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開祖の魔剣1
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エリスにブレスレットをあげた日の夜。
学生寮に戻るとサラが浮かぬ顔でソファに座っていた。体調が悪いのだろうか?
少し心配になってリリスはサラの横に座って問い掛けた。
「サラ、どうかしたの? 体調が悪いの?」
リリスの言葉にサラは苦笑いを浮かべた。
「ああごめんね。心配してくれたのね。実は・・・・・」
訥々とサラは喋り始めた。その内容を要約すると、リリスのあげたブレスレットの効果を実感したくて、学舎の地下の闘技場で魔法やスキルを試してみたそうだ。
サラは初めてあのブレスレットを装着した時に、魔力の流れが改善されているのが自分でも分かると言っていた。元々魔力の流れに若干支障のあったサラなので、それなりに嬉しかったのだろう。すぐさま試してみたくなる気持ちも良く分かる。
「火魔法も水魔法も威力が増していたわ。探知スキルも召喚術もスムーズに使えるようになったの。直ぐに取り消したけど、使い魔の召喚も問題なく出来たのよ。」
サラの表情が生き生きしている。基本的な魔法やスキルには効果が現れていたようだ。
「それで何を召喚したの?」
「それがねえ、大きな熊だったのよ。雷撃を放つホーンベア。」
サラの言葉にリリスは唖然としてしまった。
「サラ!それって本当に取り消しちゃったの? 勿体ない。召喚獣としてキープしておけば良いのに。」
「だって、私、熊は好きじゃないのよ。」
いやいや、そう言う問題じゃないでしょ!
思わず心の中で突っ込んでしまったリリスである。だがサラの召喚術は、要因は不明だがレベルアップしているとチャーリーは言っていた。鑑定スキルでサラのステータスに現れていた不安定要素は、ブレスレットの効果で解消されているのかも知れない。
そうでもなければ容易にホーンベアの召喚に成功するとも思えないからだ。
「そこまでは良かったのよ。問題は亜神召喚のスキルで・・・・」
「ええっ! それも試したの?」
リリスの言葉にサラは無言でうんとうなづいた。リリスの胸に不安が過る。
「とりあえず試してみたのよ。そうしたら目の前に立体的な地図が現われて、光の点が幾つも動き回っていて・・・・・」
うっ!
明らかにレベルアップしているわ。
リリスの思いを解せず、サラは言葉を続けた。
「その中に金色に縁どられた黒い光点があったのよ。一際大きく表示されていて、ポップアップメニューまで表示されていたわ。幾つかのメニューが並んでいて、その中に呼び出しと言う表記があったの。」
ううっ!
嫌な予感がする。
「それで・・・・・呼び出しちゃったの?」
恐る恐る聞いたリリスの言葉にサラはうんとうなづいた。
そこから先は以前にリリスが見た通りだった。
地図の直前に直径2mほどで半透明の魔方陣が浮かび上がり、その中央部に光が現われるとその形を徐々に変えていく。そのまま見ていると次の瞬間、ピンッと音を立ててその魔方陣の中央に黒い人影が現われたのだと言う。
「でも現われたのは人じゃなかったのよ。ガーゴイルだったわ。」
ああ、使い魔で現れたのね。
サラの言葉に少し安心したリリスである。
ゲルがそのままの姿で現れたら、サラも対処の仕方が分からなかっただろう。
「それでそのガーゴイルが言ったのよ。『大した用事が無いのなら呼び出すなよ。』ってね。」
それって間違いなくゲルだわ。
サラの表情が若干曇ってきた。
「チッと舌打ちして直ぐに消えて行ったわよ。本当に失礼なんだから。」
いやいや、そうは言っても本当に大した用事がなかったのは事実でしょ?
