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保養地での出来事3
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突然の喧騒。
街路に出て怪我人の搬送の邪魔にならないように、通行人を仕切っていた店員が店に戻ってきた。その獣人の店員が近くに来たのでフィリップ王子が尋ねると、店員は額の汗を拭きながらその状況を話してくれた。
「ダンジョンが異常な状態になっているそうです。深い階層でしか出てこないような凶悪な魔物が2階層に出て来て、薬草採取の為にダンジョンに入っていた初級の冒険者が多数犠牲になったと聞いています。」
「その凶悪な魔物って何だ?」
「魔剣を持ったオーガファイターや3属性を持つオーガメイジだそうですよ。」
ふうんとフィリップ王子は答えてリリスの顔を覗き込んだ。
「オーガファイターやオーガメイジならリリスの敵ではないよね。」
いえいえ、とんでもありませんとリリスが答えると、王子は鼻で笑った。
「白々しい事を言わなくても良いよ。君のダンジョンチャレンジでの様子は全てデータとして把握しているんだからね。」
「それって私の個人情報じゃないですか。学院に無断で手に入れたんですか?」
「諜報機関の長が同盟国の個人情報や機密情報を手に入れて何が悪いんだ?」
そう言う事を言うのね。
若干呆れたリリスの反応をからかうようにフィリップ王子はニヤッと笑ってリリスを促した。
「リリス。ダンジョンに行ってみようじゃないか。危険な魔物がダンジョンの入り口まで出て来ては困るからね。」
「それはこのドメルに駐屯している警備兵の仕事ですよ。」
「彼等はそれほどに役には立たないよ。魔物退治のプロじゃないからね。剣と弓矢だけで対処出来る相手じゃないと思うよ。」
それはそうかも知れないけど・・・。
躊躇うリリスの手を取り、王子はそのまま店から出て、ダンジョンの方向に向かった。
「王族のする事じゃありませんよ。」
王子の耳元に小声で話すリリスに王子は速足で歩きながら笑顔で答えた。
「大丈夫だよ。僕の周りには魔法に長けたロイヤルガードも居るからね。それに何より君がいるじゃないか。」
私の手の内を見せろって言うの?
王子の手を振り払って逃げようかしら。
そう思ったリリスだが、王子をそのまま放置するのも気が引ける。
その律義さがリリスの長所であり、この状況では短所であると言って良いだろう。
嫌がるリリスを無理矢理ダンジョンの入り口まで連れて来た王子は、群がっている冒険者を掻き分けてダンジョンの中に入ろうとした。
リリスも止む無くその後に付いて行く。
おい、危険だから止せ!
背後から冒険者達が声を掛けてきたが、王子はそれを全く気にせずにリリスの手を引き、ダンジョンの中に入ってしまった。
ドメルのダンジョンの1階層。
目の前に広がるのは草原だ。そのところどころに薬草の群生があるのが分かる。リリスは薬学のケイト先生と潜ったケフラのダンジョンでの経験から、薬草の群生が判別出来るようになっていたのだ。
初級の冒険者達が薬草採取に来るのも分かる。様々な薬草が群生しているのが一目瞭然だからだ。
ケフラのダンジョンより親切ね。
思わず感心するリリスだが、1階層の奥にまで進むと階下に下る階段から魔物が飛び出してくる気配を感じた。
「拙いな。奴らはここまで出てくるつもりだぞ。」
フィリップ王子がその場で身構えた。フィリップ王子の周りにゆらゆらと影が見え隠れしている。ロイヤルガードのダークエルフ達なのだろう。
階段から昇ってきたのは魔剣を持ちメタルアーマーを着込んだオーガファイターと、妖気を放つローブを着たオーガメイジだ。だが数が多い。
オーガファイターは5体、オーガメイジは3体も居る。
これではリリスも参戦しない訳にいかない。
王子の身体の周囲に凝縮した魔力が感じられた次の瞬間、その肩口から強烈なファイヤーボールが幾つも放たれた。
勿論ロイヤルガードが放ったものだ。
ゴウッと言う音を発てて放たれた大きなファイヤーボールは、こちらに向かおうとするオーガファイター達を直撃した。
ドウンと衝撃音と爆炎が上がる。その衝撃で吹き飛ばされ、倒れてしまったオーガファイター達だが、そのどれもがゆっくりと起き上がってきた。
「ガードが堅いな。奴らは火属性に耐性を持っているようだ。別の手でやってみようか。」
