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ルシア12歳、今私にできる事

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図書室から出て、アレクス殿下の居室に急ぐ。
ジョルジオは私と話しているのが本当に嬉しいようで、日常の些細なことを楽しげに話しかけ、まとわりついてくる。
ブンブンと振る尻尾が見えるようで可愛らしくはあるのだが、王宮でそんなに騒いでは噂になってしまうので、ところどころ窘める。
そんなワンコのような弟相手に気を取られ、曲がり角でうっかり人にぶつかってしまった。
相手は成人男性だったのでよろめいただけだが、こちらはたかだか12歳の小娘なので吹っ飛ばされ尻もちをついてしまう。

「お姉様!」

ジョルジオが慌てて駆け寄り助け起こそうとしてくれる。

「これはレディ、大変失礼致しました。」

そう言ってこちらに駆け寄り膝をおって目線を合わせてきた壮年の男性は、美しい紫水晶色の瞳をしている。

「いえ、私こそ不注意で……申し訳ありません。」

驚きで言葉に詰まりそうになるが、やっとの事でそう言う。
男性は私の手を取りそっと口付ける。

「美しい……レディ、お名前は?」

「あの、お姉様の手を離して貰えませんか?」

恐る恐る、でも決然とジョルジオが声をかける。

「無粋だね。この私が女性に声を掛けているというのに。君は?」

「えっと、ジョルジオ・シルベストリーです。貴方様は……?」

ジョルジオは、彼を知らないの?
よりによってこんな形で会ってしまうなんて……!

「僕はエンリオ・リッチオーニ。皆、リッチオーニ公と呼ぶよ。ふうん、君がジョルジオねぇ……ということはレディ、君はルシア・シルベストリー嬢かい?」

「仰せの通りでございます、公爵様。弟共々大変失礼いたしました。」

「いや、いいよ。私の不注意もあったしね。それにおかげで美しいレディと知り合うことが出来た。」

そういって、にっこりと満面の笑みを浮かべる。

「申し訳ないと思うなら、後日埋め合わせに付き合ってもらえれば嬉しいな。今日はのでこれで失礼するよ。」

リッチオーニ公爵はさっと身を翻し去っていく。
2人でぽかんとリッチオーニ公爵が去っていくのを見つめていたが、彼の姿が見えなくなってジョルジオが口を開く。

「お姉様、大丈夫ですか?痛いところは?」

心配そうに手を差し出すので、手を取りゆっくり立ち上がる。

「大丈夫よ。……ちょっと驚いただけ。行きましょう。」

「はい!」

アレクス殿下の居室まではもう少しだ。
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