマルタもう~んと唸って考え込んだ。
「まあ、時間の猶予は1年あるんだから、今のうちに準備しておけば良いわよ。いざとなったら他人に偽装する事だって可能だし・・・」
そう言ってリリスはマルタを励ました。
二人の様子を見てロスティアは優しく頷き、
「さて、とりあえずお前達のステータスを広げてみなさい。ステータスを強く意識すれば目に前に展開するはずだ。」
ロスティアの言葉に従って、二人はステータスを強く意識した。その途端に目の前に巨大な半透明のモニターが現われ、二人のステータスが表示された。
**************
リリス・ベル・クレメンス
種族:人族 レベル23
年齢:14
体力:1300
魔力:4000
属性:土・火
魔法:ファイヤーボール レベル5+++
ファイヤーボルト レベル7+++
アースウォール レベル7
加圧 レベル5+
アースランス レベル3
硬化 レベル3
(秘匿領域)
属性:水・聖・闇(制限付き)
魔法:ウォータースプラッシュ レベル1
ウォーターカッター レベル1
ヒール レベル1+ (親和性による補正有り)
液状化 レベル15 (制限付き)
黒炎 レベル2 (制限付き)
黒炎錬成 レベル2 (制限付き)
スキル:鑑定 レベル3
投擲 レベル3
魔力吸引(P・A) レベル3
魔力誘導 レベル3 (獣性要素による高度補正有り)
探知 レベル4++ (獣性要素による高度補正有り)
毒生成 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
解毒 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
毒耐性 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
火力増幅(加護と連携可能)
火力凝縮(加護と連携可能)
亜空間シールド(P・A)(加護と連携可能)
減圧(重力操作)レベル5+
調合 レベル2
魔装(P・A) (妖精化)
魔金属錬成 レベル1++(高度補正有り)
属性付与 レベル1++(高度補正有り)
スキル特性付与 レベル1++(高度補正有り)
呪詛構築 (データ制限有り)
瞬間移動(発動に制限有り)
覇竜の遺志を継ぐ者
解析
最適化
**************
**************
マルタ・ソフィ・アリエスト
種族:人族 レベル25
年齢:20
体力:1000
魔力:3500
属性:聖・水
魔法:ヒール レベル10
エクストラヒール レベル7
エリアヒール レベル7
浄化 レベル10
ウォーターカッター レベル3
ウォータースプラッシュ レベル3
スキル:鑑定 レベル2
魔力誘導 レベル2
探知 レベル2
魂魄浄化 (発動不可)
体組織復活 (発動不可)
胎内回帰
至福の目覚め
ウェイクアップヒール
元聖女
**************
「ちょっと! 紗季さん! 何ですか、このステータスは!」
「5属性の持ち主って・・・開いた口が塞がらないわ。」
「それにスキルも・・・こんなにたくさんあるじゃないですか!」
マルタが大声を上げてリリスの顔を見た。
「紗季さんって勇者? いやいや、勇者が毒生成や呪詛構築なんて持たないわよね。もしかして魔王を目指しているんですか?」
「まあ、成り行きで手に入れちゃったのよね。私も最初は土魔法しか持っていなかったのよ。」
興奮するマルタを落ち着かせながら、リリスはそう呟いた。確かに嘘ではない。成り行きでここまで手に入れただけだ。
「どうやって手に入れるんですか?」
「それは・・・コピースキルがあるからなのよ。コピースキル自体はステータスにも表示されないけどね。」
マルタはう~んと唸った。
「これなら・・・・学生生活を謳歌しているって言うのも良く分かるわ。チートじゃないですか。設定にバグがあるに違いないわ。」
真希ちゃん。
ここはゲームのキャラ設定の場面じゃないからね。
「これなら無敵じゃないですか。」
「それがそうでもないのよね。気まぐれで動き回るとんでもない力を持つ連中が居るのよ。その連中に振り回されて、どれだけ危険な目に遭って来た事か・・・」
「そうなんですかあ?」
信じられないと言った表情でマルタは再びモニターを見つめた。
「魔金属錬成って何に使うんですか?」
「それは・・・魔金属でアクセサリーを作るのに便利なのよ。属性付与でおまけを付けて・・・」
「毒生成なんてどんな人からコピーしたんですか?」
