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開祖の魔剣3
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開祖エドワード王の魔剣。
その前でガーゴイルとメリンダ王女、リリスが見つめ合っていた。
「ねえ、ゲル。話の趣旨が違うってどう言う事なの?」
リリスの問い掛けにガーゴイルは魔剣を指差し、
「この魔剣に纏わり付いている魔力はエドワードのものなんだよ。この魔剣は特殊な魔金属の合金で出来ていて、所有者と魔力をやり取り出来るんだ。」
うん?
どこかで聞いたような話ね。
「長年エドワードが愛用する事で、魔剣にはエドワードの魔力が纏わり付いている。それを分離して欲しいために奴は僕を呼び出せと書き残したんだよ。」
「分離してどうするの?」
リリスの問い掛けにガーゴイルはその視線をメリンダ王女に向けた。メリンダ王女も戸惑っている様子だ。
「僕と関りを持つ事が出来た子孫、つまり闇の属性を持つ子孫に吸収され、加護として残りたいと言うエドワードの遺志だと思うよ。」
その言葉を聞いてメリンダ王女は神妙な表情になった。
元々は開祖エドワードとゲルの間で結ばれた理不尽な契約により、彼女の生命は犠牲になるところだった。
それを思えば闇魔法に秀でた子孫に加護を残そうと言う意図が分からない。
その微妙な表情を察してガーゴイルが過去を回想するような視線で口を開いた。
「多分、エドワードは自分が造り上げた軛を抜け出すような、才気のある子孫の出現を待ち望んでいたんじゃないかなあ。」
「そうなのかしら? もしそうだとしたら、闇魔法の属性を持つ子孫を開祖が忌み嫌っていた訳じゃ無さそうなんだけど・・・」
メリンダ王女の表情はどこまでも微妙だ。だがリリスには開祖の想いが何となく分かるような気がした。
「開祖エドワード王も内心では犠牲になる子孫に申し訳ないと思っていたのかもね。」
リリスの言葉にメリンダ王女はう~んと唸りながら考え込んでしまった。
少し間を置いて魔剣の鞘に触れ、
「まあ、リリスにそう言われると・・・多少は納得出来そうだわ。」
気持ちがまだ充分には整理出来ていないように思われる。
だが、メリンダ王女の表情が少し晴れてきたのを確認して、ガーゴイルが魔剣の直ぐ傍に近付いた。
「それじゃあ、修復するよ。先にエドワードの魔力をメルに移してあげよう。」
そう言ってガーゴイルがパチンと指を鳴らすと、魔剣から禍々しい魔力がすっとメリンダ王女の身体に引き込まれた。
うっと呻くメリンダ王女だが、苦しそうな表情は一瞬だった。直ぐに普段通りの表情に戻り、目を瞑って意外にもうっとりとした表情を見せた。
「うん、何となく暖かい。守られている気配が感じられるわ。」
開祖の魔力が残したものは加護で間違いないようだ。その様子にリリスも安堵した。
ガーゴイルは続いて魔剣の刀身をその魔力で修復し、自分の魔力を少しだけ魔剣に纏わらせた。
「この状態だとエドワードの持っていた魔剣のレプリカだけど良いのかな?」
修復された魔剣を摩りながら、メリンダ王女はうんうんとうなづいた。
「ああ、良いのよゲル。ありがとう。」
「闇魔法の魔力を纏った魔剣としての形を維持出来れば良いのよ。開祖の遺志はしっかりと私の心の中に受け継いだから。」
メリンダ王女の満足そうな言葉にリリスも安心してゲルに礼を言った。ついでにサラのスキルで呼び出された際の対処も伝えると、ガーゴイルは苦笑いを浮かべた。
「大丈夫だよ。どのみち今の彼女のレベルでは使い魔しか呼び出せないからね。」
そう言ってガーゴイルはその場から消えて行った。
だがすぐにまた目の前に現れた。何か忘れ物でもしたのか?