そう言うと今度は王子の肩口からバリバリバリッと激しい音を発てて、強烈なサンダーボルトが放たれた。その雷撃はそれぞれが干渉しあって網目のようにオーガファーター達を包み込む。大きな雷鳴と眩い閃光で目の前が見えない。数秒後に視界が明瞭になると、すべての敵が倒れていた。
だがそれでもオーガファイター達はむっくりと起き上がってきた。それと同時にお返しとばかりに、後方に居たオーガメイジ達からのファイヤーボールがこちらに向かってきた。
「シールドを張れ!」
王子が叫ぶと二人の前に魔力のシールドが幾重にも張られた。これもロイヤルガードの得意技だ。その直後にドドーンと激しい衝撃が伝わってきた。
その間にオーガファイター達が近付いてくる。
「リリス。君も手伝ってくれ。持てる力を出し惜しみしている場合じゃないぞ。」
そう言われても全て曝け出すのは拙いわよねえ。
そう思いつつ、リリスは二重構造のファイヤーボルトで相手の出方を見ようとした。
極太の5本のファイヤーボルトがリリスの両手から放たれ、それぞれが投擲スキルの効果でオーガファイター達の動きを補足して追尾していく。更に投擲スキルに補正が掛かり、強烈な回転が与えられたファイヤーボルトがキーンと音を発てて滑空し、5本全弾が命中した。
二重構造の効果で着弾と共にオーガファイターのメタルアーマーに穴をあけ、中に仕組まれたもう1本のファイヤーボルトがオーガファイターの身体を焼き尽くす。3体のオーガファイターはその場で消し炭になってしまった。黒煙がその場からもうもうと立ち上がっている。
「これは聞きしに勝る威力だね。あの太さの火のボルトがあれだけ高速でぶつかるんだからなあ。しかも自動追尾って反則技だねえ。」
王子がしきりに感心している。
だが残りの2体のオーガファイターはメタルアーマーを損傷しているものの、再びむっくりと立ち上がり、剣を構え直してこちらに向かってきた。
その間にもオーガメイジ達からの飛び道具がシールドを襲ってきている。
「背後のオーガメイジ達は何とかするから、君はあの2体のオーガファイターを処理してくれ。」
あらあら。
丸投げされちゃったわ。
でもどうしたら良いのかしら?
リリスは2体のオーガファイターに向けて解析スキルを発動させた。
『多少の肉体的損傷は受けていますが、戦闘能力はほとんど落ちていませんね。』
あれでもダメって、そんなに敵の耐性が高いの?
『分かっているだけでも火と雷と風の属性に対して、かなり高い耐性を持っていますね。』
それって現状では敵いっこないって事?
『何を言っているんですか! こんな時こその攻撃があるじゃないですか。』
何?
『毒ですよ。毒!』
う~ん。
でも敵も毒への耐性ならもっているでしょ?
『確かに普通の毒に対する耐性はそれなりに持っているようです。従って毒の種類を変えましょう。腐食性の毒が有効だと思います。』
腐食性の毒って蟻酸のようなもの?
『簡単に言えばそうですね。これを精製して熱に対する耐性を付加し、二重構造のファイヤーボルトの中に仕込めば良いですよ。』
『粘着性を持たせれば、ファイヤーボルトの炎熱でガス状になって身体を蝕んでいくんです。』
考えただけでもおぞましいわね。
でも迷っている暇は無いわ。
リリスは解析スキルのガイドに従って腐食性の高い毒を精製し、二重構造のファイヤーボルトの内部にそれを仕込んだ。両手に1本づつ出現させると内部に若干緑色の光が見える。これが精製された毒なのだろう。イメージ通りに出来上がっていれば良いのだが。
うんっと気合を入れて放ったファイヤーボルトは、それぞれが2体のオーガファイターを直撃した。
オーガファイターも耐性に自信を持っているようで、怯まず受け止めたのだが、今度は様子が違った。ファイヤーボルトで穿たれたメタルアーマーの中に腐食性の毒が広がる。それが炎熱で気化し、付与された粘着性と耐熱性によって緑色のドロッとしたガスとなり、オーガファイターの全身を包み込んで蝕んでいく。
2体のオーガファイターは苦しみ悶えながらその場に倒れ込んだ。
その間に後方に居たオーガメイジは、王子のロイヤルガード達の奮闘によって見事に倒された。さすがは王族を守るロイヤルガードである。
シールドを解除して王子は倒れている2体のオーガファイターの傍に近付いた。だがその表情がかなり険しい。
近付くリリスに王子は問い掛けた。
「これも君の仕業なのかい?」
王子が指差す先にはオーガファイターの緑変した死骸があった。しかもその各所の体組織が毒のせいでドロッと溶け出している。
ちょっと!
