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王女とダンジョン2
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シトのダンジョン。
第3階層に降りると景色は一転して草原になっていた。心地良い風が吹き、爽やかな日差しが雲の間から差し込んでくる。
木立や低木も一切見当たらない。高さ10cmほどの草で覆われた大地が延々と広がっている。
このシチュエーションは狼の群れかしら?
そう思ったリリスの想像とは裏腹に、青い空の向こう側から黒い雲が近付いてきた。遠くからギャーギャーという金切り音が聞こえてくる。
ハービーの群れだ!
その数は30匹以上居るのだろう。
近付いてくるにつれてその不気味な顔が見えてきた。その手には様々な武器を持っている。弓矢を持つものも居れば剣を持つもの、長鎗を持つものまでいるようだ。
悲鳴のような不気味な声を上げてハービーの群れが近付いて来たかと思うと、途端に上空から10本ほどの矢が飛んできた。ジークの張っていたバリアのぶつかりカンカンと音を発てている。
拙いわね。空からの攻撃を避ける場所が無いわ。
木立すらない草原で上空から攻撃を受けるのは不利だ。
リリスは即座に3mほどの高さの土壁を自分達の四方に出現させ、更にその上を大きめの土壁でひさしが出来るように覆った。四方の土壁の上部に細長い開口部を作ると、簡易トーチカの完成だ。全体を硬化させればしばらくの物理的な攻撃にも耐えるだろう。
「よく考えたね。こんなものを即座に作るなんて。」
感心するジークを横目に、リリスはニーナと連携して射程範囲に入ってきたハービーを狙い撃ちにした。土壁の開口部からニーナが無数のウォーターカッターを放ち、リリスが威力を抑えて速度を上げた小振りなファイヤーボルトを放つ。
ニーナのウォーターカッターで少し動きの鈍ったハービーを、リリスのファイヤーボルトが貫いた。だがそれでもハービーの運動能力は高く、リリスのファイヤーボルトを寸前で回避する個体も居た。
お母様だったら、有無を言わさずファイヤーストームで焼き払うだろうなあ。
遅々として進まない攻撃に若干焦りを感じたリリスだが、ここで監督役のジークに頼るわけにもいかない。この辺りはリリスの意地でもある。
「ニーナ! 敵に開口部から攻撃されないように気を付けるのよ!」
そう叫んでニーナを見ると肩でハアハアと息をしている。魔力が少なくなってきたのかも知れない。
まだハービーは20匹ほど残っていて、土壁のトーチカにカンカンと矢が当たり、真上から剣を持って突撃してきた敵のぶつかる音がドウンと響き、その振動が伝わってくる。
拙いわね。
ニーナに魔力を補給しなければと思い、リリスはとりあえず魔力吸引をパッシブで発動させた。
その時、どうしようかと案じるリリスの様子を見て、肩の芋虫が声を掛けてきた。
「リリス。私の闇魔法で対応出来るわよ。但し、憑依のレベルを上げる必要があるんだけどね。」
「憑依のレベルを上げるの? それってメルに操られるって事?」
「形の上ではね。でも実際に使う魔力はリリスの魔力なのよ。リリスの身体を使って私が魔法を発動するだけだから。」
そう言いながら芋虫は小声で、
「あのジークに恩を着るのは嫌でしょ? 私もあいつの世話にはなりたくないからね。」
この言葉でリリスも決断した。
芋虫がその身体を震わせながら光り出すと、リリスの身体が自分の意志を離れて動こうとしている。その違和感に不安を感じながらもメリンダ王女に委ねる事にしたリリスは、魔力がふっと吸い上げられていくのを感じた。
リリスの意志とは関係なく、その両手が目の前に突き出される。その両手の間に黒い塊が出現した。赤い不気味な光が時折その黒い塊の表面に走る。それと共に禍々しい妖気が立ち込めてきた。
「外に出すわよ。」
芋虫の声と同時に土壁の開口部からその黒い塊はゆっくりと外に出た。外に出た黒い塊はまるで黒いファイヤーボールのようだ。
「これって黒炎なの?」
「あらっ、良く知っているわね。闇魔法ってあまり知られてない筈なんだけど・・・」
異世界物のラノベでよく出てくるのよね。
そう思ったリリスの耳に芋虫の叫びが聞こえてきた。
「制御が効かないわ! 魔力が途切れずに流れてくる!」
「リリス! あんた、どれだけ魔力量があるのよ! 少し抑えてよ!」
そう言われても今はリリスの意志で身体が動かない。
「メル! あなたの意志で止めれば良いじゃないの!」
「それが制御出来ないのよ!」
芋虫の叫びを聞いてリリスは思いだした。
メリンダ王女に憑依を委ねる直前に魔力吸引を発動させたのだった。
だが今の状態ではそれを解除する事も出来ない。
魔力吸引スキルが暴走しているのかしら?
