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ルシア12歳、今私にできる事

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「殿下はご家族と過ごす時間はどのぐらいあるのですか?」

こちらの家族の話題ばかり聞かれると墓穴を掘りそうなので、話を振ってみる。

「晩餐は必ず一緒にするようにしている。国外から客人を迎えている時は難しいがな。」

「イルディバルド王太子殿下やアドリアナ姫殿下との仲はよろしいのですか?」

「ああ。兄上からはよく魔法書について教えてもらっている。アドリアナは…まったくわがままだしお転婆で困る。とはいえ徐々に落ち着いてきてはいるが…この前なんて家庭教師の授業中に魔法を使って3階の窓から脱走して大変だったんだ。」

「3階から…?アドリアナ姫殿下はずいぶんお元気…というか、魔法がお得意なのでしょうか?」

「ああ、もう20冊目まで終わっている。先週ついに並ばれた。」

「それは…すごいですね。」

月並みな誉め言葉しか出てこないが、姫殿下は11歳になったばかりで、今年中等部を卒業なさるはず。
中等部卒業頃の目安が7冊、学院入学時で12冊であることを考えると驚異的なスピードだ。
殿下も、まだ13歳、学院入学まで2年あるので、それでもかなり早いのだが…

「ちなみにルシア嬢は?」

「ルシア、と呼び捨てていただけると。私はまだ15冊目でした。精進します。」

「年は一つ下、今は12歳だったか?であれば十分だろう。」

「殿下にお仕えして不足が無いよう、今後も励みます。」

「そうしてくれ。そうだ、もしよかったら庭園でも散歩しようか。」

「ありがとうございます、ぜひ。」

室内での会話より、歩きながらの方が話も弾むだろう。
渡りに舟だ。
殿下は先にスッと立ち、手を差し出してくれる。
ただ、エスコートしているところを見られても殿下は構わないのだろうか?
一瞬心配になるが、こちらとしてはプラスにしか働かないのでそっと手を添えさせていただいた。

王宮の庭園は、それはもう素晴らしかった。
季節の花々がきれいに整えられた中で競うように咲きほこり、庭師たちの技術の高さを推し測ることができる。
我が家の庭も整ってはいるが、また別格の美しさに思わず口を開けて見惚れてしまった。

「素晴らしいだろう?」

アレクス殿下が誇らしげに言う。
顔は「してやったり」と書いてあるぐらいすがすがしい。

「はい、本当に…!」

言いながらも見惚れていると、大輪の真っ赤な椿が目に留まる。
それを見たとたん、左目からすっと一筋涙がこぼれる。
ああ、亡くなったお母さんが好きだった…

…亡くなった?

「どうした?」

心配そうなアレクス殿下の声が聞こえたのを最後に、私は意識を失った。
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