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ルシア12歳、今私にできる事
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目が覚めると真っ暗だった。
暗闇をよく見渡すと、窓からぼんやりと差し込んでくる月あかりで知らない部屋だということだけがわかった。
ベッドには寝かされていたが両手は手錠のようなもので拘束されている。
そしてまだ全身には若干のしびれが残っていて、下手に動くと物音を立ててしまいそうだ。
先ほどの状況から考えると、おそらくリッチオーニ公爵邸のどこかなのだろうが、彼はいったい私をどうするつもりなのだろうか。
…手籠めにして無理やり婚約を結ぶつもりででもいるのだろうか。
そもそもお父様はどうなったんだろう。
もし紅茶に何かが入っていたのならお父様にも危険が及んでいるはず…
私は緊張で一口しか飲まなかったが、お父様は結構な量を召し上がっていたはずだ。
ガチャリ、とドアが開いて誰かが部屋に入って来る。
おそらく成人男性だろうということだけはシルエットでわかるので、慌てて目を瞑ってとりあえずまだ寝ているふりをする。
「良かった。もう少し効いていてくれるといいんだけど…よりによって今日来るなんて…」
リッチオーニ公爵だ。
誰か予定外の客人でも来たのだろうか?
声が若干いら立っている。
少しの間、沈黙が下りた後、大きくため息が聞こえた。
「よし、キミのおかげで落ち着けたよ。」
ゆっくり顔に気配が近づいてきたが、寝ているふりをしているのだから自分は逃げてはいけないと言い聞かす。
うっかり息を止めてしまいそうだ。
そのまま唇にやわらかいものがふれたが耐えきると、また気配が離れていく。
「彼女を満足させて早急に帰すから。僕の気持ちは君だけに捧げよう。もう少し待っていてね。」
そう言ってリッチオーニ公爵は早足に出ていった。
…キスされてしまった。
やはり彼は私をこのまま手籠めにするためにここに閉じ込めたが、不測の事態、それも女が来たことでそれを後回しにせざるを得なくなった、と考えるのが順当だろう。
であれば、なるべく早く逃げださなければいけない。
足音が完全に聞こえなくのを待って、ゆっくりと体を起こす。
手足をその場で動かし、何とか歩けそうなのでそーっと窓際に近づいてみる。
…庭に面した2階だ。
流石にそのまま逃げだせる階層には閉じ込めてくれなかったようだ。
ベッドのサイズから考えるに、おそらくは客室だろう。
館内を案内された時のことを思い返す。
リッチオーニ公爵の寝室は3階だったはずなので、公爵が客人と爛れたことをする気であればもしかしたら館内で遭遇せず逃げられるかもしれない。
それに10分や20分では戻ってこないんじゃないだろうか。
ただ、使用人に誰一人会うことなく、というのはやはり難しいだろう。
窓から逃げるか、館内を逃げるか…
暗闇をよく見渡すと、窓からぼんやりと差し込んでくる月あかりで知らない部屋だということだけがわかった。
ベッドには寝かされていたが両手は手錠のようなもので拘束されている。
そしてまだ全身には若干のしびれが残っていて、下手に動くと物音を立ててしまいそうだ。
先ほどの状況から考えると、おそらくリッチオーニ公爵邸のどこかなのだろうが、彼はいったい私をどうするつもりなのだろうか。
…手籠めにして無理やり婚約を結ぶつもりででもいるのだろうか。
そもそもお父様はどうなったんだろう。
もし紅茶に何かが入っていたのならお父様にも危険が及んでいるはず…
私は緊張で一口しか飲まなかったが、お父様は結構な量を召し上がっていたはずだ。
ガチャリ、とドアが開いて誰かが部屋に入って来る。
おそらく成人男性だろうということだけはシルエットでわかるので、慌てて目を瞑ってとりあえずまだ寝ているふりをする。
「良かった。もう少し効いていてくれるといいんだけど…よりによって今日来るなんて…」
リッチオーニ公爵だ。
誰か予定外の客人でも来たのだろうか?
声が若干いら立っている。
少しの間、沈黙が下りた後、大きくため息が聞こえた。
「よし、キミのおかげで落ち着けたよ。」
ゆっくり顔に気配が近づいてきたが、寝ているふりをしているのだから自分は逃げてはいけないと言い聞かす。
うっかり息を止めてしまいそうだ。
そのまま唇にやわらかいものがふれたが耐えきると、また気配が離れていく。
「彼女を満足させて早急に帰すから。僕の気持ちは君だけに捧げよう。もう少し待っていてね。」
そう言ってリッチオーニ公爵は早足に出ていった。
…キスされてしまった。
やはり彼は私をこのまま手籠めにするためにここに閉じ込めたが、不測の事態、それも女が来たことでそれを後回しにせざるを得なくなった、と考えるのが順当だろう。
であれば、なるべく早く逃げださなければいけない。
足音が完全に聞こえなくのを待って、ゆっくりと体を起こす。
手足をその場で動かし、何とか歩けそうなのでそーっと窓際に近づいてみる。
…庭に面した2階だ。
流石にそのまま逃げだせる階層には閉じ込めてくれなかったようだ。
ベッドのサイズから考えるに、おそらくは客室だろう。
館内を案内された時のことを思い返す。
リッチオーニ公爵の寝室は3階だったはずなので、公爵が客人と爛れたことをする気であればもしかしたら館内で遭遇せず逃げられるかもしれない。
それに10分や20分では戻ってこないんじゃないだろうか。
ただ、使用人に誰一人会うことなく、というのはやはり難しいだろう。
窓から逃げるか、館内を逃げるか…
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