考えあぐねているうちにも大地から魔力がゴウッと音を立てて流れ込んでくる。
外に出した黒炎は徐々に大きくなり、直径が5m以上になってきた。その禍々しい妖気と共に強烈な瘴気まで漂い、その余波でハービー達の中にもふらふらと迷走して地上に落ちてくるものまで出始めた。
まあ、蚊取り線香みたいになっているわね。
呑気に構えるリリスに反して、焦りを見せる芋虫が魔力を集中させ、黒炎を上空に解き放った。
トーチカの前方上空に上がった直径10mにも及ぶ黒炎がカッと光り、真っ黒な闇が強烈な炎を伴って広範囲を焼き尽くしていく。
闇に触れる全てのものが崩れるように燃えて無くなっていくのが見えた。火魔法と違って静かに、しかも確実に消滅していく。
上空が真っ暗な闇に包まれ、それが晴れると上空にはもはや何もなくなっていた。
リリスの肩で芋虫がふうっと安堵のため息をついた。次の瞬間にリリスの身体の自由が利くようになった。憑依のレベルを戻したのだろう。
「メル。凄いじゃないの! ハービーの群れが全滅したわよ。」
「ハービーどころかこっちまで消え去るかと思ったわよ。あんなに巨大な黒炎なんて有り得ないわ。リリスに無暗に憑依すると碌なことが無いわね。」
そんな言い方って無いわよ。
そう思いながらもリリスはニーナとジークの方に振り返った。
ニーナは黒炎の放つ瘴気で気を失い、ジークは茫然自失の表情だ。
「メリンダ王女様。何時の間にあんな技を手に入れたのですか?」
かすれるような声でジークが呟いた。
「私じゃないわよ。私が放つ黒炎はせいぜい直径が1mほどだもの。」
「そうすると・・・・・」
そう言いながらジークはまるで化け物を見るような目でリリスの方を見た。
「私はメルに憑依されていたから何も分かりません。」
リリスはジークから視線を逸らすと、おもむろにトーチカを土に戻し始めた。土魔法の解除にはそれほどに魔力を消費しない。
ニーナを起こして再び草原を歩き始めたリリス達だが、奥に辿り着くまで魔物は全く出現しなかった。
空にまだ別の魔物が待機していたのかも知れない。それをも消滅させたのだろうか。
放たれた巨大な黒炎の威力を改めて実感しながら、リリス達は階下に続く階段を降りた。
第4階層。
そこは第3階層に続いて草原だった。
ちらほらと低木や藪も見えるのでサバンナと言った方が良さそうだ。
柔らかな日差しが降り注ぎ、爽やかな風が吹いて心地良い。
このまま魔物が出てこなければ良いピクニックになるのに。
そう思っているのはリリスだけではなさそうだ。だがダンジョンなので当然の事ながら、そう言うわけにはいかない。
「止まって!」
ニーナが叫んでリリスの動きを制すると、目の前に木の枝や石を投げつけた。その途端に地面からザザッと音を立てて、長さ1mほどの土槍が交差しながら突き出してきた。しかもその範囲が広い。20m四方に及ぶ罠だ。
随分手が込んでいるわね。
ニーナが魔力を纏った手でしゃがみ込んで操作すると、土槍は全て即座に消え去ってしまった。
「ニーナ。罠の解除が上達したわね。」
リリスが褒めるとニーナは嬉しそうにうんうんとうなづいた。
罠の解除された地面を恐る恐る歩くが、すでに解除されているので何も発動しない。それでもたどたどしく歩くリリスの様子を見てニーナもうふふと小さく笑っていた。
第4階層の中間地点に差し掛かると、草原の向こうから何かが疾走してくるのが感じられた。魔物のようだが単体だ。
この草原なら狼か?
