16 / 47
ルシア12歳、今私にできる事
15
しおりを挟む
「とりあえずはジョルジオ本人に話を聞いたほうが良い。きっと彼が一番、お母様について知っているからね。」
そう言ってダリオお兄様はニヒルに笑い、話を締めくくる。
私とお兄様は、簡単に言うと母親の愛には飢えている。
ただ、この年齢になるとどうしようもないことだとある程度悟っているので、態度や言葉に出すことは無い。
しかし、お兄様からはやりきれなさや寂しさ、そして一人だけ可愛がられているジョルジオへの妬ましさがほんの少しだけ感じられた。
「申し訳ありません、お忙しいのにこのようなことを相談して。」
「いや、いいよ。ルシアだけには重たい問題だろうし。」
そう言ってニヤリと笑う顔はいつものお兄様のままだ。
「最近、雰囲気が変わったよね、ルシアは。」
「え?」
「以前だったら、僕には相談せず、ジョルジオ本人かお母様に言って無理やりつれていったんじゃないかな。いや、そもそも、アレクス殿下からこのお話を受けた時点で断っていた。」
「…そうでしょうか。」
「少し…そうだね、気配りができるようになったように感じるよ。何か、きっかけでもあったのかい?」
「いえ、…そうですね、アレクス殿下の婚約者として、恥ずかしくないよう考えて動くようになりました。」
きっと、前世の知識に多少は影響されているのだろう。
頭の中にはふわっと「日本人らしさ」という言葉が浮かぶ。
前世は「日本」というところに住んでいたのだろうか。
前世というものだ、というのは理解しているのだが、流れ込んできた記憶たちはどこか朧気で未だに他人のもののように思える。
深く感情移入しすぎた物語が心の中にあるような、そんな気分だ。
「それは良いことだね。ルシアにはしっかりアレクス殿下の心をつかんで、未来のシルベストリー家の後ろ盾となってもらわないといけないからね。」
「精進します。」
「じゃあ、お母様のスケジュールを調べて、ジョルジオが単独になるタイミングがわかったら伝えるよ。」
「ありがとうございます、よろしくお願いします。それでは。」
そう言って少しだけ明るくなった気分と共にダリオお兄様の部屋を出た。
===
扉がしっかりとしまり、足音が遠くなったのを聞いてからダリオは一人口を開く。
「そうだね、国母になるぐらい精進してくれると嬉しいなぁ…」
目を眇めて片方だけ口の端を吊り上げた、悪役そのものの笑顔を見た者はいない。
そう言ってダリオお兄様はニヒルに笑い、話を締めくくる。
私とお兄様は、簡単に言うと母親の愛には飢えている。
ただ、この年齢になるとどうしようもないことだとある程度悟っているので、態度や言葉に出すことは無い。
しかし、お兄様からはやりきれなさや寂しさ、そして一人だけ可愛がられているジョルジオへの妬ましさがほんの少しだけ感じられた。
「申し訳ありません、お忙しいのにこのようなことを相談して。」
「いや、いいよ。ルシアだけには重たい問題だろうし。」
そう言ってニヤリと笑う顔はいつものお兄様のままだ。
「最近、雰囲気が変わったよね、ルシアは。」
「え?」
「以前だったら、僕には相談せず、ジョルジオ本人かお母様に言って無理やりつれていったんじゃないかな。いや、そもそも、アレクス殿下からこのお話を受けた時点で断っていた。」
「…そうでしょうか。」
「少し…そうだね、気配りができるようになったように感じるよ。何か、きっかけでもあったのかい?」
「いえ、…そうですね、アレクス殿下の婚約者として、恥ずかしくないよう考えて動くようになりました。」
きっと、前世の知識に多少は影響されているのだろう。
頭の中にはふわっと「日本人らしさ」という言葉が浮かぶ。
前世は「日本」というところに住んでいたのだろうか。
前世というものだ、というのは理解しているのだが、流れ込んできた記憶たちはどこか朧気で未だに他人のもののように思える。
深く感情移入しすぎた物語が心の中にあるような、そんな気分だ。
「それは良いことだね。ルシアにはしっかりアレクス殿下の心をつかんで、未来のシルベストリー家の後ろ盾となってもらわないといけないからね。」
「精進します。」
「じゃあ、お母様のスケジュールを調べて、ジョルジオが単独になるタイミングがわかったら伝えるよ。」
「ありがとうございます、よろしくお願いします。それでは。」
そう言って少しだけ明るくなった気分と共にダリオお兄様の部屋を出た。
===
扉がしっかりとしまり、足音が遠くなったのを聞いてからダリオは一人口を開く。
「そうだね、国母になるぐらい精進してくれると嬉しいなぁ…」
目を眇めて片方だけ口の端を吊り上げた、悪役そのものの笑顔を見た者はいない。
0
新作「転生先ゲームの難易度が高すぎる件について~不可思議な幻想曲~」公開中です。
がっちり異世界転生&剣と魔法のファンタジーですので、よろしければ合わせてお楽しみくださいませ。
がっちり異世界転生&剣と魔法のファンタジーですので、よろしければ合わせてお楽しみくださいませ。
お気に入りに追加
600
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)
どくりんご
恋愛
公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。
ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?
悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?
王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!
でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!
強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。
HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*)
恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる