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王族からの依頼
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闇魔法で転移され、不安に駆られるリリスの視界が次の瞬間に一変した。
高級そうな調度品に囲まれた部屋のソファにリリスは座っていた。その傍にはフィリップ王子が座り、その対面にフィリップ王子と年齢の近そうな男性が座り、その隣にはリリスと年齢の近そうな女の子が座っている。この二人がミラ王国の王族なのだろうか?
「改めて自己紹介しよう。僕はレオナルド。王家の第3王子だ。フィリップとは魔法学院の同級生だったんだよ。隣に座っているメルは僕の異母妹で第5王女になる。」
レオナルド王子の紹介に応じてメリンダ王女が口を開いた。
「初めまして、リリスお姉様。私は来期に魔法学院の新入生になりますからよろしくね。」
うっと声を詰まらせて改めてメリンダ王女を見る。背格好はリリスと同じくらいだが、面長の整った顔立ちが印象的だ。
クールビューティねえ。年齢よりも大人に見えるわね。
「それで、メル。君は僕に謝罪の言葉は無いのかい?」
フィリップ王子の言葉にメリンダ王女は平然とほほ笑みながら、
「嫌だわ、フィリップお兄様。少し喝を入れただけじゃないですか。」
「よく言うよね。」
フィリップ王子はそう言うとぷいっと顔をそむけた。
まあまあとフィリップ王子を宥めながら、レオナルド王子は身を乗り出して話の本題に入った。
「君にこれを見て欲しい。」
そう言いながらレオナルド王子が傍らに置かれていた箱から取り出したのは、黒い台座に装着された大きな宝玉だった。その宝玉は透明だが中心部分が黒く渦巻いていて不気味な波動を放っている。
「これは我が王家に開祖当時から伝わる宝玉で、国家の保護安寧の役割を果たしていると伝えられている。」
「ドルキアに水の亜神の加護を纏った宝玉がある様に、我が国にも亜神の加護を纏った宝玉があるんだよ。これがそうなんだが君にはこの宝玉が纏っている加護が何だか分かるかい?」
そう言われてリリスはフィリップ王子の顔を見た。ばつが悪そうな表情をしてるところを見ると、水の亜神の加護の件であれこれとレオナルド王子に話したようだ。それを察してフィリップ王子は言い訳を言い出した。
「リリス。王都の神殿で行なわれた儀式はすでに大陸中に知られているからね。僕が話す以前にレオナルドも知っていたよ。」
「でも私が関与している事は知られていない筈ですけどね。」
リリスの言葉にフィリップ王子は言葉も無くうなだれた。
フィリップ王子ったら何処まで喋っちゃったのかしら?
そう思いながらリリスは宝玉を見つめた。恐らくこの宝玉も加護の力が薄れているのだろう。僅かに放たれている波動は・・・どうやら闇魔法のもののようだが、その台座からはまた違ったものを感じる。
疑問を持ちながらもリリスは、
「これって闇魔法の加護を放っているのですか?」
そう答えると、レオナルド王子はうんうんとうなづいた。
「そうなんだよ。ミラ王国を守っているのが闇の亜神の加護だと知って、さぞかし驚いているだろうね。我が国は建国当時から闇の亜神の加護で守られて来たんだ。だが闇の亜神の加護は150年ほどで薄れてしまう。それを補充する為に開祖は闇の亜神と契約を結んだ。王族で闇の属性を持つ者がその生命力を注ぎ込んで宝玉を活性化すれば、それを合図に闇の亜神から魔力が送られてくる事になっているんだよ。」
そう言いながらレオナルド王子は深刻な表情でメリンダ王女の顔を見つめた。
リリスはその時点で状況を察した。このままでは闇の属性を持って生まれてきたメリンダ王女が生贄になる運命なのだ。
メリンダ王女も一瞬暗い表情を見せたが、ふっと表情を変えてリリスの方に向き直った。
「私はそんな運命に簡単には従わないわよ。僅かでも改変出来る可能性があるなら抗ってやるわ。」
強く言い放つメリンダ王女だがその内心はやはり深刻なのだろう。それを想うとリリスも辛くなってくる。この際自分に出来る事はやってあげようと思いながら、さっきから気に成っている宝玉の台座をリリスはもう一度精査した。
これって・・・・・チャーリーの気配がする。土の亜神が関わっているのかしら?
