97 / 326
思い掛けない頂き物
しおりを挟む
リゾルタから帰ってきた翌日。
授業前の教室では生徒達の賑やかな話し声が聞こえてきた。休暇を利用して帰省した者も居れば、友人と数人で旅行に行った者も居る。
旅行と言っても短期間の休暇だったので、近場に一泊する程度のものだったようだが、おそらく父兄を交えてのものだったのだろう。
休暇明けの座学は眠気を催す。それでなくてもリゾルタで肉体と魔力を酷使したリリスにはまだ若干の疲れが残っている。
つい生欠伸をしてしまう自分を諫めながら、リリスは授業に臨んだ。
午前の授業を終えた時、リリスは担任のケイト先生から、学舎5階のゲストルームに行くように伝言を受けた。
このゲストルームは主に父兄が学院を訪れた際に使う部屋で、リリスは生徒会の用事で一度使った事がある。
豪華とまでは言えないが、それなりに上品な内装が施されていて、父兄からの評判も良い。
リリスはゲストルームの白い扉をノックして、部屋の中に入った。
大きなソファに座って寛いでいたのは、2人のスーツ姿の若い男性とその2人の間に座る小熊。
見覚えのある使い魔を見てリリスはあっと驚きの声を上げた。
「ライオネス様! どうしてここに?」
リリスを迎えるように2人の男性が立ち上がった。その顔をよく見ると、リゾルタで会ったライオネスの親衛部隊の兵士だ。
スーツ姿で座っていたので良く分からなかったが、立ち上がると大柄でマッチョな体つきが目に入る。
「リリス君。待っていたよ。」
そう言うと小熊はリリスを対面のソファに座るように誘った。
恐縮して座るリリスに笑顔を振り向け、2人の男性が小熊の両側に座る。小熊を守る2人の兵士と言う構図も妙なものだ。
リリスが座ると、ライオネスは早速話を切り出した。
「リリス君、リゾルタでの君の活躍には感謝しているよ。」
「それで今日ここに来た要件だが・・・・・」
また、何か厄介事を持ち込まれるんじゃないでしょうね。
そう思ったリリスは反射的に、訝し気な表情を見せてしまった。
それを見透かしたように小熊は笑いながら、
「今日ここに来たのは、これを君に手渡す為なのだよ。」
そう言って傍に座る兵士に取り出させたのは、手のひらに入るほどの大きさの黒い皮袋だった。
巾着上になっていて何かが入っているようだ。
手渡された皮袋を開けると、中に入っていたのは直径10cmほどで、厚み1cmほどの円盤状の物体だった。外側は黒く中は半透明で硬めのゴムのような感触だ。
何かを輪切りにしたような形状だが、これは何だろうか?
何となく魔力に反応しそうな気配も漂っている。
「それはリゾルタの王宮の宝物庫から持ち出してきたものだ。君はそれを見るのは初めてのようだね。」
「話には聞いた事があるの思うのだが・・・・・それは竜の髭だよ。高位の竜の髭を輪切りにしたものだ。」
竜の髭!
そう聞いてリリスは1年生の時の授業を思い出した。
これは魔力の受容体だ。
魔法使いに活用されている魔力の受容体は多数あるが、その中でも竜の髭は最高級のものとして認識されている。比較的多くの魔力を貯めておけるのだ。
魔力切れを起こすような非常事態に際して、ポーションの代わりに魔力を補填するのが目的で、過去においては高位の魔法使いや武将が戦場に携帯する事が
主な用途だった。
マナポーションの普及もあって最近ではあまり見られないが、瞬時に魔力を補填出来る利便性はポーションに勝るので大切にされている。
「これを私にくださるのですか?」
「そうだよ。先日の王宮での出来事をアイリスに話したところ、これを君に持たせれば良いと言う事になったんだ。」
そう言われても今一つピンとこないリリスである。
その様子に小熊は説明を続けた。
「その竜の髭に君の魔力を注いで携帯すれば良い。そうすれば君から竜の気配がしたとしても、その竜の髭が原因だと説明できるはずだ。」
ああ、そう言う事なのね。
あのドラゴニュート達に察知されて、不審に思われたのを心配してくださったのね。
そう理解してリリスは感謝の思いを小熊に伝えた。
「正直言って僕達には君の魔力に竜の気配があるなんて分からない。君が竜の加護を持っているとしても、それがそんなに重要な事だとも思わない。加護はあくまでも加護だ。お守りのようなものだろうからね。」
「でもドラゴニュート達には若干意味が違ってくるようだ。だから保険だと思って持っていれば良い。今度リゾルタに来る時にはそれを携帯する事を忘れないようにね。」
ふうんとうなづくリリスに小熊は畳みかけるように話を続けた。
「王宮の神殿はあと2週間ほどで修復出来る見込みだ。その際には君にも来てもらうからね。」
「ええっ! 私も行くんですか?」
リリスの驚きを小熊は意にも介せず、
「そうだよ。君も連れて来る様にとユリアから指示されているんだ。」
ユリアがそう言っていたの?