「それは・・・ダンジョンの魔物からなのよ。」
「魔物まで・・・・・」
あらあら。
真希ちゃんったら絶句しちゃったわ。
本や仏像からコピーしたスキルもあるなんて、とても言えないわね。
「まあ、呆れているのは儂もだ。」
ロスティアは微妙な表情でリリスを見つめた。
「そんな目で見ないで下さいよ。それで真希ちゃんにコピーする魔法とスキルだけど・・・」
そう言いながらリリスは、マルタの顔を見て少し考えた。
「普通に生きていくなら火魔法は必要よね。あと土魔法があれば農作業も楽だわよ。」
「うむ。それなら指で押さえてスライドすれば良いぞ。」
ロスティアの言葉に従って、リリスは火魔法と土魔法を指で押さえ、モニターの上をスライドさせた。
その動作に従ってマルタのステータスに、火魔法と土魔法が追加された。
「まるでゲームのキャラ設定みたいですね。」
そう言って感心するマルタがふと考え込んだ。
「4属性の持ち主って目立ちませんか? 火と土はいざと言う時に使えれば良いんですけどね。」
「うむ。それならとりあえず秘匿領域に入れておこう。それからスキルだが何が良いかな?」
ロスティアに促されてリリスは少し考えた。
「真希ちゃん、毒生成は要る?」
「要りませんよ、そんなもの。」
即答するマルタであった。
「そうかなあ。あったら便利だけどね。確実に敵を倒せるわよ。」
「要らないですってば。でも護身用に解毒と毒耐性と亜空間シールドは欲しいですね。あと、魔装って何ですか? 妖精化って言う表記が気になるんですけど。」
まあそれはピクシーからコピーしたスキルだからねえ。
「精神攻撃に対する耐性が格段に強化されるわよ。探知能力もかなりアップされるわ。」
「表示と非表示の2形態があるんだけど、表示で発動すると・・・」
そう言いながらリリスは表示状態で魔装を発動した。
瞬時にリリスの背中に小さな黒い羽が生え、細い尻尾も生えた。頭には二本の触手も生えている。
「ええっ! 紗季さんが魔物になっちゃった!」
「だから妖精化だってば。ピクシーからコピーしたスキルだからね。もちろん非表示にも出来るのよ。」
そう言ってリリスは非表示状態に変更させた。瞬時にリリスの元の姿に戻ると、マルタはまじまじとリリスの背中や臀部を見つめた。
「う~ん。微妙だなあ。ピクシーの姿になっちゃうのかあ。・・・でも一応貰っておこうかな。」
マルタの指示に従ってリリスはスキルをスライドさせた。
マルタのステータスが大きく変わった。
**************
マルタ・ソフィ・アリエスト
種族:人族 レベル25
年齢:20
体力:1000
魔力:3500
属性:聖・水
魔法:ヒール レベル10
ハイ・ヒーリング レベル7
エリアヒール レベル7
浄化 レベル10
ウォーターカッター レベル3
ウォータースプラッシュ レベル3
スキル:鑑定 レベル2
魔力誘導 レベル2
探知 レベル2
魂魄浄化 (発動不可)
体組織復活 (発動不可)
胎内回帰
至福の目覚め
ウェイクアップヒール
元聖女
(秘匿領域)
属性:火・土
魔法:ファイヤーボール レベル1
ファイヤーボルト レベル1
アースウォール レベル1
アースランス レベル1
硬化 レベル1
スキル:解毒 レベル1(自律進化可)
毒耐性 レベル1(自律進化可)
亜空間シールド(P・A)(自律進化可)
魔装(P・A) (妖精化)(自律進化可)
**************
亜空間シールドは単体でコピーされたようだ。(自律進化可)と言う表記が気になるのだが・・・。
「まあ、良いんじゃないの。これならどこでも生きていけるわよ。」
「火魔法と土魔法のレベルは今後徐々に上げて行けば良いからね。」
リリスの言葉にマルタはうんうんと頷いた。
「ありがとう、紗季さん。でも逆に私のスキルで紗季さんにあげられるものって無いの?」
「う~ん。多分私には使えないものばかりだと思うわよ。私って闇魔法も持っているので、聖魔法にはある程度の制限が掛かるのよね。それにかなり特殊なスキルばかりじゃないの?」
リリスはそう言いながらマルタのステータスを指さした。
「魂魄浄化や体組織復活は、聖女様のスキルだろうから私には縁が無いわよね。胎内回帰や至福の目覚めって何?」
「それらはどれも特殊なヒールですね。エクストラヒールが使えないと発動出来ません。」
「それならやっぱり貰えるスキルは無いわね。良いわよ、私は現状維持で。」
リリスの言葉にロスティアはふっと失笑した。