とりあえず本人に聞いてみた方が良いわね。
「リリス。君の事はフィリップから色々と聞いている。それに君は魔法学院に非常勤講師として派遣したジークの課外授業も受けている。その際の報告もこちらには伝わってきているんだ。未知のスキルを持っているかも知れないと・・・」
「それは買い被り過ぎですよ。でも協力は惜しみません。」
そう言いながら、リリスはメリンダ王女の顔を見つめて強くうなづいた。
「それでこの宝玉ですが、少しの間お借り出来ますか? 見せたい人が居るんですけど・・・・」
「その宝玉は国宝だからね。持ち出せないんだよ。」
そう言ってレオナルド王子はふっと笑った。
「・・・・・と言うのは建前で、すでに僕の裁量権の元にある。加護が薄れてきた事も有り、メルの事も有って、宝玉の扱いは父上から全面的に委任されているんだよ。但し、君に預けるからにはメルにも同行してもらう事になる。勿論使い魔の形でね。」
それを聞いて、うっとリリスは声を詰まらせた。あの芋虫の形で憑依されるに違いないからだ。
「闇魔法の憑依を使いこなせるのはメルだけなんだ。仕方が無いんだよ。」
レオナルド王子の言葉にメリンダ王女も真剣な表情でうなづいている。
止むを得ないわね。
リリスは意を決して了承した。
数分後、リリスはメリンダ王女の闇魔法の転移で魔法学院の敷地内に移動した。その右肩には目玉の付いた芋虫が生えている。メリンダ王女の使い魔だ。
憑依の程度を加減しているので、リリスの行動に制限は無い。それでもその姿は奇妙だが。
「リリスお姉さま。呼び捨てにして良い? 私もメルって呼んで欲しいから。」
「ええ、良いわよ、メル。」
「ありがとう、リリス。それでどこへ行くの?」
「魔法学院の敷地にあるレミア族の遺跡の地下よ。」
そう言いながらリリスはメリンダ王女に、レミア族の遺跡や賢者ドルネアのホログラムの話を掻い摘んで話した。
遺跡の祠から賢者ドルネアの研究施設に転移すると、早速賢者様のホログラムがリリスを出迎えた。ドルネアに無理矢理頼み込み、魔方陣のようなデザインの転移装置を作動させてもらって転移した先は、中央に大きな水晶が立つ薄暗い空間だ。以前訪れた時と同様に、高さ3mほどの水晶が地味に茶色く光っている。
「リリス。ここって何処なの? こんな場所が魔法学院の地下にあるなんて、聞いていないわよ。」
「誰も知らないと思うわよ。今のところ私しか入れないようだから。」
そう言いながらリリスは肩に生えている芋虫をツンツンと突きながら、
「メル。此処までの事もこれから起きる事も内緒だからね。」
「分かっているわよ、お姉様。」
芋虫の目玉がパチパチと目配せをした。分かっていると言う合図なのだろう。
リリスは姿勢を正して茶色に光る水晶に向かい大声を上げた。
「チャーリー! 要件があるの! 出て来てくれないかしら。」
暫くして水晶の中から小太りの男性が現われた。チャーリーだ。
「どうしたんや? なんか用か?」
ぶっきらぼうに尋ねるチャーリーだ。まるで寝起きで不機嫌なように見える。
だがリリスの肩に生えている芋虫を見て、チャーリーは真顔に戻った。
「お客さんを連れてきたようやね。」
「メリンダです。よろしくお願いします。」
使い魔の芋虫が身体を折り曲げて挨拶をした。
「メルは・・・・・ミラ王国の王女様なのよ。」
リリスの言葉にチャーリーはほうっと声を上げた。リリスはチャーリーに、メリンダ王女を連れて来た経緯を簡単に説明した。
「それで、これを見て欲しいんだけど・・・・・」
そう言いながらリリスが目の前に取り出した宝玉を見て、チャーリーはあっと驚きの声を上げた。
「それって・・・・・僕が加護を台座に纏わらせた宝玉やないか。」
やっぱりね。だってチャーリーの気配を感じたものね。
「この宝玉って誰のものなの?」
「ゲルだ。闇の亜神のかけらだよ。奴に頼まれて宝玉の台座に僕の加護を纏わらせたんや。」
そう言いながらチャーリーは宝玉をしげしげと眺めた。
「・・・・・そうか。あいつ、こんなものを造ったんか。」
「ねえ、チャーリー。これって本当は何なの? 宝玉が闇魔法の加護を纏っているのは分かるんだけど・・・・・」
リリスの問い掛けにチャーリーはう~んと唸って黙り込んでしまった。
高級そうな調度品に囲まれた部屋のソファにリリスは座っていた。その傍にはフィリップ王子が座り、その対面にフィリップ王子と年齢の近そうな男性が座り、その隣にはリリスと年齢の近そうな女の子が座っている。この二人がミラ王国の王族なのだろうか?
