転生悪役令嬢は逆ハーエンドの夢を見るか?

片上尚

文字の大きさ
上 下
43 / 47
ルシア12歳、今私にできる事

42

しおりを挟む
窓辺付近の細い蔦に魔力を流しながら、そーっと引っ張ってみる。
……紐なんて編んだこと無いから、ずるずると結構な長さの蔦の端を3本手繰り寄せた。
とりあえず三つ編みにしてみたは良いが、大丈夫だろうか。
本当はロープ用の編み方だったり四つ編みだったりの方が良いのだろうが、令嬢としての知識にも前世の知識にもそんなものは無い。
1本より3本の方がマシだろう。
とはいえ、不安になったので、一定間隔毎に爪で傷を付けて3本が纏まるように魔力を促し繋げる。
いざ逃げる時はさらにこの傷を過剰回復させればコブのようになるだろう。
私は蔦を引っ張っては編んで、足りなくなったら次の蔦を探して編んで、傷を作って魔力を流して繋いで、太くして、ということをひたすら繰り返した。
脱出用の長さにすることを優先した方が良いかもとは思いながらも、万一の時間稼ぎのため、とりあえず出来た蔦ロープでドアと家具をぎっちりと固定しておく。
気休めかもしれないが無いよりは良いだろう。

そしてまた蔦を編む作業に没頭する。
色々と考えるべきことはあるが、それは脱出してからだ。
いつリッチオーニ公爵が戻ってくるかわからないという恐怖と焦りから、最初は手が震えていたが、次第に編むことに集中できるようになっていった。

……結果、集中し過ぎたのだ。

部屋に近づいてくる足音に気がついたのは、もうその足音が間近に迫ってからだった。

慌てて窓際にあった大きな鏡台に蔦ロープを結びつける。
部屋の前で足音が止まり、ガチャり、と鍵を開け、ドアノブ音が捻られるが、ガッと音がして扉は開かない。
ドアノブは無事、先程固定した蔦ロープで引っ掛かっているようだ。

「あれ?」

リッチオーニ公爵の声が聞こえたあと、再度ガチャガチャと音がする。
ドアノブと鍵を確認しているのだろう。
私は音を立てないように気をつけながら、急いで蔦ロープを窓の外に投げた。
よし、地面までは届かないまでも、飛び降りて怪我しない程度の高さまではありそうだ。

「壊れたのかな?」

パンパン、と手を鳴らし、リッチオーニ公爵が召使いを呼ぶ声を聞きながら、私は慎重に、しかし急いで、夜の闇に紛れるため窓の外に躍り出たのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?

ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

婚約破棄の、その後は

冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。 身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが… 全九話。 「小説家になろう」にも掲載しています。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

処理中です...