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アリスティア、ジルドアまで旅をする
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身支度をして、周りからイーグと呼ばれている壮年の騎士を一人だけ借りて外に出る。
がっしりとした40代前後とみられるおじ様で、この辺りの出身だそうだ。
護衛の騎士は人数が限られているし、私にはジュピがいる&嫁入り前のリーラお姉様に何かあっては大変と、そちらに回してもらうように言ってはみた。
ただ、自分では忘れがちだけど私の姿はまだ9歳の女児だ。
ジゼルを連れていこうとしたのだが、侍女や侍従たちは積み荷の整理で私が望んでいるほど長い時間は持ち場を離れられないらしい。
とはいえ、女の子が1人で歩き回っていると周りが心配して余計な声がけや迷子騒ぎが発生したり、事件や事故に巻き込まれたりということが考えられるため、1人は絶対連れていけ、ということになったのだ。
「アリス…様、まずはどちらに?」
動きやすさ重視でお忍びのため、姫様、とは呼ばないように伝えている。
服装も一応下級の貴族ぐらいに見えるよう調節したので、あとは呼び間違えでもされない限り大丈夫…なはず。
ちなみにイーグは貴族の護衛、ということでそこそこきっちり武装はしている。
「まずは菓子屋を見て、その後神殿に行きたいわ。参拝が終わった後には魔道具屋へ。…地理には詳しいかしら?」
「存じております、かしこまりました。」
そう言ってイーグは先導しだす。
「通りで気になるものが見つかれば随時見たいのだけど。」
「わかりました、なるべく店屋が多いところを通っていきますね。」
そう言ってたどり着いたのは、結構大きな店舗の菓子屋さん。
中に入るとずらりと笹の葉が並んでいる。
「これは?」
「この地方で作られる餅菓子で『ルムチ』といいます。祝い事の際に出すことが多いので、ロミア様にお供えするのにも良いかと思いまして。普通の民たちはロミア様に菓子を供える、という発想が無いと思うので…」
城に居る者たちは、ロミア様は私の作るお菓子を食べまくっていたことを噂話で知っている。
王都でも徐々に浸透しつつあったが、一歩王都から出ると甘いもののお供えは滅多にないらしい。
穀物や野菜、果物を未調理で採れたままで感謝と共に供えられるのだ。
よく見ると、このルムチというのはいろいろな味があるらしい。
「ジュピ、ロミア様、何味がいいかなぁ。」
胸ポケットにはジュピが潜り込んでいるが、やはり元気がない。
…サンが帰ってこなくて不安なのは他の皆も私も一緒だ。
「んー、どれもおいしそうだと思うけど~。」
「ジュピも食べる?」
「いいの?うれしいな~。」
ジュピがにへらっと笑ったのでほっとした。
…サン以外のみんなも登場し、ジュピだけずるい、だの自分がこれが良い、だの騒ぎ始めるまで時間はかからなかったが。
がっしりとした40代前後とみられるおじ様で、この辺りの出身だそうだ。
護衛の騎士は人数が限られているし、私にはジュピがいる&嫁入り前のリーラお姉様に何かあっては大変と、そちらに回してもらうように言ってはみた。
ただ、自分では忘れがちだけど私の姿はまだ9歳の女児だ。
ジゼルを連れていこうとしたのだが、侍女や侍従たちは積み荷の整理で私が望んでいるほど長い時間は持ち場を離れられないらしい。
とはいえ、女の子が1人で歩き回っていると周りが心配して余計な声がけや迷子騒ぎが発生したり、事件や事故に巻き込まれたりということが考えられるため、1人は絶対連れていけ、ということになったのだ。
「アリス…様、まずはどちらに?」
動きやすさ重視でお忍びのため、姫様、とは呼ばないように伝えている。
服装も一応下級の貴族ぐらいに見えるよう調節したので、あとは呼び間違えでもされない限り大丈夫…なはず。
ちなみにイーグは貴族の護衛、ということでそこそこきっちり武装はしている。
「まずは菓子屋を見て、その後神殿に行きたいわ。参拝が終わった後には魔道具屋へ。…地理には詳しいかしら?」
「存じております、かしこまりました。」
そう言ってイーグは先導しだす。
「通りで気になるものが見つかれば随時見たいのだけど。」
「わかりました、なるべく店屋が多いところを通っていきますね。」
そう言ってたどり着いたのは、結構大きな店舗の菓子屋さん。
中に入るとずらりと笹の葉が並んでいる。
「これは?」
「この地方で作られる餅菓子で『ルムチ』といいます。祝い事の際に出すことが多いので、ロミア様にお供えするのにも良いかと思いまして。普通の民たちはロミア様に菓子を供える、という発想が無いと思うので…」
城に居る者たちは、ロミア様は私の作るお菓子を食べまくっていたことを噂話で知っている。
王都でも徐々に浸透しつつあったが、一歩王都から出ると甘いもののお供えは滅多にないらしい。
穀物や野菜、果物を未調理で採れたままで感謝と共に供えられるのだ。
よく見ると、このルムチというのはいろいろな味があるらしい。
「ジュピ、ロミア様、何味がいいかなぁ。」
胸ポケットにはジュピが潜り込んでいるが、やはり元気がない。
…サンが帰ってこなくて不安なのは他の皆も私も一緒だ。
「んー、どれもおいしそうだと思うけど~。」
「ジュピも食べる?」
「いいの?うれしいな~。」
ジュピがにへらっと笑ったのでほっとした。
…サン以外のみんなも登場し、ジュピだけずるい、だの自分がこれが良い、だの騒ぎ始めるまで時間はかからなかったが。
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