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ルシア12歳、今私にできる事

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「そうなのね。私も会いたいのは山々なんだけど…。お母様がいない時は気軽に声をかけて?」

「ありがとうございます!嬉しいです!」

「しーっ!あまり大きな声を出すと召使たちが気付いてしまうわ。」

はっ!という顔で慌てて口元を押さえるジョルジオ。
かわいい。
お父様やお兄様と話しているとある程度気を張っていなければいけないが、ジョルジオには自然と砕けた態度で接してしまう。

「それで、今日はどうされたんですか?」

気を取り直して、ワントーン声を押さえてジョルジオが尋ねてくる。
ここはストレートに用向きを話すべきだろう。

「実は、アレクス殿下と婚約したんだけど…」

「そうなんですか!!!おめでとうございます!!!!」

「声が大きいわ。それにまだ内々だから、秘密にしておいてね。」

「あっ!ごめんなさい、わかりました。」

「お母様からは聞いてなかったのね?」

「はい。お兄様とお姉様の話は全然してくれなくって…」

「…そう。多分お母様は知っているとは思うんだけど、念のためあなたからは話題に出さないでおいてくれるかしら?」

「わかりました!」

元気がいいのは良いのだが、こっそり来ている身としては心臓がいくつあっても足りない。

「それでね、アレクス殿下があなたに会ってみたいって言っているんだけど…」

「わあ!本当ですか!」

「本当だから、落ち着いて。それでね、それをお母様に言うべきかどうか迷ってて…」

「ああ、なるほど…お姉様と一緒に、となると良い顔はされないかもしれないです。」

「やっぱりそうよね…」

先ほどまでの話でわかってはいたががっくり来る。
お母様とはこちらから話しかけるのも、と思いしばらく話していないし、ちょっとでも軟化していれば…と思ったが甘かったようだ。

「あ、でも5日後に王宮に行くことになっていますよ!お母様の予定について行くことになってて、イルディバルド殿下にご挨拶した後は王宮図書室で勉強しながら待つように言われています。そのタイミングで良ければ!」

「本当?じゃあ、その時に私もあわせて殿下に会いに行くようにするわ!ちなみにお母様は何をしに行かれるかわかる?鉢合わせはなるべく避けたいから…」

「ちょっとわからないですが、仕事と言っていましたよ?」

「仕事?」

貴族の夫人の仕事といえば社交が中心。
稀に自身で商売や夫の領地経営を手伝う人もいるが、お母様はそうではない。
いったい何のために王宮に行くというのだろうか。
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