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ルシア12歳、今私にできる事

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「そんなに楽しみなのかい?」

馬車に同乗するダリオお兄様が邪悪にニヤリ(という見た目の優しいほほえみ)をしながら、冷たく(聞こえるが実は妹が楽し気なのをほほえましく思いながら)聞く。

「ええ、お茶会でのご挨拶以上のお話しさせていただくのは初めてですので。」

いよいよ今日はアレクス王子にご挨拶する日。
あの素敵な王子様に本当に会えるのだ。
婚約は既定路線だったとしても、いざ会うとなるとワクワクしないわけがない。
せっかくだからと精一杯おめかし!と思っていたら、うちの侍女は切れ長で意志の強そうな瞳をより強調するアイラインと大人っぽく派手好きにも見える真っ赤なルージュを引いてきた。
これなら自分でふんわりナチュラルメイクを目指したほうがよっぽど柔らかい印象にできた気がする。
ドレスは瞳の色に合わせ、豪奢な深緑色。
髪の毛の色に合わせたのかそうじゃないのかは不明だが、金色の繊細な刺繍が随所にちりばめられている。
成金趣味だと思われないか心配だ。

「婚約は決まっているとはいえ、粗相がないように。」

「はい。」

お父様にも窘められるが、こちらもニヤリ(という名のry)としているので、娘が喜んでいる様子をほほえましく思っているのだろう。
お母様はこの場に居ない。
…あの人は、弟にしか興味がないからだ。

王宮に着くと、まずは国王陛下に謁見し、ご挨拶だ。
とはいえ、婚約自体が非公開なので、私室でお言葉を賜ることになっていた。

「楽にしなさい。君たちの一族のおかげで今の平和がある。今回の婚約を私はとても喜んでいるのだ。」

獅子の鬣のような金髪に柘榴石のように真っ赤でどんぐりのような瞳。
「美しい」「厳か」という言葉がぴったりな陛下が、雰囲気とは不釣り合いににっこり破顔する。

「ステファノから君たちのことは聞いていた。あえて嬉しく思う。」

フレンドリーに握手を求められたがどうすればいいんだろう。
お父様の方を見るとニヤリ(ry)としているから、素直にお受けして良いのだろう。

「長男でダリオ=シルベストリーと申します。」

「ルシア=シルベストリーです。この度は本当にありがとうございます。」

とりあえず自己紹介しながら握手に応える。
ごつごつとした大きな手だ。

「いやはや、本当にそっくりだ。その悪役めいた笑い方もね。」

慌ててダリオお兄様を見ると、精一杯の笑顔(ry)を浮かべていた。
…きっと私も同じなのだろう。

しばらく談笑した後、私はアレクス殿下に直接ご挨拶をし、そのまま1時間ほど2人で過ごすよう言われた。
侍従に案内され、長い廊下を何度も曲がりながら、一人アレクス殿下の元に向かう。
…緊張してきた。
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