「お前の事だから、そんな事を言いながら、またそのうちにスキルが増えていたりするのだろうな。」
ロスティアはそう言いながらパチンと指を鳴らした。その途端にステータスを表示していたモニターが消えてしまった。
「さあ、それでは元の世界に戻る事にしよう。」
ロスティアが次の動作に入ろうとすると、マルタが急に声を上げた。
「あっ!待ってください!」
ロスティアはうん?と唸ってマルタの顔を見た。
「属性魔法とスキルを追加してもらったことはありがたいのですが、もう一つお願いして良いですか?」
「お願いだと? 何だ? 言ってみなさい。」
聞く姿勢を見せたロスティアにマルタはおずおずと話し始めた。
「出来れば・・・顔のパーツを少しだけ変えていただけませんか?」
何を言い出すのよ。
リリスの疑問とは裏腹にロスティアは真摯に答えた。
「プチ整形程度なら可能だが、それで良いのか?」
「はい!それで結構です。実は私、子供の頃から目にコンプレックスがあって・・・」
「もう少し大きくして、二重にしたいんです。それに若干つり目なので、少し垂れ目気味に・・・」
あらまあ。
美容整形のクリニックの問診みたいだわ。
「まあ、良いだろう。だがそうすると周りの者が若干違和感を感じるのではないか?」
「周りの者にはメイクを変えたと言っておきます。」
そんな事で通じるのか知らねえ。
そう思ったリリスだが、マルタは真剣だ。余程コンプレックスに感じていたのだろう。
ロスティアがマルタの顔の前で手を振ると、マルタの目が若干大きくなり二重になっていた。
「あらっ! 可愛いくなったわね、真希ちゃん。」
それはリリスの本心からの言葉だった。それを感じてマルタも嬉しそうにはにかんだ。
「あとで鏡で確認するが良い。さあそれでは戻るぞ。」
ロスティアがパチンと指を鳴らすとリリスの視界が暗転し、瞬時にゲストルームのソファの上に戻っていた。
時間はほとんど経っていない。コピースキルがまだ発動中だったからだ。
お互いの額を離すと、マルタは早速手鏡を取り出した。
「うんうん。これなら満足だわ。」
真希ちゃんったら、スキルよりもそっちの方が気になるのね。
まあ、属性魔法やスキルの確認は後でも出来るけどねえ。
嬉しそうなマルタの表情を見ながら、リリスは微笑ましい気分になった。
「ねえ、真希ちゃん。あの秘薬はどうするの?」
マルタは手鏡を懐に戻し、
「そうですね。見張られている可能性もあるので、不審に思われないように、少しづつ捨てるようにします。」
「うんうん。それが良いと思うわよ。それとこれを渡しておくわね。」
そう言いながらリリスはショルダーバッグから小さな魔道具を取り出した。ボタンの付いた黒い魔道具だ。
「これは非常時の連絡用の魔道具よ。ボタンを押すと私の持つ魔道具に信号が来るの。その信号で割り出した位置情報を元に、使い魔をそちらに召喚させる事が出来るわ。そこで私と使い魔の五感を同調させれば会話も可能だからね。間違いだった時は直ぐにボタンを二度押すのよ。」
「紗季さん、ありがとう。でもまだ1年間は猶予があると思うから・・・」
「そんな風に油断していちゃ駄目よ。この世界は突然予測不能な事が起きるからねえ。」
リリスの言葉にマルタはうんうんと頷き、魔道具を法衣の懐に仕舞い込んだ。
その後しばらく談笑していると、ドアがノックされ、シンディがゲストルームに入ってきた。時間になったようだ。
「大祭司様。今日はありがとうございました。」
丁寧に礼を言うリリスにマルタは微笑み、
「リリス様の上に聖なる御加護がありますように。」
そう言いながらマルタは静かに席を立った。その立ち居振る舞いが如何にも美しい。
リリスとシンディも立って礼をした。
その離れ際のマルタからふと、完全に健康な人間の魔力の波動を感じて、リリスも心から安心したのだった。
突然意識を失ったリリスの意識が戻ると、そこは真っ白な空間でロスティアとマルタが立っていた。
「リリス。こちらに来なさい。」
ロスティアに促されるままにリリスは二人に近付いた。
「ここはコピースキルで構築した亜空間だ。ここにお前を招き入れたのは、マルタの今後の生活を考えた場合に、お前から幾つかスキルや属性魔法をコピーしておいた方が良いと考えたからだ。」
うんうん。
それは必要かもね。
「マルタの身体は儂の魔力を用いて全快した。だが1年後になっても元気なマルタを見て、あと1年ほどで死んでしまうと判断した上で、この神殿に大祭司として送り込んだ連中が不審に思う事は間違いない。口封じに刺客を送り込む事も考えられる。そう考えると早めに神殿を去った方が良いかも知れんからな。」