どう言う意図があるのかしら?
「だって授業が・・・・・」
「そんなものは王族同士の話し合いで何とでもなるさ。」
そう言いながら小熊と2人の兵士はソファから立ち上がった。
「僕はこれから義父、つまりミラ王国の国王様にお会いする事になっている。アイリスの様子も聞きたいそうだからね。これで失礼するよ。」
小熊はそう言うと兵士の肩に留まり、手を振ってゲストルームから出て行った。
後に残されたのはリリスである。
話が一方的よねえ。
でも竜の髭を貰ったのだから、感謝しないとね。
そう思ってリリスは早速自分の魔力を竜の髭に注いでみた。だが意外にも竜の髭には魔力がかなり多く蓄積出来るようだ。
魔力を注いだ竜の髭は半透明の本体が仄かに赤みを帯びてきた。
これってマナポーション数本分はあるわよ。
かなりの大容量である。しかも所持者への魔力補充にはほとんど時間が掛からない。聞いていた以上の優れ物なのだ。
気を良くしたリリスは竜の髭を皮袋に戻し、制服のポケットに入れてゲストルームを出た。
ゲストルームのある5階から階段を降りて行く途中で、リリスは何気なく生徒会の部屋に立ち寄った。
放課後に整理する資料を確認する為だったのだが、ドアを開けるとニーナと下級生のエリスが椅子に座って談笑していた。
「あらっ? 珍しいわね、ニーナ。生徒会の部屋に来るなんて、どうしたの?」
リリスの言葉にニーナはえへへと笑いながら、
「エリスとダンジョンチャレンジの打ち合わせをしていたのよ。」
「ダンジョンチャレンジって・・・二人で?」
リリスの疑問も当然だ。ニーナもエリスもすでに何度もダンジョンチャレンジをしている筈なのだが・・・。
不思議がるリリスにエリスが説明を始めた。
「今回はロイド先生の提案なんですよ。ダンジョンチャレンジの特別補講に1回分の枠が残っているそうです。それで、私とニーナ先輩の魔法やスキルの相性が良さそうなので、一度試しにペアで取り組んでみないかって。」
う~ん。
そう言われると確かに魔法やスキルでお互いに補い合えそうねえ。
「それにエリスと話していると、気が合うのよね。」
そう言って愛くるしい笑顔を見せるニーナの表情はいつも以上に明るい。本当に気が合って居そうだ。
「うん。ニーナとエリスが組んだら何処のダンジョンでも大丈夫よ。」
そう言って自分のデスクに回り込むためにリリスはニーナの目の前を通り過ぎた。その時、ニーナがうん?と怪訝そうに唸った。
「リリスから強い魔物の気配がするんだけど・・・」
ニーナがボソッと呟いた。リリスはうっと唸って思わず立ち止まった。
探知能力に長けた人物が此処に居たのだ。
ニーナったら探知スキルのレベルを更に上げたのかしら?
やけに敏感じゃないの。
リリスは制服のポケットから皮袋を取り出し、おかしいなあと呟くニーナの前に置いた。
「魔物の気配がするとしたら、多分それが原因よ。」
リリスの言葉にニーナは首を傾げ、皮袋を手に取りその中を調べた。
「これってもしかして・・・・・」
ニーナが手にした皮袋の中身をエリスはまじまじと見つめ、えっと小さく驚きの声を上げた。
「これって・・・・・竜の髭ですか?」
エリスの目を見つめてリリスはうんとうなづいた。
エリスは興味津々の表情で竜の髭をツンツンと突き、
「私、竜の髭の現物を見るのは初めてです。でも中が血のように赤くてまるで生きているみたい。」
そう言われて改めて竜の髭を見ると、先程よりも赤みが増しているように思える。
生きている筈は無いのに。
「これはリゾルタの王家から貰ったのよ。」
「ああ、それってキメラ退治と神殿修理の褒賞ですね。」
平然と話すエリスにリリスは違和感を覚えた。
「どうしてそれを知っているの?」
「だってメリンダ様がクラスのみんなに話していましたよ。」
メルだ。あの子ったら、相手かまわずべらべらと喋っているのかしら?
