上 下
22 / 113
アリスティア、王都に帰る

8

しおりを挟む
とりあえず、まず食べよう。
ルーディアで食べていた時はそれほど草たちの香りも強くなく、よく言えば滋味がほのかに感じられる、ありていに言えばあんまり味も香りもない草粥だったのだが、これは大違いだ。

まず初めにパクチーのような香りが鼻をつく。
この香り苦手なんだけどな…
一応咀嚼すると、カリっという歯ごたえとともに胡椒辛さが…黒胡椒かしら…
鼻のほうに香りを抜いてみると、やはりパクチーの自己主張が強いが、裏に隠れて先ほどまでのディージーの香り、そして少しすっきりするレモングラス系の風味、そして何より強い爽快感が…
え、もしかしてミント系まで入れてるとか?

ものすごい違和感を感じながら周りを見回すと全員完食してこちらを見守っている。
あ、待たせてますよね。ごめんなさい。

品数が多い分、一品ごとの量はそれほど多くない。
おかゆも、少し大きめの小皿、ぐらいなのですぐに食べ終わった。
というか、お茶碗一杯分のコレは食べられないわ…

「アリス、とっておきだったんだけど口に合わなかったかな…?」

心配そうに王様が話しかけてくる。

「ごめんなさい、最近、一部の香草の香りが苦手になってしまって…ただ、すごく興味があるので、料理人に材料を見せてもらえますか?」

「ああ、無いものもあるが、あるものは明日料理長に用意するよう言っておこう。セバスチャン。」

「は、手配いたします。」

あ、やっぱり執事の名前はセバスチャンなのね。
定番ですよね。
白髪をぴっちりと固めた壮年の執事(多分一番偉いんだろう)が返事を返す。
せっかくだから聞いてみよう。

「あの、ご飯っていつもこのようにポタージュのように食べるんですか?」

「はい、左様でございますが…アリスティア姫様は別の食べ方もご存じなのでしょうか?」

「ええ、女神ロミア様よりいただいた知識なのですが…」

前世の知識もこの際だから女神様のおかげっていうことにしちゃおう。
私の知っているご飯の炊き方を説明する。
そしてついでに、味噌汁のつくり方も説明し、相性抜群、ということも強調しておいた。
もちろん、ディージー味噌じゃなくてちゃんと大豆味噌を使うことは忘れずに念押し。

あれ?みんななんかうっとりした顔でこちらを見てる…?

「さすが使徒…!」

「女神様の知識を聞けるなんて…なんという幸せ」

「そんな食べ方もあるのですね…」

あ、驚いてるのか。というかこの世界、本当に女神様が敬われている、というのが伝わってくる。
セバスチャンはどこから出したのか手帳を取り出して私の発言を必死にメモし、「これはすぐにでも料理長に伝えなければ…!」と私に一礼して走っていった。

「皆様、楽しい食事時に申し訳ありません。」

「いや、いいんだよ。女神様の知恵の一端に触れることができて皆感動している。これからも思ったことや気付いたことがあれば教えておくれ。」

「はい!」

王様に公認をもらえた!
ということは、これからどんどん食事をカスタマイズできる…!
表向きはにっこりと、心の中ではにやにやとした笑みを浮かべながらデザートを食べ、夕食の会はお開きとなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!

マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です 病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。 ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。 「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」 異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。 「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」 ―――異世界と健康への不安が募りつつ 憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか? 魔法に魔物、お貴族様。 夢と現実の狭間のような日々の中で、 転生者サラが自身の夢を叶えるために 新ニコルとして我が道をつきすすむ! 『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』 ※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。 ※非現実色強めな内容です。 ※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。

転生先では幸せになります

RUU
ファンタジー
美園 穂希 28歳独身。トラックに轢かれた後、目が覚めると異世界で赤ん坊として出産されていた。 前世での苦い記憶も全て水に流して、今世では幸せになると誓って今日も生きていく。 異世界でアーシェンリファー・ウンディオーネとして生を受けた美園穂希はそんな異世界で強く生きる。 よくある系統の作品を書き出しました! ヒロイン最強設定ですが、最初から最強チートではないです。 処女作です。文章能力も無く思うままに進めちゃってます。誤字脱字はご指導頂けるとありがたいです。 更新ペースも遅いです…。(ごめんなさい。)

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

処理中です...