転生したら脳筋姫に?!転生先ゲームの難易度が高すぎる件について~不可思議な幻想曲~

片上尚

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『不可思議な幻想曲ファンタジア』。
舞台はカレワラ大陸にある、イルマタル帝国。
火を司る赤のイルマリネン、水を司る青のアハティ、雷を司る黄のウッコ、氷を司る紫のトゥオネタル、風を司る緑のミエリッキの5つの公国の集合体で、皇帝には5公国から選ばれた皇帝が着く。
ゲームとしては、数年に一度、複数の条件が重なったときに行われる「選帝侯会議」に向けて大陸の皇帝もしくはその配偶者を目指していく、またはそれをサポートしていくゲームだ。
PCブラウザで遊ぶアイテム課金制の謎解きゲームだが、日常の操作はダンジョン攻略とワンタッチバトルが中心。
功績ポイントを稼いで自身や領地のステータスを上げていく。
マルチエンディングというよりは、その世界の人々とは異なる知識を持って生まれた「エイドーロン」と呼ばれるもの、ようはプレイヤーたちがどんどんストーリー作っていくことを売りにしていた。
おそらく大まかな内容は決まっているものの、イベントの達成度や各国の功績に合わせて作者がストーリーを都度作り足しているのだと思われる。
ちなみに、身分制やパートナー作りのほか、特徴的なシステムが大量にちりばめられていて、例えばリセマラ(リセットマラソン)や複垢(複数アカウント)の実質的禁止。
IPアドレスとSNSとの紐づけがされているため、最初に誕生したキャラクターからリセットすることができず、どんなに身分が不満でもその身分でできることを探すしかない。
ただし、どの身分だったとしても成り上がる方法や逆に平民になって冒険者として生きていく方法も用意されていたので、スタートラインが違ってもある程度やりたいキャラムーブをすることはできる。
ただ、私の場合は「よっしゃ、冒険者とか楽しそう!」と思って登録したのに、誕生した身分は「赤姫様、赤姫様」と呼んでもてはやされる立場だ。
前の姫が卒業してから割と長い期間イルマリネンには公爵家以上に女性、通称姫プレイヤーが誕生していなかったこともあって、押しに弱い私は結局その立場から逃れることができなかった。
ちなみに、難易度が最悪なことで知られていて、リリースからの8年間で、クリアしたプレイヤーが1人しかいない。
…転生先としては最悪の類なんじゃないだろうか。

===

「姫様、朝の御仕度に参りました。」

トントン、というノックと共に聞こえた物静かな声に緊張しながら「どうぞ」と返す。

転生していて思い出した系なのか、はたまたこの世界のセシリアを私の魂が乗っ取ったのかよくわからないが、困ったことにセシリアとして生活していた記憶は皆無。
まずはぼろを出さないようにしなければ…

侍女にされるがままに真っ赤なドレスを着つけられていく。
これ、SNSで自虐的に自分がデザインしていたドレスやん…
絶望が深い。

「あら、姫様、今日は反対なされないのですね。」

「え?」

「私としては大変ありがたいですけれども。せっかくなので今後は週に一度でいいですからズボンではなくドレスをお召しになってくださいませ。」

「…え、あ、はい。」

え、セシリア姫、ズボン履いてたの?
ドレス回避できたのかよー!!!!!!!
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