これってやり過ぎじゃないの?
こんなに威力を高めろとは言わなかったわよ。
『そんなに威力を高めていませんが、何か問題でも?』
しらっと言うわね。
「もう、何も言わないようにするよ。考えるだけ無駄な気がする。」
王子は呆れてしまったようだ。
「今、僕の周りでロイヤルガード達が話し合っているよ。今の君の攻撃を僕が受けた場合に、果たして回避出来るのか? 生命を維持できる可能性がどれほどなのか? そんな声が聞こえてくるんだけどね。」
「そんな事はしませんよ! それに何とかしろって言ったのは殿下じゃないですか。」
「殿下じゃなくて、兄さんだよ。」
今はそんな事はどうでも良いわよ!
心の中でそう叫んだリリスであった。
だが二人で地上に戻ろうとしたその時、突然二人の周りが紫色の霧に包まれ何も見えなくなった。その霧の向こうから2体の人影が現われて、こちらにゆっくりと近付いてくるのが見えた。
その人影から放たれる魔力の大きさが尋常ではない。強力な魔力と力の持ち主であることは明白だ。更に強い妖気まで漂ってきている。
「おいおい。まさかと思うがラスボスが出て来たんじゃないだろうね。」
王子の顔にも強い緊張が走る。
リリスも身構えて敵の出方を見据えていた。
街路に出て怪我人の搬送の邪魔にならないように、通行人を仕切っていた店員が店に戻ってきた。その獣人の店員が近くに来たのでフィリップ王子が尋ねると、店員は額の汗を拭きながらその状況を話してくれた。
「ダンジョンが異常な状態になっているそうです。深い階層でしか出てこないような凶悪な魔物が2階層に出て来て、薬草採取の為にダンジョンに入っていた初級の冒険者が多数犠牲になったと聞いています。」
「その凶悪な魔物って何だ?」
「魔剣を持ったオーガファイターや3属性を持つオーガメイジだそうですよ。」
ふうんとフィリップ王子は答えてリリスの顔を覗き込んだ。
「オーガファイターやオーガメイジならリリスの敵ではないよね。」
いえいえ、とんでもありませんとリリスが答えると、王子は鼻で笑った。
「白々しい事を言わなくても良いよ。君のダンジョンチャレンジでの様子は全てデータとして把握しているんだからね。」
「それって私の個人情報じゃないですか。学院に無断で手に入れたんですか?」
「諜報機関の長が同盟国の個人情報や機密情報を手に入れて何が悪いんだ?」
そう言う事を言うのね。
若干呆れたリリスの反応をからかうようにフィリップ王子はニヤッと笑ってリリスを促した。
「リリス。ダンジョンに行ってみようじゃないか。危険な魔物がダンジョンの入り口まで出て来ては困るからね。」
「それはこのドメルに駐屯している警備兵の仕事ですよ。」
「彼等はそれほどに役には立たないよ。魔物退治のプロじゃないからね。剣と弓矢だけで対処出来る相手じゃないと思うよ。」
それはそうかも知れないけど・・・。
躊躇うリリスの手を取り、王子はそのまま店から出て、ダンジョンの方向に向かった。
「王族のする事じゃありませんよ。」
王子の耳元に小声で話すリリスに王子は速足で歩きながら笑顔で答えた。
「大丈夫だよ。僕の周りには魔法に長けたロイヤルガードも居るからね。それに何より君がいるじゃないか。」
私の手の内を見せろって言うの?
