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少年とダンジョン3
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閉じ込められたドーム状の空間。その中央にはデュラハンのハーグが高笑いをしている。
攻略の手立てを求め、リリスは解析スキルを発動させた。
聖魔法が効かないの?
『馬の纏っている防具が聖魔法を無効にしていますね。あの防具には特殊な呪詛が組み込まれているようです。』
そうなのね。
それでリト君の聖魔法が効かなかったのね。
それでどうすれば良いの?
『あの馬の防具を破壊するしか道は有りませんね。』
破壊出来るの?
『呪詛を解呪出来れば可能です。』
解呪!
そう言えば破邪の剣を構成していた呪詛って再構築出来るはずよね。あの呪詛って解呪に特化した特殊なものばかりだって言ってたわよね。
『その通りです。』
それなら使ってみる価値はあるわね。でも呪詛を纏わらせる剣と言ってもダガーしかないから、接近戦に持ち込むしかないのかしら?
『破邪の剣の形状だけなら魔力で再現出来ますよ。それに魔力の剣なら長さも自在です。』
でもそんな長剣振り回せないわよ。
『自分の魔力だから力は要りませんよ。ダガーから魔力で伸延して構築するのがお勧めです。』
そうよね。手元に物質感があった方が良いわよね。
リリスは即座にダガーを手に持ち直した。それを前に突き出してグッと魔力を注ぎ、解析スキルが取り込んでいた破邪の剣のデータを基に錬成していく。
ダガーから青白い魔力の光が伸びると、それは長さ1mほどの半透明の刀身となった。
青白く光る半透明の剣だ。
「リリス君! それは何なんだ?」
ジークも驚きの表情で見つめている。
「リト君! この剣に聖魔法の魔力を流して!」
リトラスはリリスの声に反応して即座に聖魔法の魔力を流してきた。魔力の剣はそれに応じて更に輝きを増す。
同時にリリスは呪詛構築のスキルを発動させ、破邪の剣から取り込んでいた解呪の呪詛をすべて再構築し、魔力の剣に纏わらせた。
リリスの手首から金色の紐のような呪詛が伸び出して、魔力の剣に纏わり付いて行く。
その形状は実に異様だ。
「それって・・・何なの?」
芋虫の問い掛けをスルーして、リリスは剣を完成させた。ジークも驚きのあまり声も出ない。
金色の紐状の模様を纏った半透明の青白い刀身は、リトラスの聖魔法も加えて更に伸び、長さが2m近くにもなった。
だがそれでも重さは感じない。リリスの手に感じられるのは、手に持っているダガーの質量のみだ。
これならいくらでも振り回せる。
「リト君! 身体強化を掛けて!」
リリスの声に応じてその意図を理解したリトラスは、身体強化と共にブーストを掛けた。
リリスは瞬時にハーグに駆け寄り、ハーグの剣を躱しながら魔力の剣で馬の防具に切りつけた。
眩い光が放たれ、パアンと言う音と共に馬の防具の横縞が消えて行く。それと同時に禍々しい気配が防具から消えた。呪詛の解呪に成功したようだ。
これでハーグの本体を狙える!
リリスは瞬時に態勢を整え、魔力を蓄えながらハーグから少し距離を取った。
「リト君! スラッシュで止めを刺すわよ!」
そう言いながら駆け出したリリスの声に応じてリトラスが聖魔法の魔力を蓄え、発動のタイミングを探った。リトラスの身体強化のお陰でリリスの身体の動きが速い。リリスを警戒するハーグの振るった剣の動きも緩やかに見えるほどだ。上手く剣を躱すリリスの動きにハーグの首が驚きの表情を見せる。
リリスは更にハーグに駆け寄って距離を詰め、魔力の長剣を斜め上段に振り上げた。
ここだ!
リリスがハーグの剣の動きを躱しながら、一気に袈裟懸けに切り下すそのタイミングで、リトラスはスラッシュを発動させた。
「「スラッシュ!」」
憑依でシンクロした二人の声が同時に放たれた。それはスラッシュの発動のきっかけでもある。
発動されたスラッシュで魔力の長剣は一気にその長さと幅を伸ばし、白く光り輝く巨大な剣となってハーグの身体に襲い掛かる。
聖魔法の魔力で構成された剣がハーグに近付くに連れて更に光を増し、一気にハーグの身体を一閃した。
「ウオオオオオオオッ!」
おぞましい悲鳴を上げるハーグの身体が斜めに分断され、その中から黒い霧が立ち上った。それと同時に馬が消えていく。
程なく両断されたハーグも霧のように消えていった。
「勝ったわ!」
芋虫の歓喜の叫びが聞こえた。
一方ジークはデュラハンを倒すなんて信じられないと言った表情で、リリスの顔を無言で見つめていた。
台座の魔方陣も消えていく。だが台座の中央にぽっと小さな青白い光の球が現われた。
まだ消え去っていないのか?