「そうそう。メルに教えてあげるのを忘れていたよ。エドワードの魔力の余韻を覚えているかい?」
メリンダ王女は不思議そうな表情だったが、自分で自分の魔力を確認して無言でうなづいた。
「覚えているのなら、手のひらにエドワードの魔力を抽出するような気持で、魔力を集中してみれば良いよ。」
ガーゴイルの言葉に従ってメリンダ王女は手のひらに魔力を集中させた。
「こんな風に?」
そう口走った途端に、手のひらの上に黒い魔力の小さな塊が現われた。
「これって何なの?」
首を傾げるメリンダ王女にガーゴイルが優しく話し掛けた。
「それはエドワードが僕に要件がある時に使っていた方法だよ。その塊に要件を伝えて空中に放てば良い。」
「でも直ぐに駆け付けるとは思わないでくれよ。僕にも事情があるからね。それでもメルが僕に要件がある事だけは伝わるから。」
へえ~と驚きながら、メリンダ王女はその魔力の塊をしげしげと眺めた。その魔力の塊をふっと空中に放ち、
「ありがとう、ゲル。でも私だって無暗に闇の亜神を呼び出そうとは思わないわよ。余程の事でもない限りね。」
「うん、そうしてくれ。要件によっては代償を必要とする事だってあるからね。あの闇の宝玉のように・・・・・」
そう言いながら、ガーゴイルは再度消えて行った。
メリンダ王女の指示で騎士達が修復された魔剣を持ち出していく。
リリスとメリンダ王女もその場を離れ、レオナルド王子とサラの傍に近寄った。
事の成り行きを掻い摘んで説明し、レオナルド王子も満足した様子だ。
「リリス君。この件での褒賞は後日必ず授けるからね。待っていてくれよ。」
褒賞なんて要らないのにとリリスは思った。自分はメリンダ王女とゲルとの仲介をしただけだ。
褒賞をくれると言うのなら、代わりにあのロイヤルガードを何とかして欲しいと願うリリスであった。
リリスとサラに手を振り、護衛の騎士達を引き連れて、レオナルド王子とメリンダ王女はその場から出て行った。
後に残されたのはサラとリリスの二人だ。
「サラ。ごめんね。蚊帳の外に置きっぱなしにしたみたいで、心苦しいわ。」
リリスの言葉にサラは笑顔で首を横に振った。
「良いのよ、リリス。私が首を突っ込むような要件じゃない事は分かったもの。それにしても王族と関りを持つと何かと大変ね。」
「そうなのよ!」
リリスは思わず大声で叫んでしまった。その脳裏に学生寮の最上階でのロイヤルガード達との攻防があった事は確かだ。
リリスの様子を見てサラはぷっと軽く吹き出し、
「私は楽しく殿下とお話しさせて貰ったから充分満足しているのよ。」
そこまで言ってサラは、周りに人が居ないと言うのに小声で囁いた。
「殿下って私の好みのタイプなのよね。お話ししている間中、顔が火照っちゃって・・・」
ええっ!
そうだったの?
驚くリリスにサラはえへへと笑って、
「でもね、身分が違うのは分かっているわよ。別に後を引かないから安心して。」
「びっくりさせないでよ、サラ。」
そう言いながらリリスは肘でツンツンとサラの横腹を軽くつついた。サラもそれに反応してキャッキャッと笑い声をあげる。
お互いに心にわだかまりは無いようだ。
訓練場の設備などに支障のない事を確認し、二人は笑いながらその場を後にした。
学舎の外に出るともう日が傾いている。
二人はそのまま学生寮に戻るつもりだったのだが、学舎の入り口の事務室を通り過ぎようとした時、職員から来客があると聞かされた。
こんな時間に誰だろうと思いながら、リリスはサラと別れて事務室に入った。事務室の奥の飾りっ気のないソファに誰かが座っている。こちらに向かって会釈したその人物を見て、リリスは少なからず驚いてしまった。
昨日、学生寮の最上階で応対したメイドだ。
地味なスーツ姿だったので最初は良く分からなかったのだが、メイド服でないと言う事は今日はオフなのか?
否、それ以前に昨日の最上階での攻防の仕返しに来たのかも知れない。
若干緊張した表情でリリスはそのメイドの対面に座った。年齢は・・・30歳手前だろうか? 色白で知的な雰囲気の美人である。穏やかな眼差しだがその奥には、冷徹な感情を秘めているようにも感じられる。
だが意外にもリリスが座ると、メイドは立ち上がり、深々と頭を下げた。
「昨日は大変失礼しました。どうか、お許しください。」
どうやら謝罪に来たようだ。
メイドはセラと名乗り、学生寮で王族に仕えるメイドのチーフだった。
事務室の職員が運んできた紅茶を飲み、少し間を置いてセラは話し始めたのだった。
その前でガーゴイルとメリンダ王女、リリスが見つめ合っていた。
「ねえ、ゲル。話の趣旨が違うってどう言う事なの?」
リリスの問い掛けにガーゴイルは魔剣を指差し、
「この魔剣に纏わり付いている魔力はエドワードのものなんだよ。この魔剣は特殊な魔金属の合金で出来ていて、所有者と魔力をやり取り出来るんだ。」
うん?
