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幕間

喪女たちのクリスマスイブ2

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陽子以外の4人は泳ぐのが得意で、しかも浮き輪が手元にある状態で来た大波だったから何とか耐えられたが、他にも何人か溺れそうになったようで、ライフセーバーが大慌てで救助作業をしていた。

荷物置き場には服もなかったから、きっと陽子は服を着たまま波にのまれたのだろう、ということになっている。

―――ピンポーン

「…誰だろう。ちょっと出てくるね。」

出前とかは頼んでなかったはずだけど。

「はーい」

のぞき窓から見ても誰もいないようだ。
ピンポンダッシュ?

恐る恐るドアを開けると、そこには4枚の。

「…貝殻?」

ちょっと不気味に思ったが、とりあえず部屋の中に持ち帰る。

「なんか、これだけ置いてあった。怖くない?」

「誰もいなかったの?」

「うん。」

「えー、キモ。」


「ねえ、もしかして陽子じゃない?」

「「「は?」」」

裕美がそう言って玄関にダッシュする。
私たちも慌ててついていくが、外にはやはり誰もいない。

「陽子!」

裕美は叫びながら廊下の端まで行き、そのまま非常階段から下まで降りていった。

「これ、陽子が持ってきたっていうの…?」

「だったら顔ぐらい見せてくれたって」

「できない事情があるんじゃない?」

残った3人で顔を見合わせる。
駆け落ちとか…?
でも彼氏ができたなら教えてくれても…

「もしかして、幽霊?」

恐る恐る紗枝が言い出したが、それが何か一番しっくりくる気がする。
残された貝殻を見つめていると、裕美がエレベーターで戻ってきた。

「陽子いなかった。」

「…そっか。」

「それどころか、人っ子一人いない。誰とも会わなかった。宅配便の人もいなければ子どももいない。」

やっぱり、陽子の幽霊が届けてくれたんだろうか。

「きっと陽子が、心配しないで、っておいてってくれたんじゃない?」

紗枝が言う。

「…そうだといいね。」
「きっとそうだね。」
「うん。」

4人で顔を見合わせて、そう思うことにした。
きっと、このクリスマスパーティーも陽子は見守ってくれてる。


「じゃ、いつもの通りパーティーしよっか。」

「そだね。」

部屋に戻ると乾杯、そして起動される乙女ゲー。
これも毎度恒例だ。
美味しいものをダラダラつまみながら乙女ゲーの品評会をするのだ。
今回のコンプ担当は紗枝。

「でね、紗枝のジェスがねー!」

「紗枝のじゃないでしょ。ていうか攻略キャラですらないじゃん…」

「公式資料だと49歳でしょ?さすがにないわ。」

「えー!この渋さがいいのに…」

「いや、会話シーンほとんどないよね!?」

こうして女4人の夜は更けていく…






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クリスマスらしい小話をお送りしました。
良いクリスマスイブをお過ごしくださいませ。
尚 拝
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