リリスは再び魔力の剣をかまえて、その光に少しづつ近寄った。
青白い光の球は徐々に形を変えていく。それは次第に人の形となった。半透明だが甲冑を纏った騎士の姿だ。
「よくぞ儂を闇のくびきから解放してくれた。礼を言うぞ。」
端正な顔の騎士がリリスに話し掛けて来た。これはデュラハンになっていたハーグの本来の姿なのだろうか?
「あなたは・・・ハーグさんですか?」
「如何にも。儂は生前はアストレア神聖王国の王族であり聖騎士だったのだが、政争に巻き込まれ、結果として闇に落ちてしまった。その上に敵の策略でデュラハンとなって長く封じられていたのだが、お前のお陰でそのくびきからも解放された。改めて礼を言うぞ。」
そう言いながらハーグは持っていた長剣をリリスの目の前に置いた。半透明であったハーグの長剣が徐々に実体化していく。だが現れた長剣は刀身が半分ほど朽ちていて、柄もボロボロになっていた。
「かなり傷んでしまっているが、これは儂が愛用していた聖剣だ。銘をホーリースタリオンと言う。朽ちてはいるが材料は希少な魔金属だ。お前ならそれを錬成出来るだろう。」
そう言われたリリスは若干戸惑った。
「私が錬成出来ると思うのですか?」
「何を惚けておるのだ。儂の目の前で魔力の剣を錬成したではないか。」
あら、バレちゃってるわ。
意外に良く見てるのね。
「ホーリースタリオンは聖魔法の属性を持つ者が所持してこそ、その真価が現われる。錬成して儂を解放した聖魔法の持ち主に授けるが良い。」
ああ、そう言う事なのね。
ハーグはリリスの肩の使い魔を見つめた。
「そこに憑依している少年、名は何と言うのだ?」
どうやらリトラスの存在を理解しているようだ。
「リトラスです。」
「うむ。そなたの聖魔法の素養は非常に優秀だ。研鑽を積み聖騎士となって世に正義と公正の理を立てよ。」
そう言いながらハーグの身体は次第に薄れていく。
スッと消え去った後、台座の中央から微かな声が聞こえてきた。
「決して・・・儂のように・・・闇に落ちてはならぬぞ。」
「その言葉、心に留め置きます!」
リトラスがそう叫ぶと、朽ちていたホーリースタリオンが一瞬青白い光を放った。ハーグに別れを告げたのかも知れない。
「これで終わったんだね。」
そう言いながらジークがリリスに近付いた。
だがその時リリスの周囲のものがすべて動きを止めた。驚いたリリスが自分の肩に目を向けると、芋虫までその動きが止まっている。
リリスも身体が動かないのだが、首から上は動くようだ。
そのリリスの目の前に黒い霧が現われ、その中から見覚えのあるリッチが姿を現した。
ダンジョンマスターのゲールだ。
ゲールはリリスの目の前まで近づいてきた。
「リリス。大丈夫だったか?」
「大丈夫じゃないわよ!」
思わず声を荒げたリリスにゲールはまあまあと宥めながら、
「ダンジョンコアが暴走してしまったのだよ。落ち着かせるのにかなり手間取ってしまったのだ。」
「どうして暴走しちゃったの?」
リリスの問い掛けにゲールは顔をしかめ、
「お前が原因なのだ。お前がこのダンジョンに入ってきた途端に、巨大な魔物の気配を感じたのだよ。それも明らかに好戦的な波動だった。このダンジョンを全て焼き尽くそうと言う強烈な意志すら感じたのだ。」
「だが何故あれほどまでにダンジョンコアが過敏に反応したのかは、儂にもよく分からないのだ。」
それってもしかして覇竜の加護の影響なの?
