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アリスティア、ジルドアまで旅をする
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「あれがミルトメルト湖…!」
「まるで海みたいだろう?僕も初めて見た時は凄く驚いたよ。」
あれから数日。
ミルトメルト湖の手前にある小高い丘で休憩を取ることになり、馬車の外へ出ると、丘の下には真っ青で広大な海が目の前に広がっていた。
実際は海ではなく湖なのだが…
「ここまで来るとジルドアまであと少しね。」
ゆったりと馬車から降りてきたドーラ様が感慨深げに言う。
ミルトメルト湖は我がファルメディアの南方地方メルディアの中央からジルドアの国境付近まで広がる広大な湖だ。
形は三角というか…某ゲームのスライムのような形をしていて、とんがっている部分の端がメルディアの東側で川となり海に流れ込んでいる。
そのため、メルディアの南側は凹をさかさまにしたような形の領地となっているのだ。
我が国とジルドアは比較的良好な関係を維持しているので、メルディアの東西それぞれ南端から渡し船が出ている。
東側を渡ったほうが船での移動は短時間で済むのだが、大型の旅客用帆船が出ているのは西側なので、私たちは西側に来ていた。
「あと少しでレナルド様にお会いできるんですね…!」
リーラお姉様はすでに愛しの王子様を思い浮かべてうっとりしている。
…この湖さえ無事に渡れてしまえば大丈夫なはず。
「やっぱりやな予感がするね~」
肩の上に乗っているジュピが小声で言うのでジュピにだけ聞こえるぐらいの声量で問い返す。
「闇刻の泉って言われてるのはどの辺なの?」
「中央ぐらいのはずだよ~。多分渡っている最中に見えるんじゃないかな。」
「見える?祠でもあるの?」
「いや、僕たちも遠くから見ただけで、あんまり近寄ったことないからわかんない~。アリスも多分『あ、変だな~』って感じるんじゃないかな。」
お、おう。
感覚的なものなのね。
とはいえ、すでにルートも決まっているし渡るしかないのだ。
「他のみんなはどうしているの?」
「何人かは近くにいるよ~。サンはちょっとギリギリまで闇刻の泉に近づいて様子見てみるって~。」
「それ、危なくないの?」
「いざとなったら一番逃げ足が速いのもサンだからね~。ロミア様が何かありそうって言っているのに備えなくアリスを連れてくほうが危ないと思うよ~」
…それもそうかもしれないけど。
「まあ、水の上のことはよほどのことで無ければキュリーがなんとかしてくれるとは思うんだけどね~」
そう言って安心させようとジュピはふんわり笑うが、私はなんとなく抱いた不安を振り払うことができず、大きな湖を見つめるのだった。
「まるで海みたいだろう?僕も初めて見た時は凄く驚いたよ。」
あれから数日。
ミルトメルト湖の手前にある小高い丘で休憩を取ることになり、馬車の外へ出ると、丘の下には真っ青で広大な海が目の前に広がっていた。
実際は海ではなく湖なのだが…
「ここまで来るとジルドアまであと少しね。」
ゆったりと馬車から降りてきたドーラ様が感慨深げに言う。
ミルトメルト湖は我がファルメディアの南方地方メルディアの中央からジルドアの国境付近まで広がる広大な湖だ。
形は三角というか…某ゲームのスライムのような形をしていて、とんがっている部分の端がメルディアの東側で川となり海に流れ込んでいる。
そのため、メルディアの南側は凹をさかさまにしたような形の領地となっているのだ。
我が国とジルドアは比較的良好な関係を維持しているので、メルディアの東西それぞれ南端から渡し船が出ている。
東側を渡ったほうが船での移動は短時間で済むのだが、大型の旅客用帆船が出ているのは西側なので、私たちは西側に来ていた。
「あと少しでレナルド様にお会いできるんですね…!」
リーラお姉様はすでに愛しの王子様を思い浮かべてうっとりしている。
…この湖さえ無事に渡れてしまえば大丈夫なはず。
「やっぱりやな予感がするね~」
肩の上に乗っているジュピが小声で言うのでジュピにだけ聞こえるぐらいの声量で問い返す。
「闇刻の泉って言われてるのはどの辺なの?」
「中央ぐらいのはずだよ~。多分渡っている最中に見えるんじゃないかな。」
「見える?祠でもあるの?」
「いや、僕たちも遠くから見ただけで、あんまり近寄ったことないからわかんない~。アリスも多分『あ、変だな~』って感じるんじゃないかな。」
お、おう。
感覚的なものなのね。
とはいえ、すでにルートも決まっているし渡るしかないのだ。
「他のみんなはどうしているの?」
「何人かは近くにいるよ~。サンはちょっとギリギリまで闇刻の泉に近づいて様子見てみるって~。」
「それ、危なくないの?」
「いざとなったら一番逃げ足が速いのもサンだからね~。ロミア様が何かありそうって言っているのに備えなくアリスを連れてくほうが危ないと思うよ~」
…それもそうかもしれないけど。
「まあ、水の上のことはよほどのことで無ければキュリーがなんとかしてくれるとは思うんだけどね~」
そう言って安心させようとジュピはふんわり笑うが、私はなんとなく抱いた不安を振り払うことができず、大きな湖を見つめるのだった。
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