ロスティアの言葉にマルタもう~んと唸って考え込んだ。
「まあ、時間の猶予は1年あるんだから、今のうちに準備しておけば良いわよ。いざとなったら他人に偽装する事だって可能だし・・・」
そう言ってリリスはマルタを励ました。
二人の様子を見てロスティアは優しく頷き、
「さて、とりあえずお前達のステータスを広げてみなさい。ステータスを強く意識すれば目に前に展開するはずだ。」
ロスティアの言葉に従って、二人はステータスを強く意識した。その途端に目の前に巨大な半透明のモニターが現われ、二人のステータスが表示された。
**************
リリス・ベル・クレメンス
種族:人族 レベル23
年齢:14
体力:1300
魔力:4000
属性:土・火
魔法:ファイヤーボール レベル5+++
ファイヤーボルト レベル7+++
アースウォール レベル7
加圧 レベル5+
アースランス レベル3
硬化 レベル3
(秘匿領域)
属性:水・聖・闇(制限付き)
魔法:ウォータースプラッシュ レベル1
ウォーターカッター レベル1
ヒール レベル1+ (親和性による補正有り)
液状化 レベル15 (制限付き)
黒炎 レベル2 (制限付き)
黒炎錬成 レベル2 (制限付き)
スキル:鑑定 レベル3
投擲 レベル3
魔力吸引(P・A) レベル3
魔力誘導 レベル3 (獣性要素による高度補正有り)
探知 レベル4++ (獣性要素による高度補正有り)
毒生成 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
解毒 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
毒耐性 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
火力増幅(加護と連携可能)
火力凝縮(加護と連携可能)
亜空間シールド(P・A)(加護と連携可能)
減圧(重力操作)レベル5+
調合 レベル2
魔装(P・A) (妖精化)
魔金属錬成 レベル1++(高度補正有り)
属性付与 レベル1++(高度補正有り)
スキル特性付与 レベル1++(高度補正有り)
呪詛構築 (データ制限有り)
瞬間移動(発動に制限有り)
覇竜の遺志を継ぐ者
解析
最適化
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マルタ・ソフィ・アリエスト
種族:人族 レベル25
年齢:20
体力:1000
魔力:3500
属性:聖・水
魔法:ヒール レベル10
エクストラヒール レベル7
エリアヒール レベル7
浄化 レベル10
ウォーターカッター レベル3
ウォータースプラッシュ レベル3
スキル:鑑定 レベル2
魔力誘導 レベル2
探知 レベル2
魂魄浄化 (発動不可)
体組織復活 (発動不可)
胎内回帰
至福の目覚め
ウェイクアップヒール
元聖女
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「ちょっと! 紗季さん! 何ですか、このステータスは!」
「5属性の持ち主って・・・開いた口が塞がらないわ。」
「それにスキルも・・・こんなにたくさんあるじゃないですか!」
マルタが大声を上げてリリスの顔を見た。
「紗季さんって勇者? いやいや、勇者が毒生成や呪詛構築なんて持たないわよね。もしかして魔王を目指しているんですか?」
「まあ、成り行きで手に入れちゃったのよね。私も最初は土魔法しか持っていなかったのよ。」
興奮するマルタを落ち着かせながら、リリスはそう呟いた。確かに嘘ではない。成り行きでここまで手に入れただけだ。
「どうやって手に入れるんですか?」
「それは・・・コピースキルがあるからなのよ。コピースキル自体はステータスにも表示されないけどね。」
マルタはう~んと唸った。
「これなら・・・・学生生活を謳歌しているって言うのも良く分かるわ。チートじゃないですか。設定にバグがあるに違いないわ。」
真希ちゃん。
ここはゲームのキャラ設定の場面じゃないからね。
「これなら無敵じゃないですか。」
「それがそうでもないのよね。気まぐれで動き回るとんでもない力を持つ連中が居るのよ。その連中に振り回されて、どれだけ危険な目に遭って来た事か・・・」