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「長年エドワードが愛用する事で、魔剣にはエドワードの魔力が纏わり付いている。それを分離して欲しいために奴は僕を呼び出せと書き残したんだよ。」
「分離してどうするの?」
リリスの問い掛けにガーゴイルはその視線をメリンダ王女に向けた。メリンダ王女も戸惑っている様子だ。
「僕と関りを持つ事が出来た子孫、つまり闇の属性を持つ子孫に吸収され、加護として残りたいと言うエドワードの遺志だと思うよ。」
その言葉を聞いてメリンダ王女は神妙な表情になった。
元々は開祖エドワードとゲルの間で結ばれた理不尽な契約により、彼女の生命は犠牲になるところだった。
それを思えば闇魔法に秀でた子孫に加護を残そうと言う意図が分からない。
その微妙な表情を察してガーゴイルが過去を回想するような視線で口を開いた。
「多分、エドワードは自分が造り上げた軛を抜け出すような、才気のある子孫の出現を待ち望んでいたんじゃないかなあ。」
「そうなのかしら? もしそうだとしたら、闇魔法の属性を持つ子孫を開祖が忌み嫌っていた訳じゃ無さそうなんだけど・・・」
メリンダ王女の表情はどこまでも微妙だ。だがリリスには開祖の想いが何となく分かるような気がした。
「開祖エドワード王も内心では犠牲になる子孫に申し訳ないと思っていたのかもね。」
リリスの言葉にメリンダ王女はう~んと唸りながら考え込んでしまった。
少し間を置いて魔剣の鞘に触れ、
「まあ、リリスにそう言われると・・・多少は納得出来そうだわ。」
気持ちがまだ充分には整理出来ていないように思われる。
だが、メリンダ王女の表情が少し晴れてきたのを確認して、ガーゴイルが魔剣の直ぐ傍に近付いた。
「それじゃあ、修復するよ。先にエドワードの魔力をメルに移してあげよう。」
そう言ってガーゴイルがパチンと指を鳴らすと、魔剣から禍々しい魔力がすっとメリンダ王女の身体に引き込まれた。
うっと呻くメリンダ王女だが、苦しそうな表情は一瞬だった。直ぐに普段通りの表情に戻り、目を瞑って意外にもうっとりとした表情を見せた。
「うん、何となく暖かい。守られている気配が感じられるわ。」
開祖の魔力が残したものは加護で間違いないようだ。その様子にリリスも安堵した。
ガーゴイルは続いて魔剣の刀身をその魔力で修復し、自分の魔力を少しだけ魔剣に纏わらせた。
「この状態だとエドワードの持っていた魔剣のレプリカだけど良いのかな?」
修復された魔剣を摩りながら、メリンダ王女はうんうんとうなづいた。
「ああ、良いのよゲル。ありがとう。」
「闇魔法の魔力を纏った魔剣としての形を維持出来れば良いのよ。開祖の遺志はしっかりと私の心の中に受け継いだから。」
メリンダ王女の満足そうな言葉にリリスも安心してゲルに礼を言った。ついでにサラのスキルで呼び出された際の対処も伝えると、ガーゴイルは苦笑いを浮かべた。
「大丈夫だよ。どのみち今の彼女のレベルでは使い魔しか呼び出せないからね。」
そう言ってガーゴイルはその場から消えて行った。
だがすぐにまた目の前に現れた。何か忘れ物でもしたのか?
