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ルシア12歳、今私にできる事

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「ちょっとトラブルがありまして…」

そう濁してはみたのだが、収まらなかったのはジョルジオだ。

「リッチオーニ公爵が走って来て、お姉様とぶつかったんです。そのままお姉様を口説こうとしていたので、僕が止めたんです!」

偉いでしょう!と言わんばかりに胸を張るジョルジオ。
室内はさっきの話題もあってか当然微妙な空気になる。

「そ、それでそのあとどうしたんだ?」

アレクス殿下が一番立ち直りが早かったようで、とりあえず先を促すと、ジョルジオはさらに言い募る。

「それが、びっくりなんです!ここだけの話にしていただきたいのですが、もう結構なおじさんなのに、お姉様の手の甲に口づけして『後日埋め合わせを』っておっしゃって…!これってお茶に誘う口実ですよね?」

「…リッチオーニ公爵であれば…うん。そのぐらいおっしゃっても全くおかしくはないが…」

ダリオお兄様がリアクションに困っている。
アレクス殿下も微妙な顔をしながら言う。

「叔父上は好みの女性と見ると声をかけずにおれない方だからな…。ルシア、それ以上のことはされていないよな?」

「はい、もちろんでございます。私の不注意でぶつかってしまい…申し訳ありません。」

そう言ってそっと目を伏せる。

「いや、いい。ただ、叔父上はこの婚約について知らされていないはずだから…ちょっと厄介だな。もしかしたら手を変え品を変え誘ってくるかもしれん。困ったら俺に相談してくれ。」

「ありがとうございます。」

「…ジョルジオはルシアを守ってくれてご苦労だった。これからも姉思いの弟でいてくれ。」

「ありがとうございます、任せてください!」

褒められて喜ぶワンコ…ではなくジョルジオ。
段々本当にしっぽが見えてきた気がする。

「殿下、私も微力ながらお力になります。何かありましたら報告いたしますね。」

ダリオお兄様もそういって後ろに回り私の肩に手を添える。
こちらはデフォルトの悪役笑いだ。
というか、お兄様は人前だと自身を「僕」ではなく「私」と呼ぶと初めて知った。

「ああ、ダリオについていてもらえれば大概のことは問題ないだろう。よろしく頼む。」

そこまで言ってアレクス殿下がにっこり笑い、やっと場の空気がゆるんだ。
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