「そうなんですかあ?」
信じられないと言った表情でマルタは再びモニターを見つめた。
「魔金属錬成って何に使うんですか?」
「それは・・・魔金属でアクセサリーを作るのに便利なのよ。属性付与でおまけを付けて・・・」
「毒生成なんてどんな人からコピーしたんですか?」
「それは・・・ダンジョンの魔物からなのよ。」
「魔物まで・・・・・」
あらあら。
真希ちゃんったら絶句しちゃったわ。
本や仏像からコピーしたスキルもあるなんて、とても言えないわね。
「まあ、呆れているのは儂もだ。」
ロスティアは微妙な表情でリリスを見つめた。
「そんな目で見ないで下さいよ。それで真希ちゃんにコピーする魔法とスキルだけど・・・」
そう言いながらリリスは、マルタの顔を見て少し考えた。
「普通に生きていくなら火魔法は必要よね。あと土魔法があれば農作業も楽だわよ。」
「うむ。それなら指で押さえてスライドすれば良いぞ。」
ロスティアの言葉に従って、リリスは火魔法と土魔法を指で押さえ、モニターの上をスライドさせた。
その動作に従ってマルタのステータスに、火魔法と土魔法が追加された。
「まるでゲームのキャラ設定みたいですね。」
そう言って感心するマルタがふと考え込んだ。
「4属性の持ち主って目立ちませんか? 火と土はいざと言う時に使えれば良いんですけどね。」
「うむ。それならとりあえず秘匿領域に入れておこう。それからスキルだが何が良いかな?」
ロスティアに促されてリリスは少し考えた。
「真希ちゃん、毒生成は要る?」
「要りませんよ、そんなもの。」
即答するマルタであった。
「そうかなあ。あったら便利だけどね。確実に敵を倒せるわよ。」
「要らないですってば。でも護身用に解毒と毒耐性と亜空間シールドは欲しいですね。あと、魔装って何ですか? 妖精化って言う表記が気になるんですけど。」
まあそれはピクシーからコピーしたスキルだからねえ。
「精神攻撃に対する耐性が格段に強化されるわよ。探知能力もかなりアップされるわ。」
「表示と非表示の2形態があるんだけど、表示で発動すると・・・」
そう言いながらリリスは表示状態で魔装を発動した。
瞬時にリリスの背中に小さな黒い羽が生え、細い尻尾も生えた。頭には二本の触手も生えている。
「ええっ! 紗季さんが魔物になっちゃった!」
「だから妖精化だってば。ピクシーからコピーしたスキルだからね。もちろん非表示にも出来るのよ。」
そう言ってリリスは非表示状態に変更させた。瞬時にリリスの元の姿に戻ると、マルタはまじまじとリリスの背中や臀部を見つめた。
「う~ん。微妙だなあ。ピクシーの姿になっちゃうのかあ。・・・でも一応貰っておこうかな。」
マルタの指示に従ってリリスはスキルをスライドさせた。
マルタのステータスが大きく変わった。
**************
マルタ・ソフィ・アリエスト
種族:人族 レベル25
年齢:20
体力:1000
魔力:3500
属性:聖・水
魔法:ヒール レベル10
ハイ・ヒーリング レベル7
エリアヒール レベル7
浄化 レベル10
ウォーターカッター レベル3
ウォータースプラッシュ レベル3
スキル:鑑定 レベル2
魔力誘導 レベル2
探知 レベル2
魂魄浄化 (発動不可)
体組織復活 (発動不可)
胎内回帰
至福の目覚め
ウェイクアップヒール
元聖女
(秘匿領域)
属性:火・土
魔法:ファイヤーボール レベル1
ファイヤーボルト レベル1
アースウォール レベル1
アースランス レベル1
硬化 レベル1
スキル:解毒 レベル1(自律進化可)
毒耐性 レベル1(自律進化可)
亜空間シールド(P・A)(自律進化可)
魔装(P・A) (妖精化)(自律進化可)
**************
亜空間シールドは単体でコピーされたようだ。(自律進化可)と言う表記が気になるのだが・・・。
「まあ、良いんじゃないの。これならどこでも生きていけるわよ。」
「火魔法と土魔法のレベルは今後徐々に上げて行けば良いからね。」
リリスの言葉にマルタはうんうんと頷いた。
「ありがとう、紗季さん。でも逆に私のスキルで紗季さんにあげられるものって無いの?」
「う~ん。多分私には使えないものばかりだと思うわよ。私って闇魔法も持っているので、聖魔法にはある程度の制限が掛かるのよね。それにかなり特殊なスキルばかりじゃないの?」
リリスはそう言いながらマルタのステータスを指さした。
「魂魄浄化や体組織復活は、聖女様のスキルだろうから私には縁が無いわよね。胎内回帰や至福の目覚めって何?」
