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ルシア12歳、今私にできる事

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お兄様はお父様に報告されるとのことだった。
きっと問題のありそうな話はまとめての方が良いだろう。
今得た事実を伝えようと、とりあえずお兄様の部屋に向かう。
トントンとノックをしても返事が無い。
この話をお父様にお伝えするべきか、伏せておくべきか相談したかったのだが…
自分はまだ11歳。
貴族として色々知識を詰め込んでいるとはいえ、父親に「母親が不倫してるけど知ってた?」と直接言うのは気がひける。
とりあえずは自身の胸にしまい、お兄様の部屋を後にして自室に戻った、



その夜、不思議な夢を見たのだ。




「ねーちゃん、公爵様ルートは攻略したの?」

「まだ。取りかかってすらいないわ。」

のっぺらぼうのような、もやがかかっているような、とにかく顔の見えない女性が話しかけてくる。
ねーちゃん、と呼ばれていることから、おそらく妹なのだろう。
話しかけられているのは私なのだろうけど、どこか朧げだ。

「あのおばさんマジでウザいんだよね。」

「おばさんって?行き遅れのおばさん令嬢でも出てくるの?」

「ねーちゃん甘い。なんと子持ちの伯爵夫人だって。」

「え、不倫?」

「そーそー。よく開発もこんなのぶっ込んで来たわ。てか、ダリオとジョルジオのママ。」

「わお…ていうかそうか、公爵って若いけどジョルジオの父親なんだっけ?」

「そうそう、若気の至りってやつ。結果おばさんにつきまとわれる的な。」

「うわー、若い頃は年上がよく見えたのかな?」

「さあ?にしてもこのおばさん、やり方が過激だから攻略なかなか大変なんだよね。学校行けない分、実家やら社交界やらママ友の娘たちやら権力総動員だし。」

「…それは面倒だね。」

「しまいに金の力とか呪いとか、最終的に魔王復活画策したりとか。」

「うわぁ、そのルートは魔王出現そんな感じなのね。というかネタバレその辺にして。」

「え、公爵様ルートやるの?」

「いずれやるかもしれないじゃない。ジョルジオ似の甘いおじさまなんでしょ?」

「うん、スチルの甘さは結構かなりキてるよ。」

「うーん、ダリオルートとジョルジオルートどちらもクリアしたら考えとく。」

「そっか、頑張ってね。」

もやの向こうの妹がにっこり笑った気配がして、だんだん遠のいていく。



あ、もしかしなくてもリッチオーニ公爵も攻略対象?
目が覚めた私は頭を抱え込んだ。
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