王子の手を振り払って逃げようかしら。
そう思ったリリスだが、王子をそのまま放置するのも気が引ける。
その律義さがリリスの長所であり、この状況では短所であると言って良いだろう。
嫌がるリリスを無理矢理ダンジョンの入り口まで連れて来た王子は、群がっている冒険者を掻き分けてダンジョンの中に入ろうとした。
リリスも止む無くその後に付いて行く。
おい、危険だから止せ!
背後から冒険者達が声を掛けてきたが、王子はそれを全く気にせずにリリスの手を引き、ダンジョンの中に入ってしまった。
ドメルのダンジョンの1階層。
目の前に広がるのは草原だ。そのところどころに薬草の群生があるのが分かる。リリスは薬学のケイト先生と潜ったケフラのダンジョンでの経験から、薬草の群生が判別出来るようになっていたのだ。
初級の冒険者達が薬草採取に来るのも分かる。様々な薬草が群生しているのが一目瞭然だからだ。
ケフラのダンジョンより親切ね。
思わず感心するリリスだが、1階層の奥にまで進むと階下に下る階段から魔物が飛び出してくる気配を感じた。
「拙いな。奴らはここまで出てくるつもりだぞ。」
フィリップ王子がその場で身構えた。フィリップ王子の周りにゆらゆらと影が見え隠れしている。ロイヤルガードのダークエルフ達なのだろう。
階段から昇ってきたのは魔剣を持ちメタルアーマーを着込んだオーガファイターと、妖気を放つローブを着たオーガメイジだ。だが数が多い。
オーガファイターは5体、オーガメイジは3体も居る。
これではリリスも参戦しない訳にいかない。
王子の身体の周囲に凝縮した魔力が感じられた次の瞬間、その肩口から強烈なファイヤーボールが幾つも放たれた。
勿論ロイヤルガードが放ったものだ。
ゴウッと言う音を発てて放たれた大きなファイヤーボールは、こちらに向かおうとするオーガファイター達を直撃した。
ドウンと衝撃音と爆炎が上がる。その衝撃で吹き飛ばされ、倒れてしまったオーガファイター達だが、そのどれもがゆっくりと起き上がってきた。
「ガードが堅いな。奴らは火属性に耐性を持っているようだ。別の手でやってみようか。」
そう言うと今度は王子の肩口からバリバリバリッと激しい音を発てて、強烈なサンダーボルトが放たれた。その雷撃はそれぞれが干渉しあって網目のようにオーガファーター達を包み込む。大きな雷鳴と眩い閃光で目の前が見えない。数秒後に視界が明瞭になると、すべての敵が倒れていた。
だがそれでもオーガファイター達はむっくりと起き上がってきた。それと同時にお返しとばかりに、後方に居たオーガメイジ達からのファイヤーボールがこちらに向かってきた。
「シールドを張れ!」
王子が叫ぶと二人の前に魔力のシールドが幾重にも張られた。これもロイヤルガードの得意技だ。その直後にドドーンと激しい衝撃が伝わってきた。
その間にオーガファイター達が近付いてくる。
「リリス。君も手伝ってくれ。持てる力を出し惜しみしている場合じゃないぞ。」
そう言われても全て曝け出すのは拙いわよねえ。
そう思いつつ、リリスは二重構造のファイヤーボルトで相手の出方を見ようとした。
極太の5本のファイヤーボルトがリリスの両手から放たれ、それぞれが投擲スキルの効果でオーガファイター達の動きを補足して追尾していく。更に投擲スキルに補正が掛かり、強烈な回転が与えられたファイヤーボルトがキーンと音を発てて滑空し、5本全弾が命中した。
二重構造の効果で着弾と共にオーガファイターのメタルアーマーに穴をあけ、中に仕組まれたもう1本のファイヤーボルトがオーガファイターの身体を焼き尽くす。3体のオーガファイターはその場で消し炭になってしまった。黒煙がその場からもうもうと立ち上がっている。
「これは聞きしに勝る威力だね。あの太さの火のボルトがあれだけ高速でぶつかるんだからなあ。しかも自動追尾って反則技だねえ。」
王子がしきりに感心している。
だが残りの2体のオーガファイターはメタルアーマーを損傷しているものの、再びむっくりと立ち上がり、剣を構え直してこちらに向かってきた。
その間にもオーガメイジ達からの飛び道具がシールドを襲ってきている。
「背後のオーガメイジ達は何とかするから、君はあの2体のオーガファイターを処理してくれ。」
あらあら。
丸投げされちゃったわ。
でもどうしたら良いのかしら?
リリスは2体のオーガファイターに向けて解析スキルを発動させた。
『多少の肉体的損傷は受けていますが、戦闘能力はほとんど落ちていませんね。』
あれでもダメって、そんなに敵の耐性が高いの?
『分かっているだけでも火と雷と風の属性に対して、かなり高い耐性を持っていますね。』
それって現状では敵いっこないって事?
『何を言っているんですか! こんな時こその攻撃があるじゃないですか。』
何?
『毒ですよ。毒!』
う~ん。
でも敵も毒への耐性ならもっているでしょ?
『確かに普通の毒に対する耐性はそれなりに持っているようです。従って毒の種類を変えましょう。腐食性の毒が有効だと思います。』
腐食性の毒って蟻酸のようなもの?
『簡単に言えばそうですね。これを精製して熱に対する耐性を付加し、二重構造のファイヤーボルトの中に仕込めば良いですよ。』
『粘着性を持たせれば、ファイヤーボルトの炎熱でガス状になって身体を蝕んでいくんです。』
考えただけでもおぞましいわね。
でも迷っている暇は無いわ。
リリスは解析スキルのガイドに従って腐食性の高い毒を精製し、二重構造のファイヤーボルトの内部にそれを仕込んだ。両手に1本づつ出現させると内部に若干緑色の光が見える。これが精製された毒なのだろう。イメージ通りに出来上がっていれば良いのだが。
うんっと気合を入れて放ったファイヤーボルトは、それぞれが2体のオーガファイターを直撃した。
オーガファイターも耐性に自信を持っているようで、怯まず受け止めたのだが、今度は様子が違った。ファイヤーボルトで穿たれたメタルアーマーの中に腐食性の毒が広がる。それが炎熱で気化し、付与された粘着性と耐熱性によって緑色のドロッとしたガスとなり、オーガファイターの全身を包み込んで蝕んでいく。
2体のオーガファイターは苦しみ悶えながらその場に倒れ込んだ。
その間に後方に居たオーガメイジは、王子のロイヤルガード達の奮闘によって見事に倒された。さすがは王族を守るロイヤルガードである。
シールドを解除して王子は倒れている2体のオーガファイターの傍に近付いた。だがその表情がかなり険しい。
近付くリリスに王子は問い掛けた。
「これも君の仕業なのかい?」
王子が指差す先にはオーガファイターの緑変した死骸があった。しかもその各所の体組織が毒のせいでドロッと溶け出している。
ちょっと!
これってやり過ぎじゃないの?
こんなに威力を高めろとは言わなかったわよ。
『そんなに威力を高めていませんが、何か問題でも?』
しらっと言うわね。
「もう、何も言わないようにするよ。考えるだけ無駄な気がする。」
王子は呆れてしまったようだ。
「今、僕の周りでロイヤルガード達が話し合っているよ。今の君の攻撃を僕が受けた場合に、果たして回避出来るのか? 生命を維持できる可能性がどれほどなのか? そんな声が聞こえてくるんだけどね。」
「そんな事はしませんよ! それに何とかしろって言ったのは殿下じゃないですか。」
「殿下じゃなくて、兄さんだよ。」
今はそんな事はどうでも良いわよ!
心の中でそう叫んだリリスであった。
だが二人で地上に戻ろうとしたその時、突然二人の周りが紫色の霧に包まれ何も見えなくなった。その霧の向こうから2体の人影が現われて、こちらにゆっくりと近付いてくるのが見えた。
その人影から放たれる魔力の大きさが尋常ではない。強力な魔力と力の持ち主であることは明白だ。更に強い妖気まで漂ってきている。
「おいおい。まさかと思うがラスボスが出て来たんじゃないだろうね。」
王子の顔にも強い緊張が走る。
リリスも身構えて敵の出方を見据えていた。
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