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ルシア12歳、今私にできる事

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「倒れたと聞いたが。」

馬車で待っていたお父様はほんの少し眉根を寄せ、涼やかな目で私を見る。
見る人からすれば「何をやっている、ふがいない」と問いただされているように見えるのかもしれないが、これは明らかに「どうして体調が悪いなら事前に言わないんだ。わかっていたなら無理をさせなかったのに」と心配しているのだろう。

「申し訳ありません、ご心配おかけしました。」

「緊張のし過ぎとのことです。」

ダリオお兄様から淡々とフォローが入る。
うむ、と言わんばかりに頷くお父様。

「それで、殿下との話はどうだった。」

これは話が弾んだのか、と聞かれているのだろうか。

「つつがなく。」

ここでいきなりジョルジオの話を出すのはいささか早計だろう。
他の話題と言えば、ダリオお兄様の話と、イルディバルド王太子殿下やアドリアナ姫殿下の話だ。

「お兄様のことは優秀な人材と認識されているようでした。あとはイルディバルド王太子殿下とアドリアナ姫殿下のことも少々お聞きしました。」

「詳しく聞こう。」

「はい。ご家族で仲良く晩餐を摂られることが多いそうです。兄弟仲も良いとのこと。あとは、アドリアナ姫殿下が既に魔法書を20冊目まで完了されているようで、魔法を使いこなし脱走される話などでした。」

仲の良いご兄弟の話を思い出してすこしほっこりする。
…顔は悪役笑いになっているかもしれないが。

「そうか。姫殿下はお前のひとつ下だったな。」

「…至らず申し訳ありません。」

「いや。これを機に励むが良い。」

「わかりました。」

お父様は目を眇めた後、重々しく頷く。
言葉少なだが、私を励まそうとしているのだろう。
…おかしい。
お父様って人を励ましたり気遣ったりするような人だっただろうか。

「そうだルシア、さっきの話だけど」

話が終わったのを見計らい、お兄様が話しかけてくる。

「陛下は我が家をますますご重用くださる予定だそうだ。手始めに僕は今後父上の補佐に入る。」

「学院に入られる前なのにですか?」

「ああ、学院入学までは王宮に出仕することがかなり増えそうだ。学院入学後も、あそこは朝から晩までずっといなければならない、というわけではないし、手が空く時間帯もあるらしい。そういうタイミングで徐々に実務を学びに入り、王宮官僚としてある程度のキャリアを積ませていただく予定となった。」

「いずれ我が家からもある程度の役職者が出るよう、とのお気遣いだな。」

お兄様の言葉にお父様が補足する。
現在のお父様の役職はそれほど高くない。
お父様をあちこちにねじ込もうと努力した勢力もあったようだが、血筋がかなりの傍系であったため高貴な方々から反発があり、陛下も無理は通せなかったらしい。
その分、お母様、エマヌエーレ侯爵家の血が入っているお兄様であれば問題が無い、かつ、アレクス殿下と私の結婚が成ればお互いに後ろ盾となりうるとの判断なのだろう。
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