話がややこしくなりそうなので、リリスは竜の加護を貰ったとだけゲールに伝えた。
「それでダンジョンコアの暴走でデュラハンが現われたの?」
「そうだ。あれは本来は第40階層に棲み着いていたものだ。だがそれにしても良く倒せたものだな。あのデュラハンは本来は高位の聖騎士や、浄化に特化したビショップを擁したパーティでなければ倒せんはずなのだが・・・」
そう言いながらゲールはリリスの肩で固まっている芋虫を見た。
「そうか。その状態なら3人でパーティを組んでいるようなものだな。」
うんうん、そうよね。
メルやリト君とパーティを組んで闘ったと言えるわね。
「それでゲールさん、この状況は・・・」
リリスの問い掛けにゲールはそうそうと言いながら、
「お前に聞いておこうと思ったのだよ。お前がデュラハンを倒した事は無かった事にしたくないのか?」
ああ、私に気を遣ってくれたのね。
ゲールはおそらく、ジークやメリンダ王女やリトラスの記憶を操作してくれるつもりなのだろう。
「デュラハンとの戦闘の記憶を消してしまうと、リト君が頑張った事まで消えてしまうわ。彼には自信を持って欲しいのよ。だからデュラハンとの戦闘の記憶は消したくないんだけど・・・」
リリスの言葉を聞いてゲールはう~んと考え込んだ。少し間を置いて、
「それならその少年の聖魔法で簡単に倒せた事にしよう。それで良いか?」
「それならありがたいわ。ついでに魔力の剣の錬成や構築した呪詛の事も消しておいてね。」
リリスの言葉にゲールは唖然とした。
「リリス、お前はそんなスキルまで持っているのか? 呆れた奴だな。それならあのデュラハンを倒せたのもうなづけるわい。」
ゲールはそう言うと手を突き出し、周囲に魔力を放った。
その途端にリリスの目の前が暗転し、気が付くと台座の前でジークが転移の魔石を取り出していた。
「あのデュラハンは強そうだったが、難なく倒せたのはリトラス君の聖魔法のお陰だね。それじゃあ帰ろうか。」
そう言う事になっているのね。
まあ、リト君が自信を持ってくれればそれで良いわよ。
そう思って肩の芋虫を見ると実に嬉しそうだ。リトラスが活躍したと言う事になっているのだろう。
転移の魔石が発動して目の前が再び暗転した。
こうしてリリス達は魔法学院の地下の訓練場に無事戻ったのだった。
攻略の手立てを求め、リリスは解析スキルを発動させた。
聖魔法が効かないの?
『馬の纏っている防具が聖魔法を無効にしていますね。あの防具には特殊な呪詛が組み込まれているようです。』
そうなのね。
それでリト君の聖魔法が効かなかったのね。
それでどうすれば良いの?
『あの馬の防具を破壊するしか道は有りませんね。』
破壊出来るの?
『呪詛を解呪出来れば可能です。』
解呪!
そう言えば破邪の剣を構成していた呪詛って再構築出来るはずよね。あの呪詛って解呪に特化した特殊なものばかりだって言ってたわよね。
『その通りです。』
それなら使ってみる価値はあるわね。でも呪詛を纏わらせる剣と言ってもダガーしかないから、接近戦に持ち込むしかないのかしら?
『破邪の剣の形状だけなら魔力で再現出来ますよ。それに魔力の剣なら長さも自在です。』
でもそんな長剣振り回せないわよ。
『自分の魔力だから力は要りませんよ。ダガーから魔力で伸延して構築するのがお勧めです。』
そうよね。手元に物質感があった方が良いわよね。
リリスは即座にダガーを手に持ち直した。それを前に突き出してグッと魔力を注ぎ、解析スキルが取り込んでいた破邪の剣のデータを基に錬成していく。
ダガーから青白い魔力の光が伸びると、それは長さ1mほどの半透明の刀身となった。
青白く光る半透明の剣だ。
「リリス君! それは何なんだ?」
ジークも驚きの表情で見つめている。
「リト君! この剣に聖魔法の魔力を流して!」
リトラスはリリスの声に反応して即座に聖魔法の魔力を流してきた。魔力の剣はそれに応じて更に輝きを増す。
同時にリリスは呪詛構築のスキルを発動させ、破邪の剣から取り込んでいた解呪の呪詛をすべて再構築し、魔力の剣に纏わらせた。
リリスの手首から金色の紐のような呪詛が伸び出して、魔力の剣に纏わり付いて行く。
その形状は実に異様だ。
「それって・・・何なの?」
芋虫の問い掛けをスルーして、リリスは剣を完成させた。ジークも驚きのあまり声も出ない。
金色の紐状の模様を纏った半透明の青白い刀身は、リトラスの聖魔法も加えて更に伸び、長さが2m近くにもなった。
だがそれでも重さは感じない。リリスの手に感じられるのは、手に持っているダガーの質量のみだ。
これならいくらでも振り回せる。
「リト君! 身体強化を掛けて!」
リリスの声に応じてその意図を理解したリトラスは、身体強化と共にブーストを掛けた。
リリスは瞬時にハーグに駆け寄り、ハーグの剣を躱しながら魔力の剣で馬の防具に切りつけた。
眩い光が放たれ、パアンと言う音と共に馬の防具の横縞が消えて行く。それと同時に禍々しい気配が防具から消えた。呪詛の解呪に成功したようだ。
これでハーグの本体を狙える!