あまり吹聴しないで欲しいわね。
私を敵対視する者だって居るかも知れないのに。
チッと心の中で舌打ちしながらもリリスはそれを顔に出さないように心掛けた。
「あまり話題にしないでね。大したことじゃないから・・・」
そう言いながらも引きつりそうになる表情を堪えて、リリスはわざとらしい照れ笑いを見せた。
ニーナを見るとまだ若干納得出来なさそうな表情で、
「う~ん。竜の髭だけじゃなくてリリスからも感じるような気がする・・・・」
小声で呟くニーナの手から龍の髭を奪い取るよう取り上げ、気のせいよと言いながらリリスはそれを皮袋に戻した。
ニーナったら本当に敏感な子ねえ。優秀なスキルを持っているだけに厄介なんだから・・・。
そう思いつつ、リリスは自分のデスクに戻り、資料の整理を始めた。
5分ほど資料を整理して、リリスは生徒会の部屋を後にした。
ニーナとエリスに見送られて、リリスが次に向かったのは、ケイト先生が管理している薬草園だ。
竜からコピーしたスキルを試さなくっちゃね。
リリスは昼食も後回しにして、学舎から薬草園に急ぎ足で向かって行った。
授業前の教室では生徒達の賑やかな話し声が聞こえてきた。休暇を利用して帰省した者も居れば、友人と数人で旅行に行った者も居る。
旅行と言っても短期間の休暇だったので、近場に一泊する程度のものだったようだが、おそらく父兄を交えてのものだったのだろう。
休暇明けの座学は眠気を催す。それでなくてもリゾルタで肉体と魔力を酷使したリリスにはまだ若干の疲れが残っている。
つい生欠伸をしてしまう自分を諫めながら、リリスは授業に臨んだ。
午前の授業を終えた時、リリスは担任のケイト先生から、学舎5階のゲストルームに行くように伝言を受けた。
このゲストルームは主に父兄が学院を訪れた際に使う部屋で、リリスは生徒会の用事で一度使った事がある。
豪華とまでは言えないが、それなりに上品な内装が施されていて、父兄からの評判も良い。
リリスはゲストルームの白い扉をノックして、部屋の中に入った。
大きなソファに座って寛いでいたのは、2人のスーツ姿の若い男性とその2人の間に座る小熊。
見覚えのある使い魔を見てリリスはあっと驚きの声を上げた。
「ライオネス様! どうしてここに?」
リリスを迎えるように2人の男性が立ち上がった。その顔をよく見ると、リゾルタで会ったライオネスの親衛部隊の兵士だ。
スーツ姿で座っていたので良く分からなかったが、立ち上がると大柄でマッチョな体つきが目に入る。
「リリス君。待っていたよ。」
そう言うと小熊はリリスを対面のソファに座るように誘った。
恐縮して座るリリスに笑顔を振り向け、2人の男性が小熊の両側に座る。小熊を守る2人の兵士と言う構図も妙なものだ。
リリスが座ると、ライオネスは早速話を切り出した。
「リリス君、リゾルタでの君の活躍には感謝しているよ。」
「それで今日ここに来た要件だが・・・・・」
また、何か厄介事を持ち込まれるんじゃないでしょうね。
そう思ったリリスは反射的に、訝し気な表情を見せてしまった。
それを見透かしたように小熊は笑いながら、
「今日ここに来たのは、これを君に手渡す為なのだよ。」
そう言って傍に座る兵士に取り出させたのは、手のひらに入るほどの大きさの黒い皮袋だった。
巾着上になっていて何かが入っているようだ。
手渡された皮袋を開けると、中に入っていたのは直径10cmほどで、厚み1cmほどの円盤状の物体だった。外側は黒く中は半透明で硬めのゴムのような感触だ。
何かを輪切りにしたような形状だが、これは何だろうか?
何となく魔力に反応しそうな気配も漂っている。
「それはリゾルタの王宮の宝物庫から持ち出してきたものだ。君はそれを見るのは初めてのようだね。」
「話には聞いた事があるの思うのだが・・・・・それは竜の髭だよ。高位の竜の髭を輪切りにしたものだ。」
竜の髭!