そう思いつつも、サラの気持ちを汲んで、表面的には同情したリリスだが、内心は穏やかではない。
安易に亜神を呼び出さない方がサラにとっても良いからだ。
あの連中に巻き込まれると、とんでもない目に遭う事が多い。それはリリスの実体験でもある。
また、自分だからあの連中に何とか対処出来ていると考えるのも、決して傲慢な発想ではないとリリスは考えていた。
元はと言えばリリスの特殊な魔力波動に反応して目覚めてしまった連中だ。
そう考えると災いの種は自分が撒いたのかも知れないと、少し自虐的になったリリスである。
「亜神召喚のスキルは封印しておいた方が良さそうね。」
リリスの言葉にサラはうんうんとうなづいた。
「そうするわね。他の魔法やスキルは強化されたんだから、それだけで私には充分よ。」
そう話すサラの表情に曇りは無くなっていた。機嫌が良くなったようだ。
その様子にリリスも一安心したのだった。
数日後の放課後、リリスは授業を終えた担任のケイト先生を通して内密の呼び出しを受けた。呼び出したのはメリンダ王女だ。
至急学生寮の最上階に来て欲しいと言う事なので、リリスは自室にカバンを置いて取り急ぎ最上階に向かった。
入学式から数日後の夜に一度訪れているとは言え、最上階に足を運ぶのは気乗りがしない。セキュリティが厳重で、ロイヤルガードが気配を消してこちらを常に探知している。リリスのスキルで全て跳ね返しているが、それでも納得できないようで、時折影のようにすぐそばを通り過ぎる事も有る。
感じなければなんでも無いのだが、なまじ感じてしまうので厄介だ。探知の波動や精神波を受けている事自体を圧として感じてしまう。
階段を上がり、階段の踊り場で待機していたメイドから検査を受けると、早速あちらこちらから探知の波動が飛んできた。気にしないようにしよう。
そう思って豪華な絨毯の敷かれた廊下を歩き始めたのだが、直ぐに検査をしていたメイドから呼び止められた。
「申し訳ありませんが、護身用の武器もこの階では持ち込み禁止です。お帰りになるまで当方で保管いたしますので、ここでお預けください。」
あらっ!
これもダメなの?
リリスが携帯していたのは通常の半分の大きさのスローイングダガーだ。以前にシューサックから譲り受けた魔金属の円柱を錬成してスローイングダガーを2本造ったのだが、そのうちの1本をリリスは再度錬成して2本の小振りなものに造り上げたのだった。勿論これは護身用として身に着けているが、護身用としては少々オーバースペックで、練習を兼ねて火魔法の効果まで付与したものである。
止む無くリリスは2本の小さなスローイングダガーをメイドに預けた。これが平民なら取り上げられることもあるかも知れないが、一応貴族の子女なので取り上げられることは無いだろう。
メイドの手招きで廊下を進み、目的の部屋の前に立ち、豪華な扉を開けてリリスは中に入った。
広いリビングの奥からリリスを呼ぶ声がする。
あの声はメリンダ王女だ。
直ぐにそちらに向かうと大きな長いソファにメリンダ王女と小人が座っていた。小人は勿論フィリップ王子の使い魔だが、その肩に芋虫が生えている。
どうやら芋虫はレオナルド王子の使い魔のようだ。
お互いに挨拶を交わして、リリスはメリンダ王女の対面のソファに座った。
「ごめんなさいね、リリス。急に呼び出しちゃって。」
メリンダ王女が申し訳なさそうにリリスに話し掛けた。ゆったりとしたローブ姿は普段着なのだろうが、如何にも高級感のある素材であると分かる。
その優雅さとは裏腹に、芋虫を生やした小人の姿は異様だ。
リリスもつい怪訝そうな目で見つめてしまった。
「王子が王子に憑依って・・・不思議な構図ですね。」
リリスの言葉に小人が情けなさそうな表情を見せた。
「そうなんだよ。レオナルドがここに来たいって言うものだから・・・」
「それは仕方が無いよ。僕の国の事でどうしてもリリス君に話があるのだからね。」
「だからって僕の使い魔を使わなくても良いじゃないか。」
王子同士で軽口を叩いている。それでも一緒に行動しているのだから、基本的には仲が良いのだろう。
メイドが運んできた紅茶を飲み、少し落ち着いたところでメリンダ王女が要件を切り出した。
「リリス。これを見て貰って良いかしら?」