「それらはどれも特殊なヒールですね。エクストラヒールが使えないと発動出来ません。」
「それならやっぱり貰えるスキルは無いわね。良いわよ、私は現状維持で。」
リリスの言葉にロスティアはふっと失笑した。
「お前の事だから、そんな事を言いながら、またそのうちにスキルが増えていたりするのだろうな。」
ロスティアはそう言いながらパチンと指を鳴らした。その途端にステータスを表示していたモニターが消えてしまった。
「さあ、それでは元の世界に戻る事にしよう。」
ロスティアが次の動作に入ろうとすると、マルタが急に声を上げた。
「あっ!待ってください!」
ロスティアはうん?と唸ってマルタの顔を見た。
「属性魔法とスキルを追加してもらったことはありがたいのですが、もう一つお願いして良いですか?」
「お願いだと? 何だ? 言ってみなさい。」
聞く姿勢を見せたロスティアにマルタはおずおずと話し始めた。
「出来れば・・・顔のパーツを少しだけ変えていただけませんか?」
何を言い出すのよ。
リリスの疑問とは裏腹にロスティアは真摯に答えた。
「プチ整形程度なら可能だが、それで良いのか?」
「はい!それで結構です。実は私、子供の頃から目にコンプレックスがあって・・・」
「もう少し大きくして、二重にしたいんです。それに若干つり目なので、少し垂れ目気味に・・・」
あらまあ。
美容整形のクリニックの問診みたいだわ。
「まあ、良いだろう。だがそうすると周りの者が若干違和感を感じるのではないか?」
「周りの者にはメイクを変えたと言っておきます。」
そんな事で通じるのか知らねえ。
そう思ったリリスだが、マルタは真剣だ。余程コンプレックスに感じていたのだろう。
ロスティアがマルタの顔の前で手を振ると、マルタの目が若干大きくなり二重になっていた。
「あらっ! 可愛いくなったわね、真希ちゃん。」
それはリリスの本心からの言葉だった。それを感じてマルタも嬉しそうにはにかんだ。
「あとで鏡で確認するが良い。さあそれでは戻るぞ。」
ロスティアがパチンと指を鳴らすとリリスの視界が暗転し、瞬時にゲストルームのソファの上に戻っていた。
時間はほとんど経っていない。コピースキルがまだ発動中だったからだ。
お互いの額を離すと、マルタは早速手鏡を取り出した。
「うんうん。これなら満足だわ。」
真希ちゃんったら、スキルよりもそっちの方が気になるのね。
まあ、属性魔法やスキルの確認は後でも出来るけどねえ。
嬉しそうなマルタの表情を見ながら、リリスは微笑ましい気分になった。
「ねえ、真希ちゃん。あの秘薬はどうするの?」
マルタは手鏡を懐に戻し、
「そうですね。見張られている可能性もあるので、不審に思われないように、少しづつ捨てるようにします。」
「うんうん。それが良いと思うわよ。それとこれを渡しておくわね。」
そう言いながらリリスはショルダーバッグから小さな魔道具を取り出した。ボタンの付いた黒い魔道具だ。
「これは非常時の連絡用の魔道具よ。ボタンを押すと私の持つ魔道具に信号が来るの。その信号で割り出した位置情報を元に、使い魔をそちらに召喚させる事が出来るわ。そこで私と使い魔の五感を同調させれば会話も可能だからね。間違いだった時は直ぐにボタンを二度押すのよ。」
「紗季さん、ありがとう。でもまだ1年間は猶予があると思うから・・・」
「そんな風に油断していちゃ駄目よ。この世界は突然予測不能な事が起きるからねえ。」
リリスの言葉にマルタはうんうんと頷き、魔道具を法衣の懐に仕舞い込んだ。
その後しばらく談笑していると、ドアがノックされ、シンディがゲストルームに入ってきた。時間になったようだ。
「大祭司様。今日はありがとうございました。」
丁寧に礼を言うリリスにマルタは微笑み、
「リリス様の上に聖なる御加護がありますように。」
そう言いながらマルタは静かに席を立った。その立ち居振る舞いが如何にも美しい。
リリスとシンディも立って礼をした。
その離れ際のマルタからふと、完全に健康な人間の魔力の波動を感じて、リリスも心から安心したのだった。
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☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
どうぞお好きに
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