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第1章

4月

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 時計を見るとまだ、授業が始まって20分しか経っていない。お昼休みの後は、体中ぽかぽかして時間が経つのが特に遅い気がする。
科学の先生の声なんて、子守唄みたいだ。周りを見渡すと、真面目に授業を受けている者、机に顔を伏せている者、俯いてなにやら“内職”をしている者、と様々だ。

私もそういえば、とこっそりスマートフォンを取り出し、LINEを開いた。


『まなみー!
ごめんっ、今日、ゆうくん部活早く終わるみたいだから、今日はゆうくんと一緒に帰るねm(_ _)m』


バレーボール部の部活仲間であり、親友の“ゆき”からのメッセージを見て私はまたか...と内心呆れるも、ギクシャクしないような返信を考えて打ち込む。


『ゆきはゆうくんとラブラブだなぁ~(笑) 全然いいよっ!かおりたちと一緒に帰るね。』


まぁ、実際は1人で帰ることになるのだけど...
かおりたちも部活仲間だが、帰る方向が違うので一緒に帰るとしても学校を出るまでの間だけだ。


『ほんと?いつもごめんね(泣) まなみだいすきっ♡』


ゆきも私が1人で帰ることは把握済みであるに違いないが、そこには暗黙の了解といった感じで触れず、このフレーズで事が解決するのがお決まりだった。
まぁいいんだけど。慣れてきたし。


そんなことを考えて悶々としていると、またゆきから続けてメッセージが送られてきた。


『あっ!まなみも宮内くんと一緒に帰ったら?いい感じなんでしょ?♡』


“宮内くん”の文字にどきっ、としてしまい誰かにスマートフォンの画面を見られてはいないか、と咄嗟に周りをキョロキョロしてしまった。そんな自分の不審な動きに我に返り、先生のほうを見たが、気づいていない様子だった。
うん、大丈夫。きっと誰にも見られてない...


『いや、付き合ってるわけじゃないから(笑)』


ゆきにメッセージを返し、私は携帯をサッと机の中に隠してはぁ、とため息をついて顔を覆う。


「なんだ木下、体調悪いか?」


科学の先生の声が聞こえてぱっと顔をあげた。教室にいる子たちが一斉に私のほうに目線を向ける。


「あっ、いや...大丈夫です。」


私がそう言うと、先生は不思議そうに首を傾げてからまた授業を再開した。











宮内くんとは、同級生の男の子。
私の“彼氏候補”だった。



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