リリスは瞬時に態勢を整え、魔力を蓄えながらハーグから少し距離を取った。
「リト君! スラッシュで止めを刺すわよ!」
そう言いながら駆け出したリリスの声に応じてリトラスが聖魔法の魔力を蓄え、発動のタイミングを探った。リトラスの身体強化のお陰でリリスの身体の動きが速い。リリスを警戒するハーグの振るった剣の動きも緩やかに見えるほどだ。上手く剣を躱すリリスの動きにハーグの首が驚きの表情を見せる。
リリスは更にハーグに駆け寄って距離を詰め、魔力の長剣を斜め上段に振り上げた。
ここだ!
リリスがハーグの剣の動きを躱しながら、一気に袈裟懸けに切り下すそのタイミングで、リトラスはスラッシュを発動させた。
「「スラッシュ!」」
憑依でシンクロした二人の声が同時に放たれた。それはスラッシュの発動のきっかけでもある。
発動されたスラッシュで魔力の長剣は一気にその長さと幅を伸ばし、白く光り輝く巨大な剣となってハーグの身体に襲い掛かる。
聖魔法の魔力で構成された剣がハーグに近付くに連れて更に光を増し、一気にハーグの身体を一閃した。
「ウオオオオオオオッ!」
おぞましい悲鳴を上げるハーグの身体が斜めに分断され、その中から黒い霧が立ち上った。それと同時に馬が消えていく。
程なく両断されたハーグも霧のように消えていった。
「勝ったわ!」
芋虫の歓喜の叫びが聞こえた。
一方ジークはデュラハンを倒すなんて信じられないと言った表情で、リリスの顔を無言で見つめていた。
台座の魔方陣も消えていく。だが台座の中央にぽっと小さな青白い光の球が現われた。
まだ消え去っていないのか?
リリスは再び魔力の剣をかまえて、その光に少しづつ近寄った。
青白い光の球は徐々に形を変えていく。それは次第に人の形となった。半透明だが甲冑を纏った騎士の姿だ。
「よくぞ儂を闇のくびきから解放してくれた。礼を言うぞ。」
端正な顔の騎士がリリスに話し掛けて来た。これはデュラハンになっていたハーグの本来の姿なのだろうか?
「あなたは・・・ハーグさんですか?」
「如何にも。儂は生前はアストレア神聖王国の王族であり聖騎士だったのだが、政争に巻き込まれ、結果として闇に落ちてしまった。その上に敵の策略でデュラハンとなって長く封じられていたのだが、お前のお陰でそのくびきからも解放された。改めて礼を言うぞ。」
そう言いながらハーグは持っていた長剣をリリスの目の前に置いた。半透明であったハーグの長剣が徐々に実体化していく。だが現れた長剣は刀身が半分ほど朽ちていて、柄もボロボロになっていた。
「かなり傷んでしまっているが、これは儂が愛用していた聖剣だ。銘をホーリースタリオンと言う。朽ちてはいるが材料は希少な魔金属だ。お前ならそれを錬成出来るだろう。」
そう言われたリリスは若干戸惑った。
「私が錬成出来ると思うのですか?」
「何を惚けておるのだ。儂の目の前で魔力の剣を錬成したではないか。」
あら、バレちゃってるわ。
意外に良く見てるのね。
「ホーリースタリオンは聖魔法の属性を持つ者が所持してこそ、その真価が現われる。錬成して儂を解放した聖魔法の持ち主に授けるが良い。」
ああ、そう言う事なのね。
ハーグはリリスの肩の使い魔を見つめた。
「そこに憑依している少年、名は何と言うのだ?」
どうやらリトラスの存在を理解しているようだ。
「リトラスです。」
「うむ。そなたの聖魔法の素養は非常に優秀だ。研鑽を積み聖騎士となって世に正義と公正の理を立てよ。」
そう言いながらハーグの身体は次第に薄れていく。
スッと消え去った後、台座の中央から微かな声が聞こえてきた。
「決して・・・儂のように・・・闇に落ちてはならぬぞ。」
「その言葉、心に留め置きます!」