そう聞いてリリスは1年生の時の授業を思い出した。
これは魔力の受容体だ。
魔法使いに活用されている魔力の受容体は多数あるが、その中でも竜の髭は最高級のものとして認識されている。比較的多くの魔力を貯めておけるのだ。
魔力切れを起こすような非常事態に際して、ポーションの代わりに魔力を補填するのが目的で、過去においては高位の魔法使いや武将が戦場に携帯する事が
主な用途だった。
マナポーションの普及もあって最近ではあまり見られないが、瞬時に魔力を補填出来る利便性はポーションに勝るので大切にされている。
「これを私にくださるのですか?」
「そうだよ。先日の王宮での出来事をアイリスに話したところ、これを君に持たせれば良いと言う事になったんだ。」
そう言われても今一つピンとこないリリスである。
その様子に小熊は説明を続けた。
「その竜の髭に君の魔力を注いで携帯すれば良い。そうすれば君から竜の気配がしたとしても、その竜の髭が原因だと説明できるはずだ。」
ああ、そう言う事なのね。
あのドラゴニュート達に察知されて、不審に思われたのを心配してくださったのね。
そう理解してリリスは感謝の思いを小熊に伝えた。
「正直言って僕達には君の魔力に竜の気配があるなんて分からない。君が竜の加護を持っているとしても、それがそんなに重要な事だとも思わない。加護はあくまでも加護だ。お守りのようなものだろうからね。」
「でもドラゴニュート達には若干意味が違ってくるようだ。だから保険だと思って持っていれば良い。今度リゾルタに来る時にはそれを携帯する事を忘れないようにね。」
ふうんとうなづくリリスに小熊は畳みかけるように話を続けた。
「王宮の神殿はあと2週間ほどで修復出来る見込みだ。その際には君にも来てもらうからね。」
「ええっ! 私も行くんですか?」
リリスの驚きを小熊は意にも介せず、
「そうだよ。君も連れて来る様にとユリアから指示されているんだ。」
ユリアがそう言っていたの?
どう言う意図があるのかしら?
「だって授業が・・・・・」
「そんなものは王族同士の話し合いで何とでもなるさ。」
そう言いながら小熊と2人の兵士はソファから立ち上がった。
「僕はこれから義父、つまりミラ王国の国王様にお会いする事になっている。アイリスの様子も聞きたいそうだからね。これで失礼するよ。」
小熊はそう言うと兵士の肩に留まり、手を振ってゲストルームから出て行った。
後に残されたのはリリスである。
話が一方的よねえ。
でも竜の髭を貰ったのだから、感謝しないとね。
そう思ってリリスは早速自分の魔力を竜の髭に注いでみた。だが意外にも竜の髭には魔力がかなり多く蓄積出来るようだ。
魔力を注いだ竜の髭は半透明の本体が仄かに赤みを帯びてきた。
これってマナポーション数本分はあるわよ。
かなりの大容量である。しかも所持者への魔力補充にはほとんど時間が掛からない。聞いていた以上の優れ物なのだ。
気を良くしたリリスは竜の髭を皮袋に戻し、制服のポケットに入れてゲストルームを出た。
ゲストルームのある5階から階段を降りて行く途中で、リリスは何気なく生徒会の部屋に立ち寄った。
放課後に整理する資料を確認する為だったのだが、ドアを開けるとニーナと下級生のエリスが椅子に座って談笑していた。
「あらっ? 珍しいわね、ニーナ。生徒会の部屋に来るなんて、どうしたの?」
リリスの言葉にニーナはえへへと笑いながら、
「エリスとダンジョンチャレンジの打ち合わせをしていたのよ。」
「ダンジョンチャレンジって・・・二人で?」
リリスの疑問も当然だ。ニーナもエリスもすでに何度もダンジョンチャレンジをしている筈なのだが・・・。
不思議がるリリスにエリスが説明を始めた。
「今回はロイド先生の提案なんですよ。ダンジョンチャレンジの特別補講に1回分の枠が残っているそうです。それで、私とニーナ先輩の魔法やスキルの相性が良さそうなので、一度試しにペアで取り組んでみないかって。」
う~ん。
そう言われると確かに魔法やスキルでお互いに補い合えそうねえ。
「それにエリスと話していると、気が合うのよね。」
そう言って愛くるしい笑顔を見せるニーナの表情はいつも以上に明るい。本当に気が合って居そうだ。
「うん。ニーナとエリスが組んだら何処のダンジョンでも大丈夫よ。」
そう言って自分のデスクに回り込むためにリリスはニーナの目の前を通り過ぎた。その時、ニーナがうん?と怪訝そうに唸った。
「リリスから強い魔物の気配がするんだけど・・・」
ニーナがボソッと呟いた。リリスはうっと唸って思わず立ち止まった。
探知能力に長けた人物が此処に居たのだ。
ニーナったら探知スキルのレベルを更に上げたのかしら?