でも狼なら群れで襲ってくるはず。
(魔装を発動してください!)
案ずるリリスの脳内に解析スキルが念話を送ってきた。即座にリリスが非表示状態で魔装を発動させる。その動作と前後して、向かってくる魔物の方向からかなり強烈な邪気と瘴気が漂ってきた。
リリスが振り返るとジークは大丈夫のようだが、ニーナが辛そうな表情をしている。その様子を察してジークが魔力のシールドを重ね掛けし始めた。
魔物は視認できる距離に近付くと立ち止まり、こちらに向かって咆哮した。体長5mもありそうな狼のような姿。だが頭部がやたらに大きく見える。よく見ると頭部が大きいのではなく、獰猛そうな顔面の両側にも顔が突き出している。
「あれって、ケルベロスじゃないの?」
リリスの肩の芋虫が呟いた。
魔物はこちらを睨むと、グアッと叫び、正面の顔の口から火の玉を放ってきた。ゴウッと言う風切り音を立ててファイヤーボールがこちらに向かい、ジークの張った重ね掛けのシールドにぶつかって燃え上がった。ドウンと言う衝撃音とともにびりびりとシールドが震動しているのが分かる。
「信じられん。シトのダンジョンでケルベロスの登場とはねえ。」
ジークの顔も緊張で強張っている。
リリスは総力戦になる事を覚悟して、ケルベロスをじっと睨みつけていた。
第3階層に降りると景色は一転して草原になっていた。心地良い風が吹き、爽やかな日差しが雲の間から差し込んでくる。
木立や低木も一切見当たらない。高さ10cmほどの草で覆われた大地が延々と広がっている。
このシチュエーションは狼の群れかしら?
そう思ったリリスの想像とは裏腹に、青い空の向こう側から黒い雲が近付いてきた。遠くからギャーギャーという金切り音が聞こえてくる。
ハービーの群れだ!
その数は30匹以上居るのだろう。
近付いてくるにつれてその不気味な顔が見えてきた。その手には様々な武器を持っている。弓矢を持つものも居れば剣を持つもの、長鎗を持つものまでいるようだ。
悲鳴のような不気味な声を上げてハービーの群れが近付いて来たかと思うと、途端に上空から10本ほどの矢が飛んできた。ジークの張っていたバリアのぶつかりカンカンと音を発てている。
拙いわね。空からの攻撃を避ける場所が無いわ。
木立すらない草原で上空から攻撃を受けるのは不利だ。
リリスは即座に3mほどの高さの土壁を自分達の四方に出現させ、更にその上を大きめの土壁でひさしが出来るように覆った。四方の土壁の上部に細長い開口部を作ると、簡易トーチカの完成だ。全体を硬化させればしばらくの物理的な攻撃にも耐えるだろう。
「よく考えたね。こんなものを即座に作るなんて。」
感心するジークを横目に、リリスはニーナと連携して射程範囲に入ってきたハービーを狙い撃ちにした。土壁の開口部からニーナが無数のウォーターカッターを放ち、リリスが威力を抑えて速度を上げた小振りなファイヤーボルトを放つ。
ニーナのウォーターカッターで少し動きの鈍ったハービーを、リリスのファイヤーボルトが貫いた。だがそれでもハービーの運動能力は高く、リリスのファイヤーボルトを寸前で回避する個体も居た。
お母様だったら、有無を言わさずファイヤーストームで焼き払うだろうなあ。
遅々として進まない攻撃に若干焦りを感じたリリスだが、ここで監督役のジークに頼るわけにもいかない。この辺りはリリスの意地でもある。
「ニーナ! 敵に開口部から攻撃されないように気を付けるのよ!」
そう叫んでニーナを見ると肩でハアハアと息をしている。魔力が少なくなってきたのかも知れない。
まだハービーは20匹ほど残っていて、土壁のトーチカにカンカンと矢が当たり、真上から剣を持って突撃してきた敵のぶつかる音がドウンと響き、その振動が伝わってくる。
拙いわね。
ニーナに魔力を補給しなければと思い、リリスはとりあえず魔力吸引をパッシブで発動させた。
その時、どうしようかと案じるリリスの様子を見て、肩の芋虫が声を掛けてきた。
「リリス。私の闇魔法で対応出来るわよ。但し、憑依のレベルを上げる必要があるんだけどね。」
「憑依のレベルを上げるの? それってメルに操られるって事?」
「形の上ではね。でも実際に使う魔力はリリスの魔力なのよ。リリスの身体を使って私が魔法を発動するだけだから。」
そう言いながら芋虫は小声で、
「あのジークに恩を着るのは嫌でしょ? 私もあいつの世話にはなりたくないからね。」
この言葉でリリスも決断した。
芋虫がその身体を震わせながら光り出すと、リリスの身体が自分の意志を離れて動こうとしている。その違和感に不安を感じながらもメリンダ王女に委ねる事にしたリリスは、魔力がふっと吸い上げられていくのを感じた。
リリスの意志とは関係なく、その両手が目の前に突き出される。その両手の間に黒い塊が出現した。赤い不気味な光が時折その黒い塊の表面に走る。それと共に禍々しい妖気が立ち込めてきた。
「外に出すわよ。」
芋虫の声と同時に土壁の開口部からその黒い塊はゆっくりと外に出た。外に出た黒い塊はまるで黒いファイヤーボールのようだ。
「これって黒炎なの?」
「あらっ、良く知っているわね。闇魔法ってあまり知られてない筈なんだけど・・・」
異世界物のラノベでよく出てくるのよね。
そう思ったリリスの耳に芋虫の叫びが聞こえてきた。
「制御が効かないわ! 魔力が途切れずに流れてくる!」
「リリス! あんた、どれだけ魔力量があるのよ! 少し抑えてよ!」
そう言われても今はリリスの意志で身体が動かない。
「メル! あなたの意志で止めれば良いじゃないの!」
「それが制御出来ないのよ!」
芋虫の叫びを聞いてリリスは思いだした。
メリンダ王女に憑依を委ねる直前に魔力吸引を発動させたのだった。
だが今の状態ではそれを解除する事も出来ない。
魔力吸引スキルが暴走しているのかしら?