「改めて自己紹介しよう。僕はレオナルド。王家の第3王子だ。フィリップとは魔法学院の同級生だったんだよ。隣に座っているメルは僕の異母妹で第5王女になる。」
レオナルド王子の紹介に応じてメリンダ王女が口を開いた。
「初めまして、リリスお姉様。私は来期に魔法学院の新入生になりますからよろしくね。」
うっと声を詰まらせて改めてメリンダ王女を見る。背格好はリリスと同じくらいだが、面長の整った顔立ちが印象的だ。
クールビューティねえ。年齢よりも大人に見えるわね。
「それで、メル。君は僕に謝罪の言葉は無いのかい?」
フィリップ王子の言葉にメリンダ王女は平然とほほ笑みながら、
「嫌だわ、フィリップお兄様。少し喝を入れただけじゃないですか。」
「よく言うよね。」
フィリップ王子はそう言うとぷいっと顔をそむけた。
まあまあとフィリップ王子を宥めながら、レオナルド王子は身を乗り出して話の本題に入った。
「君にこれを見て欲しい。」
そう言いながらレオナルド王子が傍らに置かれていた箱から取り出したのは、黒い台座に装着された大きな宝玉だった。その宝玉は透明だが中心部分が黒く渦巻いていて不気味な波動を放っている。
「これは我が王家に開祖当時から伝わる宝玉で、国家の保護安寧の役割を果たしていると伝えられている。」
「ドルキアに水の亜神の加護を纏った宝玉がある様に、我が国にも亜神の加護を纏った宝玉があるんだよ。これがそうなんだが君にはこの宝玉が纏っている加護が何だか分かるかい?」
そう言われてリリスはフィリップ王子の顔を見た。ばつが悪そうな表情をしてるところを見ると、水の亜神の加護の件であれこれとレオナルド王子に話したようだ。それを察してフィリップ王子は言い訳を言い出した。
「リリス。王都の神殿で行なわれた儀式はすでに大陸中に知られているからね。僕が話す以前にレオナルドも知っていたよ。」
「でも私が関与している事は知られていない筈ですけどね。」
リリスの言葉にフィリップ王子は言葉も無くうなだれた。
フィリップ王子ったら何処まで喋っちゃったのかしら?
そう思いながらリリスは宝玉を見つめた。恐らくこの宝玉も加護の力が薄れているのだろう。僅かに放たれている波動は・・・どうやら闇魔法のもののようだが、その台座からはまた違ったものを感じる。
疑問を持ちながらもリリスは、
「これって闇魔法の加護を放っているのですか?」
そう答えると、レオナルド王子はうんうんとうなづいた。
「そうなんだよ。ミラ王国を守っているのが闇の亜神の加護だと知って、さぞかし驚いているだろうね。我が国は建国当時から闇の亜神の加護で守られて来たんだ。だが闇の亜神の加護は150年ほどで薄れてしまう。それを補充する為に開祖は闇の亜神と契約を結んだ。王族で闇の属性を持つ者がその生命力を注ぎ込んで宝玉を活性化すれば、それを合図に闇の亜神から魔力が送られてくる事になっているんだよ。」
そう言いながらレオナルド王子は深刻な表情でメリンダ王女の顔を見つめた。
リリスはその時点で状況を察した。このままでは闇の属性を持って生まれてきたメリンダ王女が生贄になる運命なのだ。
メリンダ王女も一瞬暗い表情を見せたが、ふっと表情を変えてリリスの方に向き直った。
「私はそんな運命に簡単には従わないわよ。僅かでも改変出来る可能性があるなら抗ってやるわ。」
強く言い放つメリンダ王女だがその内心はやはり深刻なのだろう。それを想うとリリスも辛くなってくる。この際自分に出来る事はやってあげようと思いながら、さっきから気に成っている宝玉の台座をリリスはもう一度精査した。
これって・・・・・チャーリーの気配がする。土の亜神が関わっているのかしら?