「そうそう。メルに教えてあげるのを忘れていたよ。エドワードの魔力の余韻を覚えているかい?」
メリンダ王女は不思議そうな表情だったが、自分で自分の魔力を確認して無言でうなづいた。
「覚えているのなら、手のひらにエドワードの魔力を抽出するような気持で、魔力を集中してみれば良いよ。」
ガーゴイルの言葉に従ってメリンダ王女は手のひらに魔力を集中させた。
「こんな風に?」
そう口走った途端に、手のひらの上に黒い魔力の小さな塊が現われた。
「これって何なの?」
首を傾げるメリンダ王女にガーゴイルが優しく話し掛けた。
「それはエドワードが僕に要件がある時に使っていた方法だよ。その塊に要件を伝えて空中に放てば良い。」
「でも直ぐに駆け付けるとは思わないでくれよ。僕にも事情があるからね。それでもメルが僕に要件がある事だけは伝わるから。」
へえ~と驚きながら、メリンダ王女はその魔力の塊をしげしげと眺めた。その魔力の塊をふっと空中に放ち、
「ありがとう、ゲル。でも私だって無暗に闇の亜神を呼び出そうとは思わないわよ。余程の事でもない限りね。」
「うん、そうしてくれ。要件によっては代償を必要とする事だってあるからね。あの闇の宝玉のように・・・・・」
そう言いながら、ガーゴイルは再度消えて行った。
メリンダ王女の指示で騎士達が修復された魔剣を持ち出していく。
リリスとメリンダ王女もその場を離れ、レオナルド王子とサラの傍に近寄った。
事の成り行きを掻い摘んで説明し、レオナルド王子も満足した様子だ。
「リリス君。この件での褒賞は後日必ず授けるからね。待っていてくれよ。」
褒賞なんて要らないのにとリリスは思った。自分はメリンダ王女とゲルとの仲介をしただけだ。
褒賞をくれると言うのなら、代わりにあのロイヤルガードを何とかして欲しいと願うリリスであった。
リリスとサラに手を振り、護衛の騎士達を引き連れて、レオナルド王子とメリンダ王女はその場から出て行った。
後に残されたのはサラとリリスの二人だ。
「サラ。ごめんね。蚊帳の外に置きっぱなしにしたみたいで、心苦しいわ。」
リリスの言葉にサラは笑顔で首を横に振った。
「良いのよ、リリス。私が首を突っ込むような要件じゃない事は分かったもの。それにしても王族と関りを持つと何かと大変ね。」
「そうなのよ!」
リリスは思わず大声で叫んでしまった。その脳裏に学生寮の最上階でのロイヤルガード達との攻防があった事は確かだ。
リリスの様子を見てサラはぷっと軽く吹き出し、
「私は楽しく殿下とお話しさせて貰ったから充分満足しているのよ。」
そこまで言ってサラは、周りに人が居ないと言うのに小声で囁いた。
「殿下って私の好みのタイプなのよね。お話ししている間中、顔が火照っちゃって・・・」
ええっ!
そうだったの?
驚くリリスにサラはえへへと笑って、
「でもね、身分が違うのは分かっているわよ。別に後を引かないから安心して。」
「びっくりさせないでよ、サラ。」
そう言いながらリリスは肘でツンツンとサラの横腹を軽くつついた。サラもそれに反応してキャッキャッと笑い声をあげる。
お互いに心にわだかまりは無いようだ。
訓練場の設備などに支障のない事を確認し、二人は笑いながらその場を後にした。
学舎の外に出るともう日が傾いている。
二人はそのまま学生寮に戻るつもりだったのだが、学舎の入り口の事務室を通り過ぎようとした時、職員から来客があると聞かされた。
こんな時間に誰だろうと思いながら、リリスはサラと別れて事務室に入った。事務室の奥の飾りっ気のないソファに誰かが座っている。こちらに向かって会釈したその人物を見て、リリスは少なからず驚いてしまった。
昨日、学生寮の最上階で応対したメイドだ。
地味なスーツ姿だったので最初は良く分からなかったのだが、メイド服でないと言う事は今日はオフなのか?
否、それ以前に昨日の最上階での攻防の仕返しに来たのかも知れない。
若干緊張した表情でリリスはそのメイドの対面に座った。年齢は・・・30歳手前だろうか? 色白で知的な雰囲気の美人である。穏やかな眼差しだがその奥には、冷徹な感情を秘めているようにも感じられる。
だが意外にもリリスが座ると、メイドは立ち上がり、深々と頭を下げた。
「昨日は大変失礼しました。どうか、お許しください。」
どうやら謝罪に来たようだ。
メイドはセラと名乗り、学生寮で王族に仕えるメイドのチーフだった。
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