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ルシア12歳、今私にできる事

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あれから数日が過ぎ、すっかり今までの日常に戻っている。
魔法書の勉強、訓練、王妃教育。
アレクス殿下は第2王子であるため、結婚の際には王領を分け与えられ新たに公爵家を開く可能性が高い。
そのため、実際には王妃となるわけではなく公爵夫人となるのだが、いずれは王弟とその夫人という立場で公の場に出ることも多くなる。
通常の一貴族の教育では不足があるのだ。
それに、イルディバルド王太子殿下は優秀な方だと皆ほめたたえているが、幼少期に大病をされて以来あまりお身体が強くないらしい。
一度遠目に拝見した印象は少し線の細い優男、という雰囲気だった。
そのため万一に備え、という頭もあるのだろう。

魔法書はもうすぐ15冊目の折り返しに差し掛かる。
この巻には火水土木の四素魔法以外の魔法についての概念が記されているので、前巻で学んだ四素魔法にとらわれすぎてしまうとなかなか読み進められない。
ついつい、他の勉強や訓練に逃げたくなってしまう。

そんなこんなな勉強や訓練漬けの毎日だが、今日はダリオお兄様に少し時間を取っていただいていた。

「相談とのことだけど。どうしたんだい?」

「実は、アレクス殿下がジョルジオに会ってみたい、とおっしゃっていて…」

そう、この件について相談するためだ。
私が一人で考えるにはちょっと荷が重い。

「ジョルジオに?」

お兄様は少し驚いたあと、厄介なことになったな、というように表情を変える。
それだけ、お兄様にとっても我が家の抱える問題は面倒なものなのだ。

「申し訳ありません、家族構成と印象を聞かれてついうっかり……」

「いや、隠す訳にはいかないし、仕方がないね。」

「お母様にはなんと説明しましょうか。」

「そうだねぇ……」

説明しないで連れていった方が簡単だが、バレた時に面倒なことになるかも、という思いが強い。
私もお兄様もお母様とジョルジオには月に何度か、形式的に顔を合わせるだけだ。
細かいスケジュールまで現時点では把握していない。
調べればなんとかなるものだろうか。
お母様がご用事で居ない時は、ジョルジオから話しかけてくることも多いから、嫌われている訳では無いと思うが……
お兄様は少し考え込んで、同じ結論を出したようだ。

「お母様に正面切って話すかどうかはジョルジオと話してから決めよう。彼ももう11歳になるから、物事の善し悪しぐらいわかるだろう。僕がこっそり2人を王城まで連れていくことは可能だけど、その場合ルシアがアレクス殿下に連絡しておくことが必要不可欠かな。」

そうか、お兄様も出仕している今は、お兄様に連れて行っていただくこともできるのか。
そこまで考えが及んでなかった。

「ただ、お母様に隠す場合、責任問題を考えるとお父様に頼んだ方が無難かな。ただ、お父様を頼ってお母様にバレた場合の方がお母様の機嫌は最悪だろうね。まあ、お父様がかぶってくれるとは思うけど。子どもたちだけで動いた場合は1番と身軽だし何も無ければ四方丸く収まる可能性が高いけど、バレたら両親共に機嫌を損ねると共に、何かあった際のフォローが僕だけじゃ周り切らないかもしれない。」

どこまでリスクマネジメントをするか、ということになるのか。
お兄様にばかり負担はかけたくないし……
かといってお母様の機嫌を損ねるとなかなか面倒なことになる。
難しい選択だ。
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