とりあえず本人に聞いてみた方が良いわね。
「リリス。君の事はフィリップから色々と聞いている。それに君は魔法学院に非常勤講師として派遣したジークの課外授業も受けている。その際の報告もこちらには伝わってきているんだ。未知のスキルを持っているかも知れないと・・・」
「それは買い被り過ぎですよ。でも協力は惜しみません。」
そう言いながら、リリスはメリンダ王女の顔を見つめて強くうなづいた。
「それでこの宝玉ですが、少しの間お借り出来ますか? 見せたい人が居るんですけど・・・・」
「その宝玉は国宝だからね。持ち出せないんだよ。」
そう言ってレオナルド王子はふっと笑った。
「・・・・・と言うのは建前で、すでに僕の裁量権の元にある。加護が薄れてきた事も有り、メルの事も有って、宝玉の扱いは父上から全面的に委任されているんだよ。但し、君に預けるからにはメルにも同行してもらう事になる。勿論使い魔の形でね。」
それを聞いて、うっとリリスは声を詰まらせた。あの芋虫の形で憑依されるに違いないからだ。
「闇魔法の憑依を使いこなせるのはメルだけなんだ。仕方が無いんだよ。」
レオナルド王子の言葉にメリンダ王女も真剣な表情でうなづいている。
止むを得ないわね。
リリスは意を決して了承した。
数分後、リリスはメリンダ王女の闇魔法の転移で魔法学院の敷地内に移動した。その右肩には目玉の付いた芋虫が生えている。メリンダ王女の使い魔だ。
憑依の程度を加減しているので、リリスの行動に制限は無い。それでもその姿は奇妙だが。
「リリスお姉さま。呼び捨てにして良い? 私もメルって呼んで欲しいから。」
「ええ、良いわよ、メル。」
「ありがとう、リリス。それでどこへ行くの?」
「魔法学院の敷地にあるレミア族の遺跡の地下よ。」
そう言いながらリリスはメリンダ王女に、レミア族の遺跡や賢者ドルネアのホログラムの話を掻い摘んで話した。
遺跡の祠から賢者ドルネアの研究施設に転移すると、早速賢者様のホログラムがリリスを出迎えた。ドルネアに無理矢理頼み込み、魔方陣のようなデザインの転移装置を作動させてもらって転移した先は、中央に大きな水晶が立つ薄暗い空間だ。以前訪れた時と同様に、高さ3mほどの水晶が地味に茶色く光っている。
「リリス。ここって何処なの? こんな場所が魔法学院の地下にあるなんて、聞いていないわよ。」
「誰も知らないと思うわよ。今のところ私しか入れないようだから。」
そう言いながらリリスは肩に生えている芋虫をツンツンと突きながら、
「メル。此処までの事もこれから起きる事も内緒だからね。」
「分かっているわよ、お姉様。」
芋虫の目玉がパチパチと目配せをした。分かっていると言う合図なのだろう。
リリスは姿勢を正して茶色に光る水晶に向かい大声を上げた。
「チャーリー! 要件があるの! 出て来てくれないかしら。」
暫くして水晶の中から小太りの男性が現われた。チャーリーだ。
「どうしたんや? なんか用か?」
ぶっきらぼうに尋ねるチャーリーだ。まるで寝起きで不機嫌なように見える。
だがリリスの肩に生えている芋虫を見て、チャーリーは真顔に戻った。
「お客さんを連れてきたようやね。」
「メリンダです。よろしくお願いします。」
使い魔の芋虫が身体を折り曲げて挨拶をした。
「メルは・・・・・ミラ王国の王女様なのよ。」
リリスの言葉にチャーリーはほうっと声を上げた。リリスはチャーリーに、メリンダ王女を連れて来た経緯を簡単に説明した。
「それで、これを見て欲しいんだけど・・・・・」
そう言いながらリリスが目の前に取り出した宝玉を見て、チャーリーはあっと驚きの声を上げた。
「それって・・・・・僕が加護を台座に纏わらせた宝玉やないか。」
やっぱりね。だってチャーリーの気配を感じたものね。
「この宝玉って誰のものなの?」
「ゲルだ。闇の亜神のかけらだよ。奴に頼まれて宝玉の台座に僕の加護を纏わらせたんや。」
そう言いながらチャーリーは宝玉をしげしげと眺めた。
「・・・・・そうか。あいつ、こんなものを造ったんか。」
「ねえ、チャーリー。これって本当は何なの? 宝玉が闇魔法の加護を纏っているのは分かるんだけど・・・・・」
リリスの問い掛けにチャーリーはう~んと唸って黙り込んでしまった。
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