リトラスがそう叫ぶと、朽ちていたホーリースタリオンが一瞬青白い光を放った。ハーグに別れを告げたのかも知れない。
「これで終わったんだね。」
そう言いながらジークがリリスに近付いた。
だがその時リリスの周囲のものがすべて動きを止めた。驚いたリリスが自分の肩に目を向けると、芋虫までその動きが止まっている。
リリスも身体が動かないのだが、首から上は動くようだ。
そのリリスの目の前に黒い霧が現われ、その中から見覚えのあるリッチが姿を現した。
ダンジョンマスターのゲールだ。
ゲールはリリスの目の前まで近づいてきた。
「リリス。大丈夫だったか?」
「大丈夫じゃないわよ!」
思わず声を荒げたリリスにゲールはまあまあと宥めながら、
「ダンジョンコアが暴走してしまったのだよ。落ち着かせるのにかなり手間取ってしまったのだ。」
「どうして暴走しちゃったの?」
リリスの問い掛けにゲールは顔をしかめ、
「お前が原因なのだ。お前がこのダンジョンに入ってきた途端に、巨大な魔物の気配を感じたのだよ。それも明らかに好戦的な波動だった。このダンジョンを全て焼き尽くそうと言う強烈な意志すら感じたのだ。」
「だが何故あれほどまでにダンジョンコアが過敏に反応したのかは、儂にもよく分からないのだ。」
それってもしかして覇竜の加護の影響なの?
話がややこしくなりそうなので、リリスは竜の加護を貰ったとだけゲールに伝えた。
「それでダンジョンコアの暴走でデュラハンが現われたの?」
「そうだ。あれは本来は第40階層に棲み着いていたものだ。だがそれにしても良く倒せたものだな。あのデュラハンは本来は高位の聖騎士や、浄化に特化したビショップを擁したパーティでなければ倒せんはずなのだが・・・」
そう言いながらゲールはリリスの肩で固まっている芋虫を見た。
「そうか。その状態なら3人でパーティを組んでいるようなものだな。」
うんうん、そうよね。
メルやリト君とパーティを組んで闘ったと言えるわね。
「それでゲールさん、この状況は・・・」
リリスの問い掛けにゲールはそうそうと言いながら、
「お前に聞いておこうと思ったのだよ。お前がデュラハンを倒した事は無かった事にしたくないのか?」
ああ、私に気を遣ってくれたのね。
ゲールはおそらく、ジークやメリンダ王女やリトラスの記憶を操作してくれるつもりなのだろう。
「デュラハンとの戦闘の記憶を消してしまうと、リト君が頑張った事まで消えてしまうわ。彼には自信を持って欲しいのよ。だからデュラハンとの戦闘の記憶は消したくないんだけど・・・」
リリスの言葉を聞いてゲールはう~んと考え込んだ。少し間を置いて、
「それならその少年の聖魔法で簡単に倒せた事にしよう。それで良いか?」
「それならありがたいわ。ついでに魔力の剣の錬成や構築した呪詛の事も消しておいてね。」
リリスの言葉にゲールは唖然とした。
「リリス、お前はそんなスキルまで持っているのか? 呆れた奴だな。それならあのデュラハンを倒せたのもうなづけるわい。」
ゲールはそう言うと手を突き出し、周囲に魔力を放った。
その途端にリリスの目の前が暗転し、気が付くと台座の前でジークが転移の魔石を取り出していた。
「あのデュラハンは強そうだったが、難なく倒せたのはリトラス君の聖魔法のお陰だね。それじゃあ帰ろうか。」
そう言う事になっているのね。
まあ、リト君が自信を持ってくれればそれで良いわよ。
そう思って肩の芋虫を見ると実に嬉しそうだ。リトラスが活躍したと言う事になっているのだろう。
転移の魔石が発動して目の前が再び暗転した。
こうしてリリス達は魔法学院の地下の訓練場に無事戻ったのだった。
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