そう言ってメリンダ王女はメイドに指図をした。メイドがリビングの奥に姿を消すと、それと入れ替わりに男性の執事が大きな剣を運んできた。
目の前のテーブルの上に置いた途端に、禍々しい魔力の波動が伝わってくる。
どうやら魔剣のようだ。
この魔力の波動は・・・・・闇魔法の魔力ね。
長さは1m50cmほどで豪華な鞘に納められている。剣の柄にらせん状に埋め込まれている鈍い光沢の金属は魔金属なのだろう。それが時折仄かに光るのが不気味だ。
「この魔剣は王城の宝物庫のチェストの中から出てきたのよ。チェストには闇魔法のシールドが掛けられていて、つい先日まで未開封のままだったわ。」
詳しく聞くと、先日の休暇の間、メリンダ王女は王城の宝物庫の整理をしていたそうだ。そんな事は家臣の仕事じゃないのかとリリスが聞くと、メリンダ王女は楽しいから自分でやっているんだと答えた。
お宝探しのつもりなのだと言う。
確かに一国の王家の宝物庫なので、中にはとんでもない価値のものもあるのだろう。ネコババはしないわよとメリンダ王女は言うのだが。
「それが不思議なのよね。今まで誰にも開けられなかったチェストなのに、今回私が近付いた途端に自然に開いたのよ。まるで私を待っていたみたいに。」
メリンダ王女の魔力の波動に感応したと言う事なのだろうか? それまでの王女の魔力の波動には感応しなかったとなると、何が原因なのだろうか?
思い当たるとすれば闇の宝玉のくびきから解放された事や闇の亜神との接触だろうか?
あれこれと思い巡らせるリリスの顔を見ながら、メリンダ王女は小人の肩に生えている芋虫に目配せをした。
「リリス君。この魔剣はおそらく開祖エドワード王の所有物だと思われる。王国誌や文献によるとエドワード王はダークファイターと言う名の魔剣を常に所持していたらしい。だがその所在は全く不明だったんだ。」
芋虫を介してレオナルド王子が口を開いた。
「それがこれなんですか?」
リリスは問い掛けに反応して魔剣がふっと光ったように感じた。気のせいだとは思ったのだが。
不気味な魔剣を目の前にして、リリスは厄介事に巻き込まれそうな予感に苛まれていたのだった。
学生寮に戻るとサラが浮かぬ顔でソファに座っていた。体調が悪いのだろうか?
少し心配になってリリスはサラの横に座って問い掛けた。
「サラ、どうかしたの? 体調が悪いの?」
リリスの言葉にサラは苦笑いを浮かべた。
「ああごめんね。心配してくれたのね。実は・・・・・」
訥々とサラは喋り始めた。その内容を要約すると、リリスのあげたブレスレットの効果を実感したくて、学舎の地下の闘技場で魔法やスキルを試してみたそうだ。
サラは初めてあのブレスレットを装着した時に、魔力の流れが改善されているのが自分でも分かると言っていた。元々魔力の流れに若干支障のあったサラなので、それなりに嬉しかったのだろう。すぐさま試してみたくなる気持ちも良く分かる。
「火魔法も水魔法も威力が増していたわ。探知スキルも召喚術もスムーズに使えるようになったの。直ぐに取り消したけど、使い魔の召喚も問題なく出来たのよ。」
サラの表情が生き生きしている。基本的な魔法やスキルには効果が現れていたようだ。
「それで何を召喚したの?」
「それがねえ、大きな熊だったのよ。雷撃を放つホーンベア。」
サラの言葉にリリスは唖然としてしまった。
「サラ!それって本当に取り消しちゃったの? 勿体ない。召喚獣としてキープしておけば良いのに。」
「だって、私、熊は好きじゃないのよ。」
いやいや、そう言う問題じゃないでしょ!
思わず心の中で突っ込んでしまったリリスである。だがサラの召喚術は、要因は不明だがレベルアップしているとチャーリーは言っていた。鑑定スキルでサラのステータスに現れていた不安定要素は、ブレスレットの効果で解消されているのかも知れない。
そうでもなければ容易にホーンベアの召喚に成功するとも思えないからだ。
「そこまでは良かったのよ。問題は亜神召喚のスキルで・・・・」
「ええっ! それも試したの?」
リリスの言葉にサラは無言でうんとうなづいた。リリスの胸に不安が過る。
「とりあえず試してみたのよ。そうしたら目の前に立体的な地図が現われて、光の点が幾つも動き回っていて・・・・・」
うっ!
明らかにレベルアップしているわ。
リリスの思いを解せず、サラは言葉を続けた。
「その中に金色に縁どられた黒い光点があったのよ。一際大きく表示されていて、ポップアップメニューまで表示されていたわ。幾つかのメニューが並んでいて、その中に呼び出しと言う表記があったの。」
ううっ!
嫌な予感がする。
「それで・・・・・呼び出しちゃったの?」
恐る恐る聞いたリリスの言葉にサラはうんとうなづいた。
そこから先は以前にリリスが見た通りだった。
地図の直前に直径2mほどで半透明の魔方陣が浮かび上がり、その中央部に光が現われるとその形を徐々に変えていく。そのまま見ていると次の瞬間、ピンッと音を立ててその魔方陣の中央に黒い人影が現われたのだと言う。
「でも現われたのは人じゃなかったのよ。ガーゴイルだったわ。」
ああ、使い魔で現れたのね。
サラの言葉に少し安心したリリスである。
ゲルがそのままの姿で現れたら、サラも対処の仕方が分からなかっただろう。
「それでそのガーゴイルが言ったのよ。『大した用事が無いのなら呼び出すなよ。』ってね。」
それって間違いなくゲルだわ。
サラの表情が若干曇ってきた。
「チッと舌打ちして直ぐに消えて行ったわよ。本当に失礼なんだから。」
いやいや、そうは言っても本当に大した用事がなかったのは事実でしょ?
そう思いつつも、サラの気持ちを汲んで、表面的には同情したリリスだが、内心は穏やかではない。
安易に亜神を呼び出さない方がサラにとっても良いからだ。
あの連中に巻き込まれると、とんでもない目に遭う事が多い。それはリリスの実体験でもある。
また、自分だからあの連中に何とか対処出来ていると考えるのも、決して傲慢な発想ではないとリリスは考えていた。
元はと言えばリリスの特殊な魔力波動に反応して目覚めてしまった連中だ。
そう考えると災いの種は自分が撒いたのかも知れないと、少し自虐的になったリリスである。
「亜神召喚のスキルは封印しておいた方が良さそうね。」
リリスの言葉にサラはうんうんとうなづいた。
「そうするわね。他の魔法やスキルは強化されたんだから、それだけで私には充分よ。」
そう話すサラの表情に曇りは無くなっていた。機嫌が良くなったようだ。
その様子にリリスも一安心したのだった。
数日後の放課後、リリスは授業を終えた担任のケイト先生を通して内密の呼び出しを受けた。呼び出したのはメリンダ王女だ。
至急学生寮の最上階に来て欲しいと言う事なので、リリスは自室にカバンを置いて取り急ぎ最上階に向かった。
入学式から数日後の夜に一度訪れているとは言え、最上階に足を運ぶのは気乗りがしない。セキュリティが厳重で、ロイヤルガードが気配を消してこちらを常に探知している。リリスのスキルで全て跳ね返しているが、それでも納得できないようで、時折影のようにすぐそばを通り過ぎる事も有る。
感じなければなんでも無いのだが、なまじ感じてしまうので厄介だ。探知の波動や精神波を受けている事自体を圧として感じてしまう。
階段を上がり、階段の踊り場で待機していたメイドから検査を受けると、早速あちらこちらから探知の波動が飛んできた。気にしないようにしよう。
そう思って豪華な絨毯の敷かれた廊下を歩き始めたのだが、直ぐに検査をしていたメイドから呼び止められた。
「申し訳ありませんが、護身用の武器もこの階では持ち込み禁止です。お帰りになるまで当方で保管いたしますので、ここでお預けください。」
あらっ!
これもダメなの?
リリスが携帯していたのは通常の半分の大きさのスローイングダガーだ。以前にシューサックから譲り受けた魔金属の円柱を錬成してスローイングダガーを2本造ったのだが、そのうちの1本をリリスは再度錬成して2本の小振りなものに造り上げたのだった。勿論これは護身用として身に着けているが、護身用としては少々オーバースペックで、練習を兼ねて火魔法の効果まで付与したものである。
止む無くリリスは2本の小さなスローイングダガーをメイドに預けた。これが平民なら取り上げられることもあるかも知れないが、一応貴族の子女なので取り上げられることは無いだろう。
メイドの手招きで廊下を進み、目的の部屋の前に立ち、豪華な扉を開けてリリスは中に入った。
広いリビングの奥からリリスを呼ぶ声がする。
あの声はメリンダ王女だ。
直ぐにそちらに向かうと大きな長いソファにメリンダ王女と小人が座っていた。小人は勿論フィリップ王子の使い魔だが、その肩に芋虫が生えている。
どうやら芋虫はレオナルド王子の使い魔のようだ。
お互いに挨拶を交わして、リリスはメリンダ王女の対面のソファに座った。
「ごめんなさいね、リリス。急に呼び出しちゃって。」
メリンダ王女が申し訳なさそうにリリスに話し掛けた。ゆったりとしたローブ姿は普段着なのだろうが、如何にも高級感のある素材であると分かる。
その優雅さとは裏腹に、芋虫を生やした小人の姿は異様だ。
リリスもつい怪訝そうな目で見つめてしまった。
「王子が王子に憑依って・・・不思議な構図ですね。」
リリスの言葉に小人が情けなさそうな表情を見せた。
「そうなんだよ。レオナルドがここに来たいって言うものだから・・・」
「それは仕方が無いよ。僕の国の事でどうしてもリリス君に話があるのだからね。」
「だからって僕の使い魔を使わなくても良いじゃないか。」
王子同士で軽口を叩いている。それでも一緒に行動しているのだから、基本的には仲が良いのだろう。
メイドが運んできた紅茶を飲み、少し落ち着いたところでメリンダ王女が要件を切り出した。
「リリス。これを見て貰って良いかしら?」
そう言ってメリンダ王女はメイドに指図をした。メイドがリビングの奥に姿を消すと、それと入れ替わりに男性の執事が大きな剣を運んできた。
目の前のテーブルの上に置いた途端に、禍々しい魔力の波動が伝わってくる。
どうやら魔剣のようだ。
この魔力の波動は・・・・・闇魔法の魔力ね。
長さは1m50cmほどで豪華な鞘に納められている。剣の柄にらせん状に埋め込まれている鈍い光沢の金属は魔金属なのだろう。それが時折仄かに光るのが不気味だ。
「この魔剣は王城の宝物庫のチェストの中から出てきたのよ。チェストには闇魔法のシールドが掛けられていて、つい先日まで未開封のままだったわ。」
詳しく聞くと、先日の休暇の間、メリンダ王女は王城の宝物庫の整理をしていたそうだ。そんな事は家臣の仕事じゃないのかとリリスが聞くと、メリンダ王女は楽しいから自分でやっているんだと答えた。
お宝探しのつもりなのだと言う。
確かに一国の王家の宝物庫なので、中にはとんでもない価値のものもあるのだろう。ネコババはしないわよとメリンダ王女は言うのだが。
「それが不思議なのよね。今まで誰にも開けられなかったチェストなのに、今回私が近付いた途端に自然に開いたのよ。まるで私を待っていたみたいに。」
メリンダ王女の魔力の波動に感応したと言う事なのだろうか? それまでの王女の魔力の波動には感応しなかったとなると、何が原因なのだろうか?
思い当たるとすれば闇の宝玉のくびきから解放された事や闇の亜神との接触だろうか?
あれこれと思い巡らせるリリスの顔を見ながら、メリンダ王女は小人の肩に生えている芋虫に目配せをした。
「リリス君。この魔剣はおそらく開祖エドワード王の所有物だと思われる。王国誌や文献によるとエドワード王はダークファイターと言う名の魔剣を常に所持していたらしい。だがその所在は全く不明だったんだ。」
芋虫を介してレオナルド王子が口を開いた。
「それがこれなんですか?」
リリスは問い掛けに反応して魔剣がふっと光ったように感じた。気のせいだとは思ったのだが。
不気味な魔剣を目の前にして、リリスは厄介事に巻き込まれそうな予感に苛まれていたのだった。
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