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ルシア12歳、今私にできる事

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というわけで、仕方がないので本日はリッチオーニ公爵邸に向かっている。
何故かお父様と一緒に。
…どうしてこうなった。

遡ること2日前。
まずはこの前のお母様の件も兼ねて、ダリオお兄様へ相談に行った。

「…それはずいぶんややこしいことになっているね。」

そう言ってどんよりとした顔で額のしわをもみ込むお兄様。
私もそう思います。

「いくつか選択肢はあるのですが、どれもまずいように思えまして…」

「まずはルシアの意見を聞こうか。」

「はい。ひとつ目は、リッチオーニ公爵邸には私が単独で」

「それは無事に帰って来れるかい?」

ぶった切られました。
確かに女たらしの公爵家に一人で乗り込むというのはちょっと危険かもしれない。
召使いや護衛が居たところで、身分差でどうにもならないこともあるだろう。

「…ふたつ目は、正直にお母様に」

「その場合も、無事に帰って来れるか疑問だけど。」

「いっそ阻止してもらえた方が楽なのですが…」

「甘い。エマヌエーレ侯爵家は今や貴重な金づると化しているお母様の言うことなら割となんでも聞くよ?それこそ黒い手段でもね。」

「金づるって、結納金だけじゃ満足していないんですか?」

「あの家はそんな甘い家じゃないよ。」

夢の中で聞いたお母様の諸々はやはり実家の助けが大きかったんだという裏が取れた。
…こんなタイミングで取れなくてもいいのに。

「他は?」

お兄様が渋い顔をして聞いてくる。

「…お兄様かアレクス殿下についてきていただくことは?」

「難しいだろうね。僕と殿下、残念ながらどちらも未成年さ。そもそも招かれていないのについて行くにはそれ相応の理由が必要だ。ジョルジオも一緒だよ。彼の場合は力になってくれるかどうか…まぁ、番犬としての役割は果たしてくれるかな。」

うーん、それってもう、

「…お父様は?」

「それが一番無難だろうね。」

「無難なことなんて何一つなさそうですが…」

「まず、ルシアの保護者だ。」

「それはお母様も一緒ですが…」

「本当の意味で彼女が保護してくれると思うかい?」

「…いえ。」

「そして、成人男性だ。」

「…はい。」

「これ以上適した人物はいないと思うけど?」

「他に起こりそうな諸々の問題には目をつぶれということでしょうか。」

「そこは僕ら子どもは本来考えなくてもいいところだと思うけどね。」

「それはそうですが。」

「というわけでまずはお父様に相談してみるといいと思うよ。」

「…わかりました。」

その結果、この何とも言えない微妙な空気で馬車に乗っている。
…お兄様に提案者として責任を取って何とかしてほしかった。
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