考えあぐねているうちにも大地から魔力がゴウッと音を立てて流れ込んでくる。
外に出した黒炎は徐々に大きくなり、直径が5m以上になってきた。その禍々しい妖気と共に強烈な瘴気まで漂い、その余波でハービー達の中にもふらふらと迷走して地上に落ちてくるものまで出始めた。
まあ、蚊取り線香みたいになっているわね。
呑気に構えるリリスに反して、焦りを見せる芋虫が魔力を集中させ、黒炎を上空に解き放った。
トーチカの前方上空に上がった直径10mにも及ぶ黒炎がカッと光り、真っ黒な闇が強烈な炎を伴って広範囲を焼き尽くしていく。
闇に触れる全てのものが崩れるように燃えて無くなっていくのが見えた。火魔法と違って静かに、しかも確実に消滅していく。
上空が真っ暗な闇に包まれ、それが晴れると上空にはもはや何もなくなっていた。
リリスの肩で芋虫がふうっと安堵のため息をついた。次の瞬間にリリスの身体の自由が利くようになった。憑依のレベルを戻したのだろう。
「メル。凄いじゃないの! ハービーの群れが全滅したわよ。」
「ハービーどころかこっちまで消え去るかと思ったわよ。あんなに巨大な黒炎なんて有り得ないわ。リリスに無暗に憑依すると碌なことが無いわね。」
そんな言い方って無いわよ。
そう思いながらもリリスはニーナとジークの方に振り返った。
ニーナは黒炎の放つ瘴気で気を失い、ジークは茫然自失の表情だ。
「メリンダ王女様。何時の間にあんな技を手に入れたのですか?」
かすれるような声でジークが呟いた。
「私じゃないわよ。私が放つ黒炎はせいぜい直径が1mほどだもの。」
「そうすると・・・・・」
そう言いながらジークはまるで化け物を見るような目でリリスの方を見た。
「私はメルに憑依されていたから何も分かりません。」
リリスはジークから視線を逸らすと、おもむろにトーチカを土に戻し始めた。土魔法の解除にはそれほどに魔力を消費しない。
ニーナを起こして再び草原を歩き始めたリリス達だが、奥に辿り着くまで魔物は全く出現しなかった。
空にまだ別の魔物が待機していたのかも知れない。それをも消滅させたのだろうか。
放たれた巨大な黒炎の威力を改めて実感しながら、リリス達は階下に続く階段を降りた。
第4階層。
そこは第3階層に続いて草原だった。
ちらほらと低木や藪も見えるのでサバンナと言った方が良さそうだ。
柔らかな日差しが降り注ぎ、爽やかな風が吹いて心地良い。
このまま魔物が出てこなければ良いピクニックになるのに。
そう思っているのはリリスだけではなさそうだ。だがダンジョンなので当然の事ながら、そう言うわけにはいかない。
「止まって!」
ニーナが叫んでリリスの動きを制すると、目の前に木の枝や石を投げつけた。その途端に地面からザザッと音を立てて、長さ1mほどの土槍が交差しながら突き出してきた。しかもその範囲が広い。20m四方に及ぶ罠だ。
随分手が込んでいるわね。
ニーナが魔力を纏った手でしゃがみ込んで操作すると、土槍は全て即座に消え去ってしまった。
「ニーナ。罠の解除が上達したわね。」
リリスが褒めるとニーナは嬉しそうにうんうんとうなづいた。
罠の解除された地面を恐る恐る歩くが、すでに解除されているので何も発動しない。それでもたどたどしく歩くリリスの様子を見てニーナもうふふと小さく笑っていた。
第4階層の中間地点に差し掛かると、草原の向こうから何かが疾走してくるのが感じられた。魔物のようだが単体だ。
この草原なら狼か?
でも狼なら群れで襲ってくるはず。
(魔装を発動してください!)
案ずるリリスの脳内に解析スキルが念話を送ってきた。即座にリリスが非表示状態で魔装を発動させる。その動作と前後して、向かってくる魔物の方向からかなり強烈な邪気と瘴気が漂ってきた。
リリスが振り返るとジークは大丈夫のようだが、ニーナが辛そうな表情をしている。その様子を察してジークが魔力のシールドを重ね掛けし始めた。
魔物は視認できる距離に近付くと立ち止まり、こちらに向かって咆哮した。体長5mもありそうな狼のような姿。だが頭部がやたらに大きく見える。よく見ると頭部が大きいのではなく、獰猛そうな顔面の両側にも顔が突き出している。
「あれって、ケルベロスじゃないの?」
リリスの肩の芋虫が呟いた。
魔物はこちらを睨むと、グアッと叫び、正面の顔の口から火の玉を放ってきた。ゴウッと言う風切り音を立ててファイヤーボールがこちらに向かい、ジークの張った重ね掛けのシールドにぶつかって燃え上がった。ドウンと言う衝撃音とともにびりびりとシールドが震動しているのが分かる。
「信じられん。シトのダンジョンでケルベロスの登場とはねえ。」
ジークの顔も緊張で強張っている。
リリスは総力戦になる事を覚悟して、ケルベロスをじっと睨みつけていた。
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