やけに敏感じゃないの。
リリスは制服のポケットから皮袋を取り出し、おかしいなあと呟くニーナの前に置いた。
「魔物の気配がするとしたら、多分それが原因よ。」
リリスの言葉にニーナは首を傾げ、皮袋を手に取りその中を調べた。
「これってもしかして・・・・・」
ニーナが手にした皮袋の中身をエリスはまじまじと見つめ、えっと小さく驚きの声を上げた。
「これって・・・・・竜の髭ですか?」
エリスの目を見つめてリリスはうんとうなづいた。
エリスは興味津々の表情で竜の髭をツンツンと突き、
「私、竜の髭の現物を見るのは初めてです。でも中が血のように赤くてまるで生きているみたい。」
そう言われて改めて竜の髭を見ると、先程よりも赤みが増しているように思える。
生きている筈は無いのに。
「これはリゾルタの王家から貰ったのよ。」
「ああ、それってキメラ退治と神殿修理の褒賞ですね。」
平然と話すエリスにリリスは違和感を覚えた。
「どうしてそれを知っているの?」
「だってメリンダ様がクラスのみんなに話していましたよ。」
メルだ。あの子ったら、相手かまわずべらべらと喋っているのかしら?
あまり吹聴しないで欲しいわね。
私を敵対視する者だって居るかも知れないのに。
チッと心の中で舌打ちしながらもリリスはそれを顔に出さないように心掛けた。
「あまり話題にしないでね。大したことじゃないから・・・」
そう言いながらも引きつりそうになる表情を堪えて、リリスはわざとらしい照れ笑いを見せた。
ニーナを見るとまだ若干納得出来なさそうな表情で、
「う~ん。竜の髭だけじゃなくてリリスからも感じるような気がする・・・・」
小声で呟くニーナの手から龍の髭を奪い取るよう取り上げ、気のせいよと言いながらリリスはそれを皮袋に戻した。
ニーナったら本当に敏感な子ねえ。優秀なスキルを持っているだけに厄介なんだから・・・。
そう思いつつ、リリスは自分のデスクに戻り、資料の整理を始めた。
5分ほど資料を整理して、リリスは生徒会の部屋を後にした。
ニーナとエリスに見送られて、リリスが次に向かったのは、ケイト先生が管理している薬草園だ。
竜からコピーしたスキルを試さなくっちゃね。
リリスは昼食も後回しにして、学舎から薬草園に急ぎ足で向かって行った。
10
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
宇宙戦争時代の科学者、異世界へ転生する【創世の大賢者】
赤い獅子舞のチャァ
ファンタジー
主人公、エリー・ナカムラは、3500年代生まれの元アニオタ。
某アニメの時代になっても全身義体とかが無かった事で、自分で開発する事を決意し、気付くと最恐のマッドになって居た。
全身義体になったお陰で寿命から開放されていた彼女は、ちょっとしたウッカリからその人生を全うしてしまう事と成り、気付くと知らない世界へ転生を果たして居た。
自称神との会話内容憶えてねーけど科学知識とアニメ知識をフルに使って異世界を楽しんじゃえ!
宇宙最恐のマッドが異世界を魔改造!
異世界やり過ぎコメディー!

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

異世界転移二児の母になる
ユミル
ファンタジー
牧野悠里(まきのゆうり)が一度目は勇者として召喚されて命を落とすがラウムにより転移で女性になる。
そこで出会った人達と仲良くしていく話です。
前作同様不慣れなところが多いですが、出来るだけ読みやすい様に頑張りたいと思います。
一応完結まで書く事ができました。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
今後は番外編等を書いていくのでよろしくお願いします。

Retry 異世界生活記
ダース
ファンタジー
突然異世界に転生してしまった男の物語。
とある鉄工所で働いていた佐藤宗則。
しかし、弱小企業であった会社は年々業績が悪化。
ある日宗則が出社したら、会社をたたむと社長が宣言。
途方に暮れた宗則は手持ちのお金でビールと少しのつまみを買い家に帰るが、何者かに殺されてしまう。
・・・その後目覚めるとなんと異世界!?
新たな生を受けたその先にはどんなことが!?
ほのぼの異世界ファンタジーを目指します。
ぬるぬる進めます。
だんだんと成長するような感じです。
モフモフお付き合いおねがいします。
主人公は普通からスタートするのでゆっくり進行です。
大きな内容修正や投稿ペースの変動などがある場合は近況ボードに投稿しています。
よろしくお願いします。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる