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ルシア12歳、今私にできる事
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「ここで大人しく待つんだな。」
そう言って閉じ込められたのは、倉庫のような窓のない部屋だった。
流石にここから出るとなると拘束されていなかったとしても厳しいかもしれない。
リッチオーニ公爵はどうやら自身も私の捜索に出ていたようで、屋敷にはまだ戻っていないらしい。
しかし私にはそれよりも別の危険が迫っていた。
「だから、この騒ぎは何なの?私に知られたらまずいわけ?」
「申し訳ありません、お答えしかねます、夫人。」
甲高い声で落ち着いた男性を問い詰めている声は、どう考えてもお母様だ。
騒ぎで目を覚ました挙句、私を担ぎこんできた男たちが、例の女を見つけた、公爵様に報告、等と騒いでいるのが耳に入ってしまったらしい。
しかもこの厳重に警備している部屋にその「例の女」とやらがいると気づいてしまったのだろう。
「いいから、中を見せなさいと言っているでしょう?」
「公爵様より、夫人にはお部屋でお待ちいただくようにと言われております。」
「私に命令をするつもり?」
「いえ、そういうわけでは。ただ、公爵よりは…」
「おだまり。そこをどきなさい。」
「しかし…」
「下賤のものたちは私の言うことを黙って聞いていれば良いのよ。…そうね、褒美をとらせましょうか」
会話が途絶え、少しした後複数人の足音が去っていくのが聞こえた。
かちゃり、という音と共に鍵が開き、廊下からは光が差し込んでくる。
「まさか本当に…この薄汚い女狐め!」
後ろ手に縛り直されただけではなく、足までしっかりと椅子に括りつけられていた私に、お母様の攻撃を避ける手段はない。
扇子で強く頬を打たれる。
「この!この!なんでエンリオはアンタなんか…!」
何度も何度も打ったせいで扇子がばらばらに折れてしまうと、椅子を横向きに蹴り倒され、何度も腹を蹴られる。
ある程度魔力を集めて防御をしてはいるが気休めにしかならない。
先ほど顔を打たれた際はとっさのことで防御できなかったのでだんだん顔が腫れてきているのを実感する。
「エンリオはどうしてこんな小娘を…私はエンリオのためにこんなに尽くしているというのに…!」
「…お母様」
「あの汚らわしい男の娘の癖にお母様だなんて…!虫唾が走るわ!」
お母様が手に魔力を集め始めている。
もしかして私を殺してしまうつもりなのだろうか。
音が遠く聞こえ、時間の流れがゆっくりに感じる。
「待ってください!!」
そう叫んで私の目の前に飛び込んできたのは、元凶のリッチオーニ公爵でも助けに来る予定のダリオお兄様でもなく、まだ幼い少年のジョルジオだった。
そう言って閉じ込められたのは、倉庫のような窓のない部屋だった。
流石にここから出るとなると拘束されていなかったとしても厳しいかもしれない。
リッチオーニ公爵はどうやら自身も私の捜索に出ていたようで、屋敷にはまだ戻っていないらしい。
しかし私にはそれよりも別の危険が迫っていた。
「だから、この騒ぎは何なの?私に知られたらまずいわけ?」
「申し訳ありません、お答えしかねます、夫人。」
甲高い声で落ち着いた男性を問い詰めている声は、どう考えてもお母様だ。
騒ぎで目を覚ました挙句、私を担ぎこんできた男たちが、例の女を見つけた、公爵様に報告、等と騒いでいるのが耳に入ってしまったらしい。
しかもこの厳重に警備している部屋にその「例の女」とやらがいると気づいてしまったのだろう。
「いいから、中を見せなさいと言っているでしょう?」
「公爵様より、夫人にはお部屋でお待ちいただくようにと言われております。」
「私に命令をするつもり?」
「いえ、そういうわけでは。ただ、公爵よりは…」
「おだまり。そこをどきなさい。」
「しかし…」
「下賤のものたちは私の言うことを黙って聞いていれば良いのよ。…そうね、褒美をとらせましょうか」
会話が途絶え、少しした後複数人の足音が去っていくのが聞こえた。
かちゃり、という音と共に鍵が開き、廊下からは光が差し込んでくる。
「まさか本当に…この薄汚い女狐め!」
後ろ手に縛り直されただけではなく、足までしっかりと椅子に括りつけられていた私に、お母様の攻撃を避ける手段はない。
扇子で強く頬を打たれる。
「この!この!なんでエンリオはアンタなんか…!」
何度も何度も打ったせいで扇子がばらばらに折れてしまうと、椅子を横向きに蹴り倒され、何度も腹を蹴られる。
ある程度魔力を集めて防御をしてはいるが気休めにしかならない。
先ほど顔を打たれた際はとっさのことで防御できなかったのでだんだん顔が腫れてきているのを実感する。
「エンリオはどうしてこんな小娘を…私はエンリオのためにこんなに尽くしているというのに…!」
「…お母様」
「あの汚らわしい男の娘の癖にお母様だなんて…!虫唾が走るわ!」
お母様が手に魔力を集め始めている。
もしかして私を殺してしまうつもりなのだろうか。
音が遠く聞こえ、時間の流れがゆっくりに感じる。
「待ってください!!」
そう叫んで私の目の前に飛び込んできたのは、元凶のリッチオーニ公爵でも助けに来る予定のダリオお兄様でもなく、まだ幼い少年のジョルジオだった。
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