異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚

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アリスティア、王都に帰る

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ゆっくりと謁見の間の扉が閉まった。

「ご心配おかけし申し訳ありませんでした。」

立ち上がり、軽く頭を下げる。
顔を上げると、家族たちがぽかんとした顔でこちらを見ている。

「アリス、もう家族と気の置けないものたちだけだから大丈夫だよ?」

王様が心配そうに言っているがどういうことだろう?
ビビがすっと立ち上がり発言する。

「陛下、アリスティア様は記憶を失われておりますので…。追加でご報告したい事項があるのですがよろしいでしょうか。」

「よかろう、申せ。」

「アリスティア様は報告書でお送りした通り津波にのまれ生死の境をさまよいました。その間に、女神ロミア様にお力を授かり、ルーディア滞在中に近隣の村にて使徒として祝福を受けております。」

「…なんと!我が家から使徒が出たのか!」

「お力の内容は知識が中心とのことで、話し方や考え方が急に大人びられたのも、そのことが一因かと思います。例えば…」

ルーディアであったあれこれの報告を上げていくと家族たちが複雑な表情になる。

「なるほど。それであれば仕方があるまい…。ただなぁ…。
なぁアリス。家族だけの時は私たちのことをパパ、ママ、と呼んで、無理せず甘えてくれていいんだよ。」

王様がしょぼんとしている。
急に親離れされて寂しいのかしら。

「パパ、ママ」

とりあえず呼んでみる。
前の世界ではお父さん、お母さん呼びだったからちょっと照れ臭い。
王妃様なんか目を潤ませちゃってるよ…
ごめんね、この身体の本当の魂の主は、もう別の世界にいるんだ…
せめて私が代わって親孝行しなければ。
日本に残してきた自分の親のこともちらりと頭はよぎったが、今は目の前にいる今の家族とのスキンシップが大事だ。

「私の記憶があったころの話、いっぱい聞かせて?」

王妃様が耐え切れなかったように駆け寄り、私を抱きしめた。

「ああアリス!なんてかわいそうなの!もう視察なんていかないでずっとうちにいなさい!」

「え、あの」

「そもそもこんな小さい子まで視察に行かせるのがおかしいのです!」

王妃様は涙目でキッと王様を睨む。

「まあまあお母さま、落ち着いてください。」

美青年がつかつかと歩み寄って来る。
王様を痩せさせてすらっとさせた感じの(王様はぽちゃっとした感じ)金髪碧眼なので、きっと10歳年上のマーシュお兄様だ。
異腹のマリクお兄様は4歳上だからまだ小学生ぐらいのはずで、この場にはもう一人私と似た中学生ぐらいの女の子がいるから、それがマリアージェお姉様だろう。

「アリス、僕たちみんな本当に心配したんだよ。でもやっと帰ってきてくれたんだ、少しゆっくりするといいよ。」

王様は玉座で「だって仕方がないだろう…」と小声でつぶやいているのが聞こえた。
仕方がないってどういうことだろう。

「ありがとうございます、…マーシュお兄様?」

一応疑問形にしておくと、にっこり美しい笑みでうなずかれた。
美